米国のアナログ半導体ベンダAnalog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは11月12日に東京で記者会見を開催し、32ビット浮動小数点DSP「SHARC」ファミリの第4世代品5品種を新たに発表した。

第4世代のSHARCファミリ「ADSP-2146x」

同社は10月7日に第4世代SHARCの最初の製品「ADSP-21469」を業務用デジタル・オーディオ向けに発表しており、今回の品種拡張で第4世代SHARCを本格的に展開していくことになる。サンプル出荷の開始は2009年第1四半期の予定である。

第4世代SHARCファミリは最大動作周波数が450MHz、積和演算速度が900MMACs(動作周波数450MHz)、浮動小数点演算速度が2.7GFLOPS(動作周波数が450MHz)。32ビットの固定小数点演算と32/40ビットの浮動小数点演算をサポートする。

DSPコアは前の世代と同様にSIMDコアである。オンチップ・メモリとして、5MビットのSRAMを内蔵した。またデジタル・オーディオ信号処理で頻繁に使われる演算の実行回路をハードウエア・アクセラレータで搭載し、演算処理性能を著しく高めた。さらにマスクROM内蔵品では、DTS-HD Master AudioやDolby Digital Plus、Dolby TrueHDなどのデジタル・オーディオ規格に準拠したデコード・プログラムをマスクROMに格納して利便性を高めてある。

アナログ・デバイセズの汎用DSPプロダクツディビジョンでジャパンリージョナルディレクターを務めるポール・ウィラー氏。流暢な日本語で説明してくれた

記者会見では、同社の汎用DSPプロダクツディビジョンでジャパンリージョナルディレクターを務めるポール・ウィラー氏が新製品の説明にあたった。

車載オーディオ用には「ADSP-21462W」と「ADSP-21465W」、「ADSP-21469W」の3品種がある。使用温度範囲がマイナス40℃~プラス105℃と広いほか、自動車用ネットワーク「MOST」に接続するための「MLB(Media Local Bus)」ポートを搭載した。ADSP-21465Wは4MビットのマスクROM内蔵品、そのほかはROMレス品である。

ホーム・シアター機器などのデジタル家電向けには「ADSP-21467」を用意した。4MビットのマスクROMを内蔵する。使用温度範囲は0℃~プラス70℃である。

産業機器や計測機器などに向けた「ADSP-21469」もある。10月に発表したのは民生用で使用温度範囲が0℃~+70℃だった。今回の品種は工業用で使用温度範囲が-40℃~+85℃と広い。

第4世代SHARCファミリの概要。10月に発表済みの品種を含め、全体で6品種を用意した。型名は「ADSP-2146x」である

第4世代SHARCファミリの特長

第4世代SHARCファミリの性能一覧

ハードウエア・アクセラレータでは、FIR(有限インパルス応答)フィルタ、IIR(無限インパルス応答)フィルタ、FFT(高速フーリエ変換)の3種類のアクセラレータ回路を内蔵した。アクセラレータの浮動小数点演算性能は最大2.25GFLOPSである。なおこれらのアクセラレータ回路は、同じクロック期間内ではどれか1つだけが動作する。

ハードウエア・アクセラレータ。FIRフィルタ用、IIRフィルタ用、FFT用の3種類のアクセラレータを内蔵した

消費電力は、外部メモリを使わずにフル稼働させた場合におよそ1.5Wだという(質疑応答による。データ・シートではTBDになっている)。価格は、1000個購入時の単価がADSP-21469の450MHz品で31.50ドル(米国での参考価格)。