前編では、「オンライン会議を『なるり』が活性化!? 中学講座で人気のVティーチャー『なるり』は、中学生だけじゃなく、大人もやる気にさせられるのか? オンライン会議で議論が活発化するかをベネッセ社内で検証した!」というテーマの下、行われた第1回目の会議の模様を紹介した。
後編では、2回の会議を通した考察となるり配信の裏側、そして後日談として「TECH+編集部員との打ち合わせも盛り上げられるのか?」という企画に挑戦した様子をお届けする。
自社Vtuberを会議に投入すると「会議は活性化する」
1回目の会議の1週間後に行われた2回目の会議では、「なるりの呼びかけによる議論の活性化」および「バーチャル背景の配布による顔出し率」に関しての比較実験が行われた。
具体的には「顔出し数」「発話数」「チャット数」という3つの項目の増加の検証と意欲の変化・態度変容理由などの「事後アンケート」を通じて、自社Vtuberを通してオンライン会議を活性化できるのかを検証した。
結果は、以下の表の通り。
ここからは具体的に結果を振り返っていく。
今回の事後アンケートで「会議への参加意欲に変化があった」と回答した人は約半数で、「まあそう思う」と回答した人と合わせると、約75%の人が「会議への参加意欲に変化があった」と回答する結果となった。
また、「会議への参加に楽しさを感じた」という項目では、過半数以上の人が「とてもそう思う」と回答しており、「まあそう思う」と回答した人と合わせると会議への参加者全員が「会議への参加に楽しさを感じた」と回答するという結果になっているという。
またチャット数やスタンプ数に関しても、「なるり」の登場前と後を比較すると、チャット上でコメントを多くするようになったり、スタンプを活用するようになったりしたという人がほとんどで、「なるり」登場によって会議が活性化されるという仮説を裏付ける結果に。
一方で、顔出し率に関しては、「なるりの呼びかけ」「バーチャル背景の配布」といった措置を取っても向上せず、そのハードルの高さが浮き彫りになった。
上記のような結果を踏まえて、ベネッセはいかのような考察をしている。
・Web会議という特性上、顔出しへの忌避感がある人は多くみられたが、デジタル背景を配布することで一部の人を動かすことができた。万人に通用するわけではないが、有効な手段ではあると思われる。また、キャラクターが声をかける(お願いする)ことも、一部には効果はあり、単発の会議であれば有効かと思われる(しかしどちらも、継続して複数回行うWeb会議においては、目新しさが減るため、どうなるかわからない)。
・マイクONの発言についても同様に、Web会議の特性上、対面の会議よりもタイミングが難しくハードルが高いため、キャラクターの進行の有無では差が見られなかった。ただ、キャラクターとやりとりが出来ることに喜びを感じている人もおり、発言をする人以外もチャットで盛り上がったことからも、会議自体の活性化には大きく寄与してしたと思われる。
・今回は10人程度での会議のため、参加者の性質の影響も大きく、大規模会議への応用については未知数である。しかし、デジタル背景やキャラクターというきっかけを提供することで、Web会議の活性化を図れる事例があることは検証ができた。次の機会があれば、大規模会議での検証も行ってみたい。
Vtuber配信の裏側に潜入 「中の人」の想いに迫る
このような「オンライン会議に潜入する」という大きな研究を行わせていただいた今回の企画だが、筆者は追加で「Vtuberの配信を行っている裏側も見てみたい」という厚かましいお願いをしていた。
ここからは、自由研究から少し離れるが、Vtuberの配信の裏側を少しお見せしようと思う。
「なるり」は普段、進研ゼミ中学講座の「編集室」に登場する先生として活動しているのだが、隔週で生配信などを行っているほか、YouTube以外にも進研ゼミのオンライン授業や会員とのコミュニケーションの場に登場することも多いという。
それらの撮影は、ベネッセの東京本部で行われている。
撮影のための機材が立ち並ぶ部屋にお邪魔したのだが、筆者はそこで、なるりの「中の人(キャラクターの演者の方)」と会うことできた。
「なるりを担当するようになって一番感じるのは『企画を練るのがすごく大変』ということです。どうしたら子どもたちに分かりやすく伝えられるかを考えることがとても難しく、また刺激的です」
後日談「なるりはTECH+編集部員との打ち合わせも盛り上げられるのか?」
自由研究としての全2回の会議が終了して約1カ月後。
筆者を含む10万人突破企画の【大人の自由研究】チームの3人は、今回の自由研究を通して得られた結果をベネッセの方から聞くためにオンライン会議に参加していた。
察しの良い読者の方は、お分かりいただけるだろうか。今回のオンライン会議もただの会議ではなく、2回目のドッキリの仕掛け人としての仕事をしなくてはならない会議なのだ。
「せっかくだったらTECH+編集部の皆さんにもお会いしたいです!自由研究の時と同じくサプライズで!」
前回、なるりに会った時にこのように言ってもらえた筆者は、残りの2人のメンバーにこのことを悟られないように、スケジュール調整や会議室の手配などを済ませ、この日を迎えていた。
会議が始まり、真面目な雰囲気のまま結果報告が終了しかけていた時、突如なるりが会議に登場した。
「ええ!すごい!」
結果発表だけで終了しかけていた会議だったが、この登場から「なるりへのメッセージ」や「今回の企画の感想」などの声も多く挙がりはじめ、当初の会議よりも活性化した会議で幕を閉じた。
筆者は今回の自由研究を通じて、「第三者が立ち会う会議」の方が意見を言いやすいのではないかと感じた。そして、その「第三者」がVtuberというなじみやすい存在であったからこそ、普段よりも活性化された会議を行えたのではないだろうか。