『アンを探して』で監督デビューした宮平貴子監督はカナダ映画界から、監督への道を掴んだという異色の経歴を持つ。

活動のベースをカナダに置く宮平監督(写真右)。『アンを探して』は自身の初監督作品となる

違う経歴を持つことも、監督としての個性となる

――宮平監督はカナダのモントリオール在住で、この作品は資本もほとんどがカナダです。これまでの日本人監督のフォーミュラーとはかなり違う形で活動されてきたと聞いています。

宮平「学生時代は日本で自主映画を制作していたのですが、大学4年生の時に、クロード・ガニオン監督の『リバイバル・ブルース』という作品の撮影にカメラアシスタントとして参加しました。ガニオン監督の次の作品で助監督をさせていただいて、そこで初めてカナダに渡り、そのままカナダに住んで活動しています」

――活動拠点が外国という部分に、不安はなかったのでしょうか?

宮平「私の映画の師匠であるガニオン監督が、とにかくオープンな方で、彼がいつも言っていたのは、『監督にも個性が大切。人と違う経歴を持つことはプラスだから、それでいい」という事だったんです。だからこの活動スタイルもプラスになると思ってやっています」

――今後もカナダで映画製作をしていくのでしょうか?

宮平「そうですね。モントリオールは色々な文化が集まった場所で、私自身のテーマにも近いものがあるのです。私は沖縄出身なのですが、沖縄もチャンプルというか、色々なものが集まった状況はどこかカナダと似ているんですよね。そういう、カオスのなかで普遍的なものを探して描くというのが私のテーマなので、カナダで暮らして映画を撮るというのは、私に合っていると思うのです」

――劇中では、反核や反戦という要素も強く描かれています。これには、宮平監督が沖縄出身であるという部分も影響しているのでしょうか?

宮平「それはあると思います。ただ、それ以上に、普遍的な事として、人間は時を越えても残るような素晴らしい文学作品を生む力もあれば、一瞬で人を殺せる兵器も作れるという事を描きたかったんです。もちろん、人間の明るい部分を描きたいのですが、そのためには、暗い部分を描く事も必要だと思うので」

――この作品を、観客にどう楽しんで欲しいでしょうか?

宮平「プリンス・エドワード島でのオールロケというのは、映画実写版『赤毛のアン』でも実現していない事です。私たちは、そこにこだわって島の空気を丸ごと撮影して作品に残したつもりです。島に行った気持ちになって作品を楽しんで欲しいですね」

アンを探しては10月31日よりシネカノン有楽町1丁目ほか全国順次公開

撮影:岩松喜平