NECは、LSI内部で一時的に情報を保存するフリップフロップを不揮発化した「不揮発性磁気フリップフロップ(MFF)」を開発、動作実証に成功したことを発表した。

チップ写真

これは、システムLSI上でレジスタとして用いられるデータフリップフロップ(DFF)に、絶縁体トンネル障壁層を強磁性体で挟んだ磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction:MTJ)およびMTJへの書き込み回路を組み込むことで実現したもの。

MFFの回路図

従来のフリップフロップと同じ電圧で動作が可能なため、レイアウト設計のライブラリ部品として汎用的に使用することが可能である。また、通常動作の読み出し・書き込み時にはMTJが動作速度に影響を及ぼさない構成を採用することで、従来のDFFと同等の3.5GHz動作が可能だ。さらに、MTJへの書き込みは、不意の電源切断に備えて、MFFの動作ごとに行うことも可能となっている。

同技術は、同社が開発・設計などを行ってきたMRAMの製造プロセスを利用したもの。そのため、CMOSプロセスの配線間にMTJを作りこむことが可能なほか、1チップ上でMFFとMRAMの両方を取り入れたシステムLSIの設計なども可能となる。

これにより、論理回路全体が不揮発化が可能となるほか、SRAMをMRAMに変えることで、チップ全体を不揮発化でき、待機電流ゼロのシステムLSIを設計することが可能となる。

なお、同社では、今後、同技術をシステムLSIに組み込んだ形での動作検証を目指して設計・試作を行っていくとしている。