NECエレクトロニクスは5月18日、USB 3.0に準拠したホストコントローラLSI「μPD720200」を開発、2009年6月初旬よりサンプル出荷を開始することを発表した。サンプル価格は1,500円。量産は2009年9月より月産100万個で開始する計画としている。
同社第二SoC事業本部の副事業本部長である新津茂夫氏は、「USB 1.1の登場が1996年。2000年にUSB 2.0が登場したことにより、市場が拡大し、今やさまざまな機器同士の接続に用いられるようになった。この傾向は今後さらに加速する」とし、USBがPCの1規格という位置づけからAV機器全般の標準インタフェースへと進化していくことを指摘した。
これは、家庭で使用するデータが例えば、静止画から動画へ、動画もSD画質からHD画質へと容量が増大していくことで、今までの転送レートだとかなり待たされることとなるためで、「人間が何もしないで待機できる時間は1分程度」(同)であり、USB 2.0でBlu-Rayの動画を転送しようと思うと、1枚25GBだとしても14分かかることとなる。「そうした現状および将来を考えると、より高速な転送レートの実現への要求が消費者側から出てくることとなり、USB 3.0はそれに対応することを目的とした」(同)とし、5Gbpsの転送レート(SuperSpeed)により、25GBの動画でも70秒程度で転送することが可能となるとする。
また、「転送レートが5Gbpsを実現したということで、内部HDDのデータのやり取りなどにも使用できるようになる」(同)としており、新たな活用方法が登場する可能性もあるとした。
市場としても、「USBインタフェースを備えた機器は年間30億台を超す市場となっており、その内、高速化が求められる領域だけを見たとしても、億単位の領域で増加していくはず」(同)とする。特に「PCが搭載するかしないかが重要」(同)としており、「USB 2.0の時は2~3年で6割以上、4年程度で9割以上のPCが対応した」(同)とUSB 2.0の時の普及速度を比較に出し、どの程度の速度で普及するかが重要であり、PCへの早期搭載が目下の目標であるとした。
そのため、早ければ2009年冬に登場するPCにはUSB 3.0対応をうたうモデルが登場する可能性が高いとしており、「2011年のPC出荷台数が3~5億台。その内、1億4,000万台のPCにUSB 3.0が搭載されると考えられ、ホストコントローラLSIを用いるのは6,000万台程度」(同)とし、今回のチップで積極的に攻めていくとする。
USB 3.0ではコネクタ形状が従来のものと一部異なるため、使用できない組み合わせが出てくるほか、高速伝送になるため、接続性の保証などが問題となってくる。同社では、コネクタメーカーであるホシデンや、TektronixやAgilent Technologiesなどの測定機器メーカー、LucidPORTのような各種周辺機器向けLSIとの接続テストなどを含むパートナーシップを構築、高速性を維持するための取り組みを行ってきた。
同製品は、サンプル品としては、90nmプロセスを用い、パッケージには10mm×10mmの176ピンFBGAを採用しているが、同事業本部SoCシステム事業部USBシステムグループのグループマネージャーである友田嘉幸氏によると、「あくまでサンプル品としてより早い提供を実現するために、90nmとあのパッケージサイズとした」としており、パッケージサイズについては、量産のあかつきにはより小型パッケージ化した製品の提供も検討しているとする。
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端子内部が青いのがUSB 3.0対応コネクタ、白いのがUSB 2.0対応コネクタ(Bタイプではコネクタ上部に新たな部分が追加され、Aタイプではコネクタ奥に5ピン追加された。このほか、マイクロタイプのコネクタも規定が進んでいるという) |
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リファレンスデザイン(左)とリファレンスデザイン側のコネクタ形状(手前に5ピン用の端子が配置されている。ちなみにチップの消費電力は最大時で1.0W程度だという) |
なお、新津氏は、「純粋なホストコントローラのビジネスとして売り上げ100億円」としているほか、IPコアとしての販売やASICとしての提供も考えているほか、PHYを切り分けての提供などの可能性も検討していくとしている。