ガートナー リサーチ バイス プレジデントのフィリップ・ドーソン氏

続いて、ジェネラル・セッションでは、ガートナー リサーチ バイス プレジデントのフィリップ・ドーソン氏が「データセンターをグリーン化せよ:生きた有機体への進化」との表題で講演した。「データセンターは進化している。生物として、環境に影響を受けているものと捉えたい」。ドーソン氏はこのように述べた。データセンターはいまや水、空気など環境の変化、動向との関連を無視して存在することは困難であるとの考察だといえる。

そもそもデータセンターは、前の世代のITの主役だった「大型汎用機のための施設だった。建物自体、温度、規模など、設計のポイントは大型汎用機に準拠していた」(ドーソン氏)のだが、技術の進化にともない、最も有力なITの担い手は交代した。次にはクライアント/サーバ型が主流の座に就き、必要な消費電力量も大きく変わったが、さらにブレードサーバのようなモジュール型が台頭、次の世代へと動いている。こうした変化に対応して「データセンターは生き物のように進化しなければならない」(同)。

データセンターの設計について重視される項目として、これまでは財政的な面、いかにコストを低くできるかということにより焦点が当てられていた。しかし、それも単純な視点ではいけないと、ドーソン氏は説く。「技術だけでなく、人間という要素もよく考慮されるべきだろう。ハード、システムのコストが下がったとしても、人間についてのコストが2倍になったとしたら意味はなくなる。いかにして継続的なコストを削減することができるかどうかが、グリーンITの要となる」

ドーソン氏は、これからのデータセンター構築にあたって、「プロセッサ/システム設計/電力」「運用プロセス/ツール」「設備の改装」「災害復旧/事業継続」「統合 合理化」「OS、アプリケーションの変更」など、8つの要素があるとして、これらが連携するとともに、これらに対し「グリーンIT/エネルギー」「仮想化」「最適化」という3つの基本理念に沿って、バランスよく注力していくことが重要だという。

このような観点から、グリーン化データセンターとは概ね、以下のような基本形と位置づけられる。

電気・機械系統や建物自体のエネルギー効率性を高くし、システムもエネルギー効率が良くなるよう監視される。また、エネルギー源は従来の形式だけでなく、太陽熱、風力、水力、地熱といった、自然界の力を利用した方法をも複合的に利用する。廃棄物、排出物は、減量するとともに再利用する。

ドーソン氏は「データセンターの設計の考え方は、重要度を増しており、今後はさらに重要になる。データセンターをどのように構築するか、その取り組みを再評価すべきだ。データセンターのあり方についての、従来の発想はもはや通用しない。しばらくは混乱も生じるだろうが、グリーン化を進めなければ、ITサービスの実現能力は損なわれることになる」としている。