あるスタートアップ企業が、アフリカや中東、南米など、何かと紛争の多くインフラの整備されていない新興地域に対し、衛星通信を用いたブロードバンドのインターネット接続サービスを提供しようとしている。この壮大なプロジェクトには、Googleを含むビッグネームらがその出資者として名前を連ねている。

O3b Networksは9日(英国時間)、衛星通信をベースにした発展途上国向けブロードバンドサービスの展開を開始したと発表した。O3bは38歳の米国人起業家Greg Wyler氏によって設立されたスタートアップ企業。計画では16個の衛星を配置し、アフリカ、中東、南米などの地域にブロードバンド接続を提供する。これら衛星は現地のネットワークや3G / WiMAXのアンテナ塔と直結され、10Gbpsのバックボーンをベースに無駄がなく効率的な形でインフラ展開できる。光ファイバを直接敷設するよりも安価な点が特徴だという。同社では、2010年のサービス開始を見込む。

現在、世界中を横断する巨大な光ファイバ網がインターネットのバックボーンを支えている。それらは先進国の多い北半球を中心に、広範囲にわたる海底ケーブル網によってまんべんなくインフラが行き届いている。だがO3bによれば、それはあくまで北半球での話で、多くの発展途上国では満足に光ファイバが行き渡ることもなく、孤島のごとく孤立しているのが実際だ。Wyler氏は以前よりそうした地域でのインフラ展開の方法を模索しており、衛星通信を組み合わせた巨大な通信網がその回答となったわけだ。

今回のプロジェクト推進にあたり、同社は数々の著名企業のバックアップを受けている。ひとつは前述のGoogle、サービスプロバイダのLiberty Global、そして投資会社のHSBC Principal Investmentsだ。米国での700MHz帯オークション参加や電力線インターネット(BPL)の米Current Communication Groupへの投資など、Googleが通信業界への積極的な関与を行っていることは有名だ。またLiberty Globalは米国外のエリアでブロードバンドサービスを積極的に展開している国際企業で、サービスプロバイダでは世界最大手の一角にあたる。O3bが準備している通信衛星とネットワーク網を使うことで、前述のような発展途上国でのブロードバンドサービス展開が容易となるため、将来的に大きな発展の見込めるこれら地域でのビジネスを狙っていると考えられる。