クラウド・コンピューティングを支える技術的機軸としては仮想化の存在が大きい。仮想化が進化してきた過程を亦賀氏は以下のように指摘する。
仮想化はまず、サーバをはじめとするシステムの統合に寄与し、コスト削減を実現した。これが「仮想化1.0」だという。次に、「仮想化2.0」は、システムの俊敏性を高め、スピード化につながった。
では「仮想化3.0」とは何か。従来、企業内のITリソースはいわばバラバラだったが、ここから脱する策として、仮想化により、共通基盤を企業内に構築し、内部にサービスを供給する「エンタープライズ・クラウド」が提案されている。
一方、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどのように、巨大なデータセンターを核に、外部にサービスを提供する「パブリック・クラウド」がある。今後、企業は、これら双方のクラウドを「ハイブリッドな形で、適材適所で使い分ける」ようになるのではないかと、亦賀氏は指摘する。それには、クラウドをも仮想化しなければならない。これが「仮想化3.0」の意味するところだという。
さらに、亦賀氏は、もう一つの潮流として「特化型システム」にも言及した。「特化型システム」は、米ネティーザが推進している、リレーショナルデータベース、サーバ、ストレージを統合した製品「データウェアハウスアプライアンス」に代表される。この分野では同社が先行しているが、昨年、米オラクルも「Oracle Exadata」を発表、新たな戦いが始まっている。
これまでのように、サーバやストレージなどが結局はバラバラに動いているモデルでは限界に来ていることは多くの人々に理解され、最近では「(次の流れに移行する)機運は高まっている」(同)状況にあり、クラウドへの期待は膨らんでいるが、「一気に変化するのではなく、段階的に進む」(同)ことも事実だ。少しずつであっても、着実に進化へ徒歩を進めるには、何が求められるか。亦賀氏は「あるべき姿を明確に捉え、長期的プロジェクトにするのではなく、目指すべきゴールへの取り組みは日々のオペレーションに組み込むべき。技術だけにこだわらず、大局観をもち、大きな変化に備えることが重要」としている。