三洋電機の半導体製造子会社の三洋半導体は1月22日、カメラ機能付き携帯電話およびポータブルAV機器向けキセノンフラッシュ用IGBT「TIG058E8」を開発したことを発表した。2月よりサンプル出荷を開始、同5月より量産を開始する。サンプル価格は250円で、量産規模は月産300万個から開始、将来的には現在のポータブルAV機器用のIGBTに匹敵する月産1,000万個規模まで引き上げたいとしている。

携帯電話向けキセノンフラッシュ用IGBT「TIG058E8」

三洋半導体 取締役 兼 パワーマネジメント事業本部 事業本部長の近藤安生氏

同社取締役 兼 パワーマネジメント事業本部 事業本部長の近藤安生氏は、「三洋半導体の中でも、パワーマネジメント事業本部ハイパーデバイス事業部の売り上げは年間約400億円、その内携帯電話とポータブルAV機器向けが50%以上を占める。今回の製品はその両方の分野に向けて提供できる製品で、強みを発揮できるもの」と語る。

同社のデジタルカメラ向けIGBTの出荷個数は2008年で5,500万個程度と見込まれており、市場シェアも40%を超すという。今回の製品は、2007年頃より始まった携帯電話へのキセノンフラッシュ搭載を後押しするもので、「携帯電話のカメラの画素数の向上により、従来のLEDフラッシュから、より光量の多いキセノンフラッシュへと要求が変化してきている。今後、この流れは加速すると見ており、状況次第では大きな市場となるだろう」(同)とする。

キセノンフラッシュ市場の推移

同製品は、パッケージ技術として電極構造をAuワイヤから独自のCuクリップ配線へと変更することで、配線を太くすることで配線抵抗を低減、さらに小型化を実現する「アッパーフレーム技術」を用いることで、余分な面積を省略することが可能となり、動作効率を従来品比で20%向上、チップ搭載効率の同10%向上、配線抵抗1/3を実現している。

今回採用したパッケージ技術(アッパーフレームにする理由は、チップの端は脆くなっているため、密着させると欠ける可能性があるため、とのこと)

三洋半導体 パワーマネジメント事業本部 ハイパーデバイス事業部 パワーデバイス開発部 夏目正氏

また、ウェハ技術として「オングストローム単位での構造制御により、竪型トレンチのチャネルの厚みや濃度を最適化したほか、周辺耐圧構造の最適化により有効動作面積を従来品比20%向上されたことにより、チップサイズを従来品比で約50%程度縮小しながらも、20%の性能向上を実現した」(同社 パワーマネジメント事業本部 ハイパーデバイス事業部 パワーデバイス開発部 夏目正氏)という。

採用したウェハ技術(露光装置のプロセスは0.35μmとのことだが、実際は文中の通り、さらにこまかな制御を行っているとのこと)

これにより、TSSOP8を採用した従来品比で実装面積を約60%削減、実装高さを約10%減するパッケージサイズ(ECH8パッケージ)2.8mm×2.9mm×0.9mm(重量0.02g)を実現しながらも、性能はIcp=150A、Vces=400V、Vce(sat) typ.=4.0V、Cies typ.=2200pFを実現しており、実装面積あたりの電流容量比はTSSOP8を用いた現行品比で約2.5倍の特性向上を実現している。

現行製品とのパッケージサイズ比較

同社ポータブルAV機器向けIGBTのポジションマップ

競合他社との性能比較

実装面積あたりの電流容量比の比較

また、同社は同製品に併せて、回路ソリューションとしてファストリカバリダイオード(FRD)「RE0208DA」も併せて開発したことを発表した。Vrrm800VでIoは0.2A、逆回復時間Trrはtyp.=33nsで、パッケージは小型のSOD-323を採用しており、TIG058E8と組み合わせることでフラッシュ回路そのものの小型化に貢献することが可能だ。

FRDも小型品を開発

TIG058E8の前工程は採用ウェハは6インチで、同社岐阜工場が担当する。後工程は同じく同社タイ工場が担当する。

同ソリューションを搭載した特性確認用基板(実際に携帯電話に搭載されるキセノンフラッシュはもっと小型のものが想定される)

なお、同社では2010年には携帯電話でのキセノンフラッシュ搭載が進むと見ており、さらに小型・ハイパワー品を提供し、携帯電話のキセノンフラッシュ搭載率拡大に向けた取り組みをキセノンフラッシュモジュールメーカーなどとしていければとしている。

キセノンフラッシュ用IGBTロードマップ