アリババグループ全体の底上げ図る
中国のIT業界研究機関である艾瑞諮詢(iResearch)が発表した「2008年第二四半期ネットショッピング市場調査報告書」によると、2008年第二四半期の中国ネットCtoC市場は、271億元(約4,065億円)に達している。市場シェアをみると、淘宝網が1位(82.1%)で、2位の拍拍網(9.8%)と、3位の易趣網(8.1%)を圧倒、ほぼ独占的とも言えるリーディング・ポジションを確保している。
こうしたデータを踏まえ、iResearchアナリストの王芳氏は、アリババの大淘宝網戦略を以下のように分析している。
まず、アリババが狙うのは、広告とネットショッピングを統合し、収益能力を向上させること。淘宝網はすでに今後5年間CtoCユーザーに「無料開放」を約束しているため、ユーザーから料金を徴収できる可能性は極めて低い。
このため、広告収入が今後も淘宝網の最も大きな収益源となる。淘宝網とアリママの合併により、CtoC市場と広告との間の壁がなくなれば、CtoCユーザーと広告主の需給関係をより直接的に刺激できるので、結果として収益能力が高められると期待される。
第二の狙いは、大淘宝網のサブブランド力を強化させることだ。淘宝網はCtoC市場のリーティング・カンパニーとして、すでに強いブランド力を獲得している。一方、アリママは、広告サイトとしての実績が低く、ブランド力も弱い。大淘宝網戦略の実施により、CtoCサイトと広告を担う二つのサブブランドである大淘宝網の影響力を高め、結果として、BtoBも含めた総合ECサイトグループとしてのアリババトータルのブランド力を一段と強めようということだ。
第三の狙いは、ネットショッピングサイトの経験を生かし、広告サイトの競争力を高めること。淘宝網はネットショッピングサイトとして、ユーザーの取り込み、店舗開設、商品展示、信用管理、代金決済などで豊富な経験を積んできた。広告を商品として売り込む、広告サイトとしてのアリママは、淘宝網ほどのマーケティング力を持っていない。このため、両社を合併させ、淘宝網の経験を生かし、広告サイトのコア競争力を強化させる。
以上が、王氏の「大淘宝網戦略」についての分析である。
また、ITアナリストの姜奇平氏は、「大淘宝網は全く新しいゲームルールを提案し、収益モデルのさらなる合理化を図ろうとしている」と見る。
さらに、「これまでのネット広告のほとんどは大企業によって展開されるものだった。中小企業と個人は、仮にネット広告に対する需要があっても費用のハードルが高いため、その需要がなかなか満たされてこなかった。大淘宝網はネットショッピングと広告との融合を通じ、広告主、CtoCユーザーの双方に新たなマーケティングチャンスを提供しようとしている」と分析、大淘宝網の社会的意義を評価している。