大日本印刷(DNP)と東京大学は9月7日、ホログラムの立体画像に読み出し可能な情報を付加することができる「ナノフォトニック階層型ホログラム」を開発したことを発表した。東京大学の大津元一教授を中心とした研究グループのナノフォトニクスの研究成果と、DNPのホログラム製作ノウハウおよび微細加工技術を組み合わせたもので、既存のホログラムパターンに近接場光でのみ読み取ることができる光の回折限界以下のナノサイズの情報を埋め込むとともに、その情報の読み取りに成功した。

開発されたナノフォトニック階層的ホログラム

同ホログラムは、ホログラムパターンの内部に特定の近接場光を発生するナノフォトニックコードを微細加工したもので、ホログラムの立体画像に対して干渉しない近接場光の読み取りを可能としている。このため、ホログラムそのものの見た目を変更しなくても、付加的な情報や機能を追加することが可能であり、結果としてホログラムの立体画像の情報を「伝播光レイヤ」、ナノサイズの近接場光で得られる情報を「近接場光レイヤ」として、同一のホログラムで独立した2階層の情報レイヤとして取り扱うことが可能だ。

近接場光で読み取られる情報は、ナノフォトニックコードの構造と読み取り装置の双方に依存しており、ホログラム媒体と読み取り側装置がそれぞれ有している構造間の相互作用により情報を読み取る。一方、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡では、それを用いてナノフォトニックコードの構造を読み取ることができても、"そこで記録されている情報"について、推測を困難とさせることが可能である。

左が「ナノフォトニック階層的ホログラム」の伝搬光レイヤとしての「バーチャグラム」で、中央がその内部の近接場光レイヤに埋め込まれた「ナノフォトニックコード」、右がその拡大写真

今回開発された同ホログラムは、3次元のコンピュータグラフィックスにより作製されたホログラム「バーチャグラム」内部に"近接場光レイヤ"として、ナノフォトニックコードを埋め込んだもの。ナノフォトニックコードの構造は、最小寸法が50nmでホログラム内に埋め込んだ。同コードの解析には、近接場光を検知可能な特殊な光検出器などを組み合わせた近接場光学顕微鏡を用い、近接場光レイヤ上の情報を読み取ることで実現したという。

左および中央の画像が近接場光学顕微鏡を用いて読み出された「ナノフォトニックコード」、右画像は。その光強度分布。周期的なホログラムパターンに対して、わずかに非周期的な変調を加える形式での符号化により、各ナノ構造に起因した近接場光応答の読み出しを実現した波形。

なお、DNPでは近接場光レイヤでは、近接場光の階層性を生かすことで、さらに多くの階層での情報の入力が可能であるため、今後、ホログラムパターン内部において、近接場光の特長をより顕著に発現させるためのパターン最適化や、近接場光レイヤの簡易読み取り方式などの開発を進めることで、セキュリティ性や機能性の強化を進めていくとしている。また、ナノフォトニクスについては、セキュリティ用途以外にも、光機能部材用途などに向けても有望であるとし、新たな用途開発にも取り組んでいくとしている。