iPhoneユーザーの間で期待感が高まっているAR(拡張現実)アプリ「セカイカメラ」。その一般公開に先駆けて商用サービスが開始される。ソフトバンクテレコムは17日、レザー製品で有名なスペイン老舗ファッションブランドであるLVJグループ ロエベ ジャパン カンパニーが開催する新作展示会「ロエベ アマソナ展」において、セカイカメラを使った商品ナビゲーションを展開すると発表した。

iPhoneとセカイカメラ、歴史のあるブランドがコラボレーション。写真左から、小菅良宏 ソフトバンクテレコム 法人第二営業本部 副本部長、丸山武 LVJグループ ロエベ ジャパン カンパニー プレジテント&CEO、井口尊仁 頓智・CEO

iPhoneをかざすと、現実には見えなかった情報が見えてくる──これがセカイカメラの特徴だ。開発会社である頓智・(トンチドット)の井口尊仁CEOが「現実の見え方をまったく変えてしまう新しいカメラ」と説明するこの最先端アプリケーションに、160年の歴史を持つブランドが目を付けた。商品ナビゲーションツールとして利用しようという試みだ。

iPhoneを店内でかざすと、展示商品などに重ねてエアタグと呼ばれる付加情報が出現、商品やデザイナーにまつわる情報がすぐに引き出される。これはロエベ ジャパン カンパニー プレジテント&CEO 丸山武氏が思い描く、顧客に「五感をもってブランドを体験してもらう」という狙いを具現化するものだ。ブランドにとって重要となる、商品の背後にあるストーリーを感じてもらう意味でも、セカイカメラであればエアタグを通じたストーリーテリングが可能になる。丸山氏は、「160年にわたるブランドを体験してもらえる非常に重要なツール」とセカイカメラを高く評価、最新技術と老舗ブランドのコラボに期待感を示した。

ロエベ アマソナ展は、東京・表参道のロエベ表参道ブティックにおいて、9月18日(金)から10月12日(月)まで開催。同展開始当初は情報の閲覧のみとなるが、セカイカメラの一般公開後は、来店者が店内で独自にエアタグを追加することもできるようになる。

店舗内でiPhoneをかざすと、商品やデザイナーに関するエアタグが現れる

ソフトバンク テレコムは、企業がセカイカメラを利用するうえで必要なインフラ整備などを手がける。店舗内で位置情報を取得するには、GPS以外におもに「Wi-Fiロケーションサービス」の利用が必要となる。また、企業向けには、高さなどを含めた詳細な情報のエアタグを登録できる「エアタグマネジメントシステム」も用意される。同社はiPhoneを活用した法人向けソリューションの提案を行なっており、今回のコラボレートをきっかけにセカイカメラを活用したビジネスを広げていきたい考えだ。

セカイカメラのリリースについて

改めてセカイカメラについて。同アプリでは、"エアタグ"という機能が重要となってくる。これは現実世界の情報を補足するものだ。たとえば、ガイドブックを持たずに京都旅行に出かけても、カメラを向けるだけで寺社の名前や由来がエアタグによって調べられる。エアタグを作成すると、GPS/ Wi-Fi / 電子コンパスなどによる位置情報とともにサーバに記録され、同じ空間を訪れたユーザであれば誰でもエアタグを共有することができる。エアタグは、テキストや写真、音声の形式で記録可能だ。実際にロエベ店舗内で試したところ、iPhone 3GSの動きに合わせてエアタグがサーバからスムーズに読み込まれ、ワンタッチで情報を引き出すことができた。なお、iPhone 3Gでも利用可能だが、電子コンパス機能がないため、かざす方向にあわせたエアタグの移動はサポートされない。井口CEOは、表示速度の面でもiPhone 3GSでの利用を推奨すると話した。

気になる一般公開日だが、記者会見で井口CEOは「Coming Soon」とのみ説明。近日に公開する予定であるとした。価格は当面無料とのこと。API提供を予定しているほか、iPhone以外にAndroidなどのデバイス向けにも開発を進めている。