ご覧いただいたとおり、BetaNewsのトップテンは、当然ながらMicrosoftがWindows Server 2008の特徴としてアピールしている新機能のリストとは微妙に力点の置き方が違っている。どうもBetaNewsのリストは、アプリケーション開発者の見方が強く反映されているようだ。

MicrosoftのWebでは、サーバー マネージャ(Server Manager)やIIS 7.0、読み取り専用ドメインコントローラ(RODC)、ネットワーク・アクセス・プロテクション(NAP)といった機能が大きく取り上げられており、管理性とセキュリティの強化が大きなテーマとなっていることが伺える。

改めて残念に思えるのは、当初の"Longhorn"の構想と比べると、Windows Server 2008はかなり後退した仕様となった点だ。もちろん、リリース時期をこれ以上遅らせるわけにはいかないだろうし、コードの品質を高めるための熟成期間を確保する必要もある。毎回バージョンアップのたびにドラスティックな変更を持ち込むことが常に正しいわけではなく、ユーザーがそれを望んでいるとも限らないのだが、ことLonghornに関しては、搭載予定とされた新機能に魅力的なものが多かった分、それが実現しなかったことに対する失望感も大きいように感じられる。

たとえば、BetaNewsが7位に挙げた"Kernel Transaction Manager"は、もし当初の構想通りにWinFSが実装されていたら、ファイルシステム上のあらゆるファイルに対して同様のコミットメントによる変更確定が実現していたかもしれない。SQL Serverのデータベース技術を組み込んだ"データベース型ファイルシステム"になると言われていたWinFSには、当初から従来のアプリケーションとの互換性を懸念する声があったし、実現は簡単ではないだろうと考えていたユーザーも多く、キャンセルされた際にも半ば予想通りという反応も見られたのだが、それでも残念な結果には違いない。また、仮想化のためのハイパーバイザとして開発されているViridianについても、当初予告されていた機能の多くが削減され、Windows Server 2008のリリース当初はごく基本的な機能を実装するだけに留まると言われている。もちろん、仮想化に関しては今後も継続的に開発が行なわれ、段階的に機能強化が図られていくことは間違いないと思われるが、構想段階であまりに魅力的なプランを披露してしまうと、リリースの段階で失望を招くという点ではマーケティング戦略としてあまり好ましくないかたちになっているのは間違いない。

Windowsの進歩は、互換性の確保に対する多大な努力に支えられていると見て良さそうだ。ただし、セキュリティや安定性、信頼性の面から見ると、互換性の維持が改良を難しくしていることも否定できないだろう。ハイパーバイザ型の仮想化技術は、互換性が必要な場面では旧バージョンのOSを仮想化して実行することを許容するので、新たな進化を加速する可能性がある。新バージョンのOSの互換性が多少劣ったとしても、仮想化で補うことで実用上の問題を回避できる可能性があるので、逆に必要な改良については互換性を犠牲にしても取り込む、という決断がしやすくなるのではないだろうか。現在公開されている情報からは、Windows Server 2008の仮想化への取り組みは、OS全体の設計方針を左右するような位置づけにはなっていないと感じられる。しかし、Viridianが成熟してくれば状況が大きく変化する可能性もあると思われる。

というわけで、個人的にWindows Serverの将来の方向性を大きく変化させる可能性がある、という視点から、個人的にWindows Server 2008の新機能を選ぶなら、やはりトップにあげたいのは仮想化対応なのだが、どうだろうか。リリース時期が近づいてきており、既にβに基づいて検証作業を始めている管理者も相当数いるものと思われるが、たまには息抜きがてら自分なりのトップテンを考えてみても面白いのではないだろうか。