マーケットのSaaSへの関心の高まりを受け、テクノロジー志向のITベンチャー企業支援を推進するwipse ITベンチャーコミュニティは、『SaaSセミナー』を開催した。この中で、マイクロソフトは現在進めているSaaSへの取り組みを紹介している。

マイクロソフト アーキテクトエバンジェリスト 平野和順氏

まずはじめに、同社アーキテクトエバンジェリストの平野和順氏が、企業システムの新しい流れに帯同する同社の戦略「ソフトウェアプラスサービス」を解説。この構想はSaaS、SOA 、Web2.0、RIA、デバイスの5つの要素により、人、デバイス、サービスを融合させるというもの。これにより、同社はWebをハブとしてさまざまな人やデバイスを連携するデバイス・メッシュとソーシャル・メッシュの実現を目指す。

同社はこの戦略に沿って、多くのアプリケーションのために「アイデンティティとアクセス」「コミュニケーション」「サーチ」「サービスデリバリ」等の基本機能の部分を用意する。その上でさまざまなサービスが実現される環境を整備すると同時に、同社自身もWindows Liveやオンラインサービスを提供し、それらと他のアプリケーションの連携によって、ネットワーククラウドの中でユーザにシームレスなオンラインサービスの提供を実現する。

そのために同社は3種類のサービスを用意した。Windows Liveのようにそのまま利用できる「完成品サービス」のほかに、既存のソフトウェアやデバイスと組み合わせて付加価値を生む「付加サービス」、さらに既存のアプリケーションと組み合わせることで大きな価値を生む「ビルディングブロックサービス」だ。これらを適切に組み合わせることで、効率よくソフトウェアどうしの連携を進めることが可能になる。

現在、同社は、BizTalkサービスのインターネット上での展開や、SQL Serverを利用したクラウド上のデータベースの公開により、デバイス・メッシュのラボ環境を提供している。すでにKDDIのホスティングによりExchange Serverのオンラインサービスはスタートしているが、同時に、このプラットフォーム上でソフトウェアベンダのサービスを実現する準備も進めているという。こういった環境を用意することで、同社は、クラウド上のサービスと企業内サービス、さらにはクラウド上のデータと企業内のデータを連携させ、ひとつのデスクトップに表示することを目指している。

Exchange Serverのオンラインサービスモデル

このようなアプリケーションホスティングの発展は、フレームワーク部分の進化とアプリケーションのモジュール化に依存するところが大きい。たとえば、シンプルなSaaSタイプのアプリケーションモデルに、デスクトップとしてOfficeからのアクセス機能を加えた場合、Webサービスを追加するだけでそのモデルの再利用が可能となる。また、デバイスの大きさに左右されないユーザインタフェースの進化も重要な要素となる。WindowsプレゼンテーションファウンデーションやSilverlightがもたらしたユーザインタフェースの技術革新は、数値化情報の可視化を促進するなど、アプリケーションのポテンシャルを拡充するものでもある。

こういったさまざまな観点から、同社は、ソフトウェアプラスサービスをITのポートフォリオ全体をカバーするコンセプトとして位置づけ、今後1、2年の間に、これらを具現化するためのさまざまなサービスやクライアントソフトウェアを次々に発表していく方針だ。