日本新聞協会メディア開発委員会は29日、日本放送協会(NHK)が2月2日から開始する携帯サイトへのニュース配信に関して、「NHKが本来禁止されている通信社類似の業務である」として、中止すべきだとの意見をNHKと総務省に対して申し入れた。

NHKでは2月2日から、携帯大手3キャリアでの公式サイト「NHKケータイ」において、NHKで放送する政治、経済など8分野のデイリーニュースの要約(200字程度)を配信するサービスを開始予定。また、子会社のNHK情報ネットワークが月額315円でニュース全文やニュース映像を有料配信するサービスも、携帯サイトで展開する。

「NHKケータイ」ニュース配信の紹介ページ画面(出典:NHKホームページ)

日本新聞協会メディア開発委員会は29日、これらのサービスを中止すべきだとする意見書を、NHKと総務省に申し入れた。

意見書では、上記のNHKのニュース配信に関して、「NHKが本来禁止されている通信社類似の業務」であり、「受信料で運営されている公共放送のウェブサイトが商業利用されようとしている」と懸念を表明。

「1月の放送総局長会見における今井副総局長の発言要旨を読むと、『携帯サイトでの記事は要約版だが、詳細な記事は、NHK情報ネットワークの有料総合情報サイトで動画を含めて見ることができる』となっている。NHK情報ネットワークがユーザーに有料で提供するニュースはNHKから提供されるものと思われる。とすれば、これはNHKによる番組の『二次利用』ではなく、『第三者への情報提供』ということにほかならない」と主張。

続けて、「第三者への情報提供については、放送法が制定された1950年の国会論議の中で、政府が『ニュース提供機関というような事業まで進むという考えは持っていない』と答弁、通信社類似の業務を禁止している。従って、NHKは情報ネットワークの有料情報総合サイトにニュース素材を提供することはできない」と結論付けた。

また、「NHKケータイ」へのニュース無料配信についても、「法的にも収入構造的にも著しく保護されたNHKがこうした分野に無料で参入すれば、民間企業に深刻な打撃を与え、健全な競争市場を混乱させることになる。NHKが2月から始めようとしている公式携帯サイトでのニュース配信サービスは、こうした観点から中止するべきだ」とサービスの中止を求めている。

NHKでは、「NHKケータイ」などにおけるニュース配信サービス開始について「あまり大々的な宣伝を行っていない」(広報局)が、上記のような指摘があることもその理由と推測され、今後論議を呼ぶ可能性もある。