NXPセミコンダクターズジャパンのジェフリー.N.ブラウン社長

NXPセミコンダクターズジャパンのジェフリー.N.ブラウン社長は2009年2月25日、NXP Semiconductorsの2009年の事業方針について説明会を行った。

NXP Semiconductorsは2009年から新CEOにRick Clemmer氏を迎え、事業構造の改革を進めている。改革の大きな柱は2008年後半から進めている生産工場の再編で、フランス・カンヌ、米国ニューヨーク州イーストフィッシュキルの2工場を2010年までに閉鎖することを決定している。

また、ドイツ、オランダの工場では6インチ(150mm)以下の小径ウェハを使用している生産ラインを8インチ(200mm)ウェハ対応に改良、生産効率の改善を図っている。さらに、中核事業に集中していくため、2008年にはワイヤレス製品事業を分社化、STMicroelectronicsとの合弁企業を設立した。2009年2月には合弁企業の自社保有分株式をSTMicroに売却し、完全に切り離した。同事業の売却額は全体で16億ドルを上回る規模となっている。

同社はこの売却益に加えて、2008年11月と2009年2月に合計6億ドルの資金調達に成功、これにより同社保有キャッシュは約20億ドルに達し、半導体産業界でのキャッシュポジションは上位5、6社に入ることになった。現在のように厳しい事業環境においてはキャッシュが事業の継続力、競争力につながることから、NXPとしては、今後の事業展開を優位に運べるとしている。

NXP Semiconductorsのキャッシュポジション

今後の注力分野として、第1に上げているのが環境面からの要求が強まっている省エネ、高エネルギー効率を実現するためのスマートIC、ディスクリート製品である。太陽電池による発電から、コンバータ、センサ、アクチュエータ、信号処理、LEDというように、エネルギーの入り口からシステムとしての出力にかかわる部分まで、各段階に高効率のデバイスを提供、また、ここのデバイス、部品の開発、設計に関しては、システム全体の電力要件を考慮して行っていくようにしている。

例えば、LCD-TVの10%にNXPのLCD-TV用LSIが採用されれば、39TWhの省エネ効果が期待できるが、これはNXPが対象製品を製造するのに消費する電力(1.5TWh)を大幅に上回っており、トータルの省エネ効果は非常に大きなものとなる。今後もさらに高効率の製品開発に力を入れていく。

NXPの事業強化分野

NXPが大きな実績を持ち、今後も強化を進めていく製品分野(NXPの事業セグメント)としては、(1)ディスクリート、ロジックなどの汎用半導体、(2)自動車用半導体、(3)TV、セット・トップ・ボックス(STB)などのAV機器を中心とする家電製品(HOME)向け半導体、(4)ID・認識システムの4つである。これらの分野では多くの製品で、業界トップクラスの売上実績を残している。

NXP Semiconductorsの事業セグメント

例えば、汎用製品では小信号製品、汎用ロジック、一部のミクスド・シグナル製品製品など、自動車用半導体でCAN、LIN、Flexrayといった車載ネットワーク関連製品、イモビライザなど、Home関連ではシリコンチューナ、デジタルTV/STB向けシステムLSIなど、ID分野ではRFID、ICカードなどの近接認識(NFC)など、でトップ3までの地位を占めている。

NXP Semiconductorsの各セグメントの主要製品

同社の調査では、対象市場でトップ1、2の製品および同社しか市場参入していない(またはそれに近い状況の)製品(同社ではNiche Leaderと呼んでいる)の品種は、全製品セグメントに占める比率が2006年の63%から2008年には77%にまで拡大しているとしている。今後も対象市場で業界トップクラスの実績を持つことのできる製品分野を強化・拡大できるように、M&Aなども含めて製品ポートフォリオの充実を図っていく。

製品の競争力を高めていくために、前期の製品分野に向けて研究開発も積極的に行っており、年間8億ドル程度の投資を進めている。2005年と2008年の研究開発投資を比較すると、2008年は自動車分野では2005年の1.9倍、ID分野は2.4倍、汎用製品分野は1.4倍に拡大している。Home分野は全体としてはわずかに減少しているが、これはアナログTV向けの費用を削減、急速に成長しているデジタルTV向けにシフトしたため。デジタルTV向けの研究開発費は大幅に拡大している。

NXP Semiconductorsの研究開発投資

日本市場は欧州、北米と並ぶ重要市場と認識、投資を拡大している。東京、大阪の拠点でスタッフを強化、半導体市況は厳しいが、そのような時期だからこそ、時間をかけてユーザとの関係をより密なものとするための取り組みを進めている。そのために品質管理やサポートの人員拡大を行っていくとしている。