ガートナー ジャパンは、「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2008」を東京千代田区で開催している。今後、企業が競争力を強くするための重要な焦点になると考えられるITインフラストラクチャ、および次世代データセンターの技術の最新動向と、企業がいかにこれらを活用すべきかを論議する。

初日の基調講演には、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明(またがただあき)氏が登壇、「ITインフラストラクチャのメガトレンド 2008」と題し、ITインフラの現状と未来について解説した。

ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏

ITインフラと技術は「コストの低減化が主目的として語られることが多い」(亦賀氏)が、「たとえば、宇宙の規模でビジネスを考えると、超高速インターネット衛星は、非常に大きな容量のデータを円滑にやり取りできるようになる。移動体通信衛星が本格化すれば、携帯電話の基地局は不要になるかもしれない。技術というものは、高度に戦略的な切り口で活用されると、これまでには予想もつかなかったようなことが実現する可能性があると認識すべき」(同)であり、「インフラと技術は、ビジネス、ライフスタイル、さらには国家レベルの競争優位までを変えてしまう可能性がある」と亦賀氏は主張する。

単なるオープン化の時代は終わった

このような状況の背景には「ITの時代は変わってきている」(同)との事実がある。かつて、米IBMが大型汎用機を提示、「ここからITが始まったといっても良い。国内の大手ハードベンダーも追随した。これはいまから40年くらい前だ。その後、Windows 95が登場し、オープン系のサーバが出てきた。10-10数年前のことになる」(同)わけで、ITの基本構造は当初の中央集権型から、クライアント/サーバ型、オープン化へと進展した。だが「オープン化により、ハード、ソフト、サービスはバラバラになった。多様化は好ましいが複雑化も進んだ。それが最適なのかどうか」(同)との段階に来ている。亦賀氏は「今後は全体的な統合、システムの視点が必要となり、単純なオープンの時代は終わった」と指摘する。

新たな時代では、ユーザー企業は「ITインフラと技術を、競争に勝つための武器として考えなければならない」(同)ようになる。そのために企業は「ビジネス戦略と連動したIT・インフラ戦略を確立することが求められ、長期的な視野に立ったビジョン、方向性をもっていなければいけない」(同)という。亦賀氏は「企業は2008年内に、ITインフラ・ビジョンと最適化戦略を策定すべき」と語り、これは企業にとって緊急の課題であると強調した。

企業がこれから、特に注目していくべき新しい技術の1つとしては「クラウド・コンピューティング」がある。亦賀氏は「クラウド・コンピューティングは古くて新しい発想といえる。キーワードから、ようやく実体的なものとして確立しようとしている。要するに『雲』のなかから、サービスが降ってくる」と話す。ハード、ソフトに依存することなく、「必要なときに必要なサービスを提供できる」クラウド・コンピューティングが全体最適に有効であり、「単なるオープンではない」時代の鍵になるものとみている。

人材こそ最も重要、育成でなく投資と認識すべき

新たな時代に対応していくためには、将来像を見据えたシナリオがあることが望ましい。そのようなシナリオを策定するには、まず、「人」とプロセスの再検討が重要になるという。「人」の役割が明確であるかどうか。非効率なプロセスはないか。見直しが必要になる。また、システム構成の効率性や、時流に遅れた技術を温存していないか、といった事項の点検も必要だという。

ガートナーではこうしたシナリオ策定にあたり、1つの指標となる「インフラストラクチャとオペレーション(I&O)成熟度モデル」を提唱している。ここでは、「人」、「プロセス」、「技術」の3本柱がビジネスを支えている、との構造を基本とする。これらの要素は、ビジョンに向け段階的に発展、次第に成熟していくという考え方であり、0から5までの「レベル」がある。たとえば「人」の場合、0では「組織がIT I&Oに焦点を当てていない」が、3では「プロセス中心型の組織。ガバナンス構造を定義済み」となり、5では「ビジネスの最適化と起業に焦点を当てた文化」となる。亦賀氏は「人材こそ最も重要だ。人材の確保は、育成というレベルでなく投資と認識すべき」としている。