チェプロ 代表取締役社長 福田玲二氏

システム開発/コンサルティングを手がけるチェプロは7月7日、.NET FrameworkベースのWeb3階層アーキテクチャを備えた建設業向けERP(Enterprise Resource Planning)システムの新製品「建設WAO」の発売を開始すると発表した。同製品では、クライアントにWebブラウザではなく、.NET Frameworkベースのアプリケーションを利用。また、アプリケーション・サーバとの通信には、同社の独自開発技術「WAOテクノロジー」を採用することで、これまでWebシステムで起こりがちだったレスポンス・スピードの低下やデータ落ちを防ぐとともに、クライアント/サーバ型システムと同等の操作性とレスポンスを実現したとしている。

発表にあたって、チェプロで代表取締役社長を務める福田玲二氏は、同社が、建設業界向けのクライアント/サーバ型基幹システムを2001年に発売するなど、建設業界向けの業務改善プロジェクトや基幹システム開発に長く携わってきたことを紹介。また、2006年には、マイクロソフトのITベンチャー支援プログラム「インキュベーションプログラム」に選出されたことや、今回の製品に利用しているWAOテクノロジーが、マイクロソフト主催の「INNOVATION AWARD 2007」で優秀賞を受賞したことなどを説明。そのうえで、「建設業を徹底的に分析・調査し、必要とされる機能を実装した。新たにWAOテクノロジーを採用したことで、ASPでもシンクライアントでもない、Webブラウザを使わない次世代のインターネット対応ERPとなった」とアピールした。

同社によると、WAOテクノロジーは、.NET Framework上で動作する独自開発の通信プロトコルとメモリ制御技術の総称という。具体的には、クライアント-サーバ間の通信時に、フォーム情報やデータベース情報などの情報をやりとりせず、表示画面の項目単位で通信を行うことで、通信に必要なデータ量を少なくし、レスポンスを向上させるというもの。クライアントとサーバ双方に同テクノロジーを組み込むかたちで構成し、クライアントからは、サーバを経由し、データベース上のデータを直接参照することになる。レスポンス向上の度合いは、「体感で10倍程度」といい、同時アクセス数やレコード数が増えても、実行効率は大きく低下しないとしている。

「WAOテクノロジー」を採用したWebシステムのアーキテクチャ図

クライアントには.NET Framworkアプリケーションを用いるため、一般的なWebアプリケーションのように画面を遷移させる必要はなく、Ajax技術ではできないような、2つの画面を連動させたうえで同時に描画を更新するといった操作も可能。また、システム起動時には、クライアント側のモジュールとサーバ側のモジュールと比較し、差異があれば、新しいモジュールを自動的にクライアントに送信する機能が備わるため、サーバ側でクライアントの一元管理も可能になるという。クライアント側には、データは一切残らない。

建設WAOは、このアーキテクチャを実装し、原価管理、見積・積算、工事管理、営業管理という4つのシステムで構成されるERP製品。具体的には、各システムを一元的なデータベースで管理し、他のシステムで入力されたデータは即座に反映できるようにしたうえで、原価管理で、工種別、材料別、取引先別といった視点で原価や利益の計算を行ったり、営業管理や工事管理で、取引先や個々の工事の担当者などを一覧を表示して、スケジュールや案件の履歴などを確認できたりする。これによって、「原価をリアルタイムに計算・分析して赤字工事の発生を防止したり、案件の詳細をたどることで、トレーサビリティ管理を行うことができる」(福田氏)という。

「建設WAO」の画面。原価管理、見積・積算、工事管理、営業管理の各システムを統合

発表では、実際に、同社の大阪営業所に設置されたサーバに、会場である東京からアクセスするデモも披露された。このデモでは、クライアント側で、「予算数量」項目の数字データを変更すると、その数値がデータベースに反映されるとともに、計算し直された「原価見積」や「実行予算」の結果がほぼリアルタイムに表示されることや、クライアント側で画面を2つ表示させたうえで、1つの画面で「鉄筋足場」などの部材を選択すると、それに連動して、過去に使われた「鉄筋足場」などのデータが2つ目の画面に表示されることなどが示された。

クライアント側で修正したデータはリアルタイムでデータベースに反映される。C/Sシステムのように、2画面を連動させた操作も可能

建設WAOの価格は、営業管理システムが75万円から、見積積算システムが62万5000円から、原価管理が150万円から、工事管理が100万円から(いずれも5ユーザーから)。現在、WAOテクノロジーを組み込んだシステムとしては、6社への導入実績があるといい、パッケージ化した今回の新製品では、今年度10社への導入を予定しているという。

なお、同社によると、今後、WAOテクノロジーをモジュール化し、単体で利用できるようにすることも検討している。これにより、既存のクライアント/サーバ型システムやパッケージ・システムをインターネット上で稼働するシステムへと移行させることも可能という。また、建設業だけではなく、同テクノロジーを組み込んだ業種別ERPを展開していくとしている。