新たな携帯プラットフォーム導入も効果なし

だが、2004年8月以降、中国移動はMISC(Mobile Information Service Center)プラットフォームを導入し、ユーザーが再確認のためのショートメッセージで了承しないと、SPが勝手に費用を徴収できなくした。そのため、多くのSPが倒産の憂き目にあった。しかし、上に政策があれば下に対策があるとはよく言ったもので、悪質なSPはまもなくMISCのバグを見つけた。

彼らは、ショートメッセージにさまざまな落とし穴を仕掛け、ユーザーに無意識の内に返信させることにより、MISCプラットフォームの認証を得て売上金を引き落とせる仕組みをつくった。

例えば、30台の大量発信サーバを持つある中規模SPは、一日に20万件のフィッシング情報を発信、少なく見積もっても約3%の返信率があるという。これだと、8元(120円)/月の業務一つをバンドリングしただけとしても、毎日の営業収入は4万8,000元(約72万円)に達する。携帯キャリアへの分配や情報料を支払っても、このSPは毎日4万元(約60万円)の収入を得ることができる。

SPのバンドリング業務は当初それほど長続きしなかったが、その後のMISCプラットフォームのバグが多くのSP企業の命綱となったのだ。このバグが、SPが自ら発見したものなのか、それとも携帯キャリアがわざと「裏口」として残しておいたものなのかは分からない。

中国移動が分衆無線のショートメッセージ業務を停止してまもなく、中国の迷惑ショートメッセージ業界に次なる変種が現れた。新種のショートメッセージ発信会社は、ネットワークアカウントでユーザーに迷惑ショートメッセージを送りつける。

これらの業者は、一晩で1,000件ものアカウントを取得し、アカウント1件につき30~50個のショートメッセージを送ることができるという。当局が取り締まりを行うたびに一部のSPが破綻するが、すぐに技術上のバグを見つけ、新たなSPが「頭角を現す」という構図が出来上がっている。

SPはさらに、自社の商品を事前に海賊版の携帯端末の中に、オプションとして組み込んでおく。相当数の携帯電話ユーザーがうっかり関係オプションを選択すれば、ユーザーがその商品を購入したことになって、毎月売上金が引かれるという形だ。海賊版の携帯電話製造業者はこうしたSPと協力し、オプション組込み料金を徴収するだけではなくSPの業収入を一定の割合で分けてもらえる。しかも、海賊版携帯のユーザーは、一般に権利保護の意識が薄く、めったに苦情を申し立てないから、SPなどにとってはさらに好都合となる。

切ってもきれない携帯キャリアとSPの関係

これまで見てきたような悪質なSPが市場で跋扈する現状を前に、携帯キャリアには防ぐ手立てはないのだろうか。

実は、携帯キャリアとSPは、切っても切れない関係にある。キャリアはSPを管理するが、一方では、SPと結託することで得られる巨大な利益を捨て切れない。SPは、どうにかキャリアの管理から逃れようとするが、一方ではキャリアからできるだけ多くの通話料を天引きしようとする。このようなイタチごっこのゲームは、永遠に続くかにさえみえる。

単純な技術論からすれば、中国の携帯キャリアは迷惑ショートメッセージを徹底排除できるはずだ。SPのショートメッセージ発信には、二つのルートしかない。一つは、モバイル端末で直接送信する方法。もう一つは普通のSIMカードを購入し、ショートメッセージ発信サーバを利用して送信する方法だ。

端末を利用して送信されたショートメッセージについては、バックグラウンド処理を行うことで、携帯キャリアは登録されている全てのSPの詳細な行為データを得ることができる。これにより、SPに対する管理制度や端末を開放するか否かを決めることが可能になるわけだ。

発信サーバを利用して送信される迷惑ショートメッセージについても、同じ番号から多数の重複するショートメッセージが送られた場合、携帯キャリアはこれを制限することができる。

中国では、具体的な操作段階において、SPと運営キャリアは切っても切れない関係にある。金の力による外交工作だけが全てなのではない。多くのSPはキャリア内部のスタッフと極めて密接な協力関係にある。

一部キャリアの内部管理スタッフがSPの仕事を兼ねている場合すらある。さらに信じられないのは、CCTVが放映した消費者利益を保護するための「3.15」特別番組の製作スタッフが、暴利の実態を報道した後、その巨大な利益を見てSPに転業したといった事実まであるというのだ。