プログラマの爆発に備えて

以下の図は、米持氏が紹介した2012年におけるプログラマの人口予測値のグラフである。アメリカの労働省が公開したものだという。

2012年におけるプログラマの人口予測値

"トラディショナルプログラマ"がJavaや.NETを使ってビジネスアプリケーションを作る従来のプログラマ、"Webデベロッパ"がよりライトウェイトな言語や技術を駆使してWebアプリケーションを開発するプログラマである。そして今後爆発的に増えるとされているのが、Web上で公開されているさまざまなコンテンツを組み合わせて新しいUIやマッシュアップコンテンツを構築する"アプリケーションアセンブラ"と呼ばれるプログラマだ。このグラフが表す意味を、米持氏は次のように指摘している。

「一番下のJ2EEなどのプラットフォームだけで大規模なアプリケーションを作っていただけでは、将来的にニーズに追い付いていけなくなります。そこでもっと簡単な言語、低コストなプラットフォームでの開発がどんどん増加していきます。さらにエンドユーザの中からは、UIやコンテンツ自分達の好きなように組み換える人達が出てくるということです」

IBMではそのような状況になったときにすべての層をカバーできるよう、さまざまなツールを市場に送り出すことに注力しているという。

効果的な開発の進め方は

ディスカッションの後半は「メソロジー」をテーマとして進められた。特に開発の進め方について、宮川氏は「ユーザに使ってもらうものを作る際には、リリースサイクルを短くすることが重要になってくるのではないか」と指摘している。

「社内で何カ月もかけて完全なものを作り上げてからリリースするよりも、ある程度のレベルまでできたらどんどんリリースし、ユーザに使ってもらってフィードバックをもらったほうがニーズに沿ったものを提供することができます。最終的に製品版として完成した場合にも、ベータ的な要素を残すという方法もあります」

それに対してIBMではよりよい開発のためにどのような取り組みを行っているのだろうか。米持氏によれば、ソーシャルネットワークやブログ、Wikiなどのコミュニケーションツールは社内でも積極的に活用されているという。また、社内限定のOSSコミュニティのような仕組みがあり、あるチームが開発したツールを別のチームが自由に使えるようになっているという。

その他、メソロジーという観点では「IBMは典型的なメソロジー会社だ」と米持氏は主張している。

「IBMの提供する代表的な方法論としてRUP (Rational Unified Process) がありますが、これなどは請け負いによる構築ビジネスのメソロジーと言えます。またIBMが昨年発表した新しい試みにJazzというプラットフォームがあります。これはコミュニティベースのOSS開発手法を商用アプリケーションの開発に適用しようというもので、IBMの新しいメソロジーと言えます」

本ディスカッションは、宮川氏と米持氏というまったく違う立場の2人から全く異なる視点での意見を聞くことができ、非常に興味深いものとなった。