日米欧それぞれの強み

1999年から2004年までの特許出願動向を見ると、国別の推移はそれほどでもなく、堅調な伸びを示しており、特に日本からの出願は他を引き離して多くなっている。

特許の企業国籍別の出願件数推移

また、国籍別に日本の特許庁、米国特許庁、欧州特許庁それぞれに出願したものを比較すると、日本の特許庁への出願特許が1万3,276件で、米国への7,302件、欧州への3,945件と比べて「日本から出願、日本での出願、両方とも多いことが見て取れる」(同)となる。

各国の特許庁への国籍別企業出願件数比較

なお、3極の特許庁への出願では、日本のみの出願が76.2%で、米国のみの出願が44.6%、欧州のみの出願が24.9%と、欧州では3極ともに出願した割合が45.2%と高くなっている。

3極全体に出願した各国籍別企業の出願内容を技術区分で分けてみると面白い傾向が見て取れる。日本企業は部分構造技術の出願件数が多く、全体構造技術が1999年から2003年にかけて増加傾向となった。米国企業は制御技術の増加傾向が顕著で、コミュニケーション技術にも増加傾向が見られる。そして、欧州企業は制御技術の増加傾向が顕著で、全体構造技術、部分構造技術は減少傾向となっている。

技術区分別出願件数の推移

もう少し詳しく見てみると、日本企業で伸び率が大きい区分は"移動型ロボット""指(マニピュレータ系)""ロボット協調""群ロボット"であり、"把持部"や"腕"などは減少しているものの、累積出願件数は多いのが実情だ。また、米国企業で伸び率が高く、かつある程度の累積件数があるのは、"センサ(ロボット用途)"や"位置決め制御""遠隔制御""人工知能技術""画像認識技術"などとなっている。欧州企業も同様の条件で見ると、"アクチュエータ"などの要素関連が伸びているのが見て取れる。

技術区分別累積件数と伸び率

これについて西村氏は、「日本人はアトムや鉄人28号、ガンダムといった人型の格好良く動くロボットに抵抗感が薄い民族性を持っている。子供の頃から見てきたアニメの影響で、むしろ好きと言っても良いと思われる」と日本人の嗜好を分析、「その対極として、ロボットの嫌いな民族として欧州が挙げられる。これは、欧州には昔から、人の仕事を代替するものを生理的に嫌う傾向があり、現在、欧州でロボットが売れているのは、競争力確保などのためだけに入れていると聞いている」(同)とした。また、米国に対しては、「傾向は日本、欧州どちらでもなく、人工知能や遠隔制御などの高度な分野に強いのは"人間そのものの研究"が好きであるため」(同)と分析、「その結果として、人の構造がどうなっているか、ということに興味を持っており、そうした人たちを世界中から集め、そこから技術をフィードバックするという傾向がある」(同)とした。

なお、主要出願人を見てみると、日本企業が日本での出願が多いのは当然だが、他の地域でも複数社上位10社に入っている傾向がある。