マイクロソフトは28日、Webブラウザ「Internet Explorer」の最新ベータ版「Internet Explorer 8 ベータ2 日本語版」の配布を開始した。表示の高速化、便利機能の追加、セキュリティ機能の強化に加え、Web標準への準拠をさらに進めた。ダウンロードは同社サイトから。

Internet Explorer 8 ベータ2 日本語版

IE8ベータ2では「速い」「便利」「安心」という3つのポイントから機能を強化。高速性では、HTMLやスクリプトの解析速度などを向上。これまでは、HTMLの解析途中にスクリプトがあると、その解析終了を待ってからHTMLの解析を完了させ、Webサイトを表示していたが、新たにHTMLとスクリプトの解析を並列化。HTMLとスクリプトを同時にレンダリングすることでサイト表示が高速に行えるようになった。スクリプトの実効速度はIE6と比べて7倍、IE7と比べても5倍に高速化したという。

IE8で目指したもの

WebアプリやAJAXなどでサイトが大容量化している昨今、「(サイト表示の)高速化がすごく求められている」(ビジネスWindows本部長 中川哲氏)中で、そのニーズに応えるために開発を続けているとのことで、IE8は「とにかく(表示の)スピードが速い」(同)Webブラウザに仕上げた。ただし、ライバルとなるFirefoxなど他のWebブラウザとの比較は「行ってもいない」(ビジネスWindows本部シニアプロダクトマネージャ 原田英典氏)という。

IE8の高速化の理由(左)。これにより大幅な高速化が実現した

IE6/7/8でのレンダリング速度の比較。IE8はすでに読み込みが終了しているが、IE6/7はまだ読み込み終わっていない

便利な機能としては、新規タブを開いた画面で、その前に閉じたタブを再度開く機能が追加された。アドレスバーに文字列を入力した際に、履歴やお気に入り、登録フィードの中から一致するURLやタイトル(日本語対応)を表示してくれるようになった。検索ボックスでは、入力すると同時に候補を画像付きで表示される。

閉じたタブを再び開く機能。誤ってタブを閉じてしまった場合にも便利

アドレスバーに文字列を入力したところ、URLだけでなく履歴などからずらりと候補が表示された

検索ボックスでは、入力するそばから検索候補が表示される

新たな機能として「アクセラレータ」を搭載。サイト内の文字列を選択すると表示されるアイコンをクリックすると、対応Webアプリをその場に表示してくれる、という機能。例えば住所を選択したら地図が表示されたり、用語検索をしたり、わざわざ「文字列をコピーして該当するサイトにアクセスして検索窓にペーストして検索する」といった手順をしなくてもすぐさま検索結果が表示できる。

文字列を選択し、青いアイコンをクリックすると表示される選択肢から任意のサイトを選ぶと、その検索結果が小画面で表示されるアクセラレータ

「WebSlices」では、Webサイトの一部を切り取ってお気に入りバーからいつでも該当する部分にアクセスできるようにする機能。毎日見に行くようなサイトを登録しておけば、いちいちアクセスしなくても素早く必要な部分だけ閲覧できる。

WebSlicesでは、サイト側が指定した個所にカーソルをあわせると緑の枠が表示され、その部分を保存できる。任意の個所を切り取って保存することはできない。保存したWebSlicesは、お気に入りバーからすぐにアクセスできる

アクセラレータとWebSlicesではサイトやWebアプリ側の対応が必要となっており、マイクロソフトでは対応サイトが増えるよう呼びかけを強化していく考えだ。

安心機能では、従来のフィッシングフィルタに加え、新たに「SmartScreenフィルター」を搭載。ローカルに保存したDBの情報とHTTPヘッダの内部を解析し、マルウェアの危険性があるファイルをダウンロードしようとするとブロックしてくれる。特にウイルス対策ソフトを切っていたり、最新の定義ファイルに更新していなかったりする場合に安全性が向上できるとしている。

危険なファイルをダウンロードしようとするとブロックされる。他のウイルス対策ソフトとのバッティングは現時点で確認されていないそうだ

「クロスサイトスクリプティングフィルター」により、サイトが改ざんされてクロスサイトスクリプティング(XSS)攻撃が行われている場合、アクセス時にそのサイトをチェックして攻撃を無効にしてくれる。

XSSによって、入力したIDとパスワードが外部に漏えいしている様子(左)。XSSフィルターを利用すると、それが回避された(右)

共有PCなどでWebアクセス履歴を残したくない場合に便利なのが「InPrivateブラウズ」機能。同機能を有効にしたあとは、Cookieやキャッシュ、履歴といったアクセス情報を残さずにブラウズができるようになる。

InPrivateブラウズ中はアドレスバーにアイコンが表示される

また、「自動クラッシュ復元機能」を搭載したことで、あるサイトを閲覧中にIE8がクラッシュした場合、従来はWebブラウザ全体が再起動していたが、IE8ではクラッシュしたサイトを見ていたタブだけが再起動し、ほかのタブには影響が及ばない設計になった。

自動クラッシュ復元機能で該当するタブだけ復元されたところ。ほかのタブは無事

こうした新機能の追加に加え、「特に重要なものとして取り組んだ」(中川氏)というのが標準への準拠と互換性の確保だ。

Web標準への準拠では、Web標準化団体W3CによるCSS2.1への準拠を特に重視した。マイクロソフトではIE4からCSSなどの独自拡張を行ってきたが、IE6からは標準への準拠を進め、IE8では標準を順守し、「IE向けのサイト」を作る必要がなくなったという。

下位互換性にも配慮。標準レンダリングの「IE8描画モード」に加え、「IE7標準モード」を用意。IE7には完全対応したサイトながらIE8では表示が崩れたり動作がおかしいようなサイトでは、IE7モードを使えばIE7と同じように動作するようになる。

IE8描画モードで問題が起こりそうな場合、アドレスバーの右端に「互換表示ボタン」が表示されるので、そのボタンを押せばIE7モードで描画される。また、サイト管理者側で専用のMETAタグを埋め込むか、サーバから専用のHTTPヘッダを送信することで、自動的にIE7モードで描画させることも可能だ。

IE7標準モードで表示させたい場合に利用するMETAタグとHTTPヘッダ

IE7に対応していなかったサイトでは、Web標準に従ってサイトを構築すればいい。IE8では、標準に従っていれば正常に表示・動作されることになっている。

こうした新機能の追加・改善を加えたことで、IE8は「これまでにない大幅でアグレッシブなバージョンアップ」(原田氏)になったという。

中川哲ビジネスWindows本部長

ビジネスWindows本部シニアプロダクトマネージャ 原田英典氏

IE8は、ベータ2で搭載を予定しているすべての機能を備え、企業のIT管理者やWeb開発者、先進的なユーザーなどの評価を積極的に受け付ける。セットアップや使い方に関しての無償電話サポートも用意し、多くの人に使ってもらいたい考えだ。

すでに、金融機関のような重要なサイトや生活に密着したサイトなどのIE8対応を確保する施策を進めているほか、アクセス数の多いサイトに対してもIE8対応を呼びかけていく。なお、正式版の配布時期に関しては明言されなかった。

IE8ベータ2の対応OSはWindows XP/Vista/Server 2003/Server 2008。IE7とは共存できないため、インストールには注意が必要。IE8ベータ2をアンインストールして旧バージョンに戻すことは可能だ。