44th Design Automation Conference(DAC)では、「Synthetic Biology: An Emerging Discipline with New Engineering Rules and Design Tools」と題する特別セッションが開催された。DACでこのような生物学に関するセッションが設けられたのは、恐らくは今回が初めてである。なお、「Synthetic Biology」は、構成的生物学あるいは合成的生物学などと訳される。

Synthetic Biologyの概要

細胞は、化学物質を外からのインプットとして受け取り、内部でさまざまなタンパク質を合成する。この反応は、インプットが増えるとアウトプットも増えるという単純な関係だけにとどまらない。

インプットがある閾値を超えると急激にアウトプットが増えるというデジタルなスイッチングともいうべき動作を引き起こす。さらに、あるプロセスにおいて、インプットに従ってほかのプロセスのアウトプットの生産を抑制するタンパク質を生成し、全体としてはインプットが増えるとアウトプットが減少するという否定機能も作れるという。加えて、2つ以上の入力がアウトプットの生成に影響するプロセスもあり、ANDやORなどの論理も実現できる。

このように、細胞の遺伝子を操作して意図した機能を実現する回路を作るのが、このSynthetic Biologyである。

EDAツール業界も注目する技術

AND、OR、NOTで論理回路を作るという点では、ある程度、現在のEDAツールが役に立つ可能性もある。しかしながら、動作原理がまったく違うので、Synthetic Biologyのためには新しいEDAツールが必要となると考えられている。そのため、EDAツール業界も将来のビジネスチャンスとしてSynthetic Biologyに注目している。そういったことを背景にして、今回のDACにおいてこのようなセッションが企画されたのだろう。