マイクロソフトなどが加盟するICT教育推進プログラム協議会は、日本の初等中等教育機関における教育の情報化を推進するための新施策として、ICT活用ゲートウェイを発表した。登録制のインターネットポータルサイトを立ち上げ、授業や校務におけるICT活用を推進するもので、教育委員会、教職員などの役割に応じた情報を発信、教育分野におけるICTスキルの向上などを支援する。
具体的には、教員のICT活用指導力向上のための研修、教育コンテンツの提供、授業や校務のシーンに応じた活用提案とICT機器構成例の提案、テンプレートや事例の紹介、国からの関連施策情報、有識者からの情報発信など行う。ブログ形式での情報発信も行っていく考えだ。
大井川和彦氏 |
また、特別クーポン制度を導入し、教育分野における特定の商品購入時にこれを提供。「還元率は3 - 5%を想定し、将来的には10%まで拡大する計画。2,000台のPCを導入した場合には、250万円のポイントが獲得できるだろう。このポイントを、MS Officeをはじめとする各種マイクロソフト製品や、ハードウェアの購入に利用できるようにする」(ICT教育推進プログラム協議会 事務局長およびマイクロソフト 公共インダストリー統括本部長 大井川和彦 執行役常務)という。
教育現場では、教員のICTスキルがあるのにICT機器がない、ICT機器をどのように使えばいいのかわからないといった声がある。こうした教育現場におけるICT活用の課題を解決することを目的に、マイクロソフトなどがICT教育推進プログラム協議会を2003年11月に設立。設立以来の4年間で、4万7,000人の教職員を対象にトレーニングを実施してきた。同プログラムを積極的に導入した茨城県では、教職員のICT利活用スキルにおいて、全国1位を獲得するなどの成果を上げている。また、この教育プログラムに利用した3種類のテキストが英語化され、アジアを中心に全世界で活用されているという。
ビデオでメッセージで登場したICT教育推進プログラム協議会 清水康敬会長は、「教育の情報化には産学官の協力が必要。今回のICT活用ゲートウェイによって、教育委員会、学校、先生といった多くの人に参加してもらい、ICTによって子供たちが新しい時代に生き抜く力を備えること、学力を向上させることに期待している」とした。
米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは、「教育は、人のポテンシャル、創造力を引き上げるという点で、Microsoftと同じ目標をもっている。Microsoftが取り組んでいるパートナーズ・イン・ラーニング(PIL)は、日本の教育市場にあわせた形で進歩させてきた。日本では、スタートから4年を経過した協議会活動は、すでに功績があがっているが、ますます努力をしなくてはならない。ICTの変革によって、これからも変革を起こすことができるだろう。ICT活用ゲートウェイによって、日本におけるPILは第2段階へと入るが、ワンストップのポータル環境において、教職員はマウスをクリックするだけでさまざまな情報を入手できるようになるメリットは大きい。ICT活用をさらに促進できるだろう」と期待を述べた。
現時点で、ICT活用ゲートウェイに賛同している教育委員会は、熊本県教員委員会、兵庫県教育委員会、和歌山市教育委員会。また、参加企業は、マイクロソフト、デジタルナレッジ、パソコン検定試験(P検)、エデュシステム、JMCエデュケーションズ、内田洋行、PBJ、ゼッタテクノロジー、松下電器産業、チエルとなっている。
一方、会見に駆けつけた衆議院議員の小坂憲次氏は、「日本の教育現場におけるICT利用は遅れている。だが、機器を設置する予算の増強だけでは不十分。軽いOSにして、古いPCでも動かすことができないか、あるいは使いやすいライセンスフリーのようなものを提供できないか、英国のティーチャーズTVのように教育者が学習し、ダウンロードできるようなものができないかといったことをマイクロソフトに提案してきた。日本の教育に熱心に取り組むマイクロソフトに参加してもらい、それをリードしてもらいたい。日本での成果は、開発途上国援助にもつながるだろう。ICT活用ゲートウェイのような形で、話し合いの成果が出たのはうれしい。ICT活用ゲートウェイを教育現場に知ってもらい、活用してもらい、ICT教育を広げてほしい」とした。
また、初等中等教育局参事官付情報教育調整官 中沢淳一氏は、「新たな学習指導要綱では、小学校から使う、中学校では主体的に使う、高校では実践的に使うという方向で、改訂の審議が行われている。ICT活用ゲートウェイによって、教員が現場感覚で使ってほしい。子供たちの学習意欲の向上、学力向上につなげる機会になればと期待している」とした。
小坂憲次氏 |
中沢淳一氏 |