大幅な変更は「Redstone 3」にお預けか

最後は他の節に含められなかったWindows 10 バージョン1703の新機能を紹介する。まずHyper-V上の仮想マシンを管理する「Hyper-Vマネージャー」には、仮想マシンを素早く作成する「クイック作成」が加わった。が、しかし、完成度は決して高くはない。例えば仮想ハードディスクを作成するか否かの選択肢はなく、そのまま仮想マシンを作成すると、ストレージレスとなる。また、スマートページングファイルの作成場所はドキュメントフォルダーに固定され、Hyper-V設定で行う仮想マシン及び仮想ハードディスクの保存フォルダー設定が反映されないからだ。

Hyper-Vマネージャーに加わった「クイック作成」

Hyper-Vマネージャーに関しては他にも不可解な点がある。今回構成バージョンは8.0に更新されたものの、更新後もコンテキストメニューの<構成バージョンのアップグレード>が消えないのである。仮想マシンのウィンドウをリサイズするとスケールが動的に変化するなど使いやすくなっているものの、細かな部分で首を傾げざる部分が残っているのは至極残念だ。

セキュリティ面ではWindows Hello顔認証の認証処理速度が向上するなど、目を見張る部分も多いが、我々がもっとも使う「Windows Defenderセキュリティセンター」の存在は大きい。マルウェア対策のWindows DefenderやデバイスとOSパフォーマンスの監視、Windowsファイアウォール、各SmartScreenフィルター機能、そしてペアレンタルコントロールを一括して行うポータルアプリケーションである。

こちらも新機能の1つ「Windows Defenderセキュリティセンター」

機能的に特筆する点はないものの、スキャンや定義ファイルの更新などがUWPベースで行われる(カスタムスキャン時のフォルダー選択のみコモンダイアログを使用)ものの、デスクトップアプリのWindows Defenderも一応残っていた。試しに実体である「MSASCui.exe」を起動すると「応答なし」が何度か発生するなど、妙な動作を繰り返してしまう。なお、コマンドラインから操作を行う「MpCmdRun.exe」は以前のとおり利用可能だった。

各UWPアプリケーションも多くの機能が加わっているが今回は割愛し、「設定」の<アプリ/アプリと機能>に加わった「アプリのインストール」セクションについて述べておきたい。MicrosoftはUWPアプリケーションを推奨しているが、Windows 10 バージョン1703は、デスクトップアプリのインストールを抑止する設定項目が追加された。既定は制限のない「任意の場所のアプリを許可する」だが、「ストア以外からのアプリをインストールする前に警告する」を選択した状態では確認をうながすメッセージが現れ、「Install anyway」ボタンを押すことでインストールを続行できる。「ストアのアプリのみ許可」を選択した状態ではデスクトップアプリをインストーラーできず、「Get apps from Store」ボタンを押してWindowsストアにアクセスすることしかできない。

「アプリのインストール」セクションでは、3つの動作を選択できる

「ストア以外からのアプリをインストールする前に警告する」を選択した状態でデスクトップアプリのインストーラーを起動した状態

「ストアのアプリのみ許可」を選択した状態でデスクトップアプリのインストーラーを起動した状態

この背景にはMicrosoftの"UWPアプリケーション推し"がある。確かに、日常的に利用するアプリケーションがすべてUWP化すれば、PCの新規セットアップも容易になるので、筆者も推奨したい……ものの、今現在も「秀丸」で本稿を執筆し、「ATOK」で日本語入力を行う様に、デスクトップアプリを完全に切り離すことは難しい。そのため、MicrosoftもデスクトップアプリをWindowsストアに移行させる「Desktop Bridge」ソリューションを用意している。具体的には変換ツールである「Desktop App Converter」を利用し、展開済みの基本イメージ(Windows 10)を使ってデスクトップアプリを実行するというものだが、筆者の例であれば前者はともかく後者のIMEは難しそうだ。

このようにデスクトップアプリからUWPアプリケーションへの移行が進むWindows 10だが、Microsoftは既にOSと一体化しているOneDriveのクライアント「OneDrive.exe」の64ビット版を用意していない。同社としては64ビット版を用意して管理が煩雑になるよりも、一足飛びでUWP化、もしくはエクスプローラーのUWP化と同じタイミングで同じバイナリー内に取り込もうとしているのかも知れない。Windows 10全体を通して、"画竜点睛を欠く"ような部分を各所に残して、OS本来が持つべき"安定感"を欠いたまま邁進している印象を持ってしまう。

OneDrive.exeのプロパティ情報。64ビット版Windows 10上でもクライアントはいまだ32ビット版だ

Windows 10 Insider Preview時で注目を集めた「ゲームモード」だが、執筆時点での詳細は不明だ。Microsoftも詳しい説明を行っていないため、筆者はアナウンス時に用いられていた「Forza Horizon 3」を購入して動作検証してみたが、I/O負荷は高まるものの、fpsは若干低下してしまう。また、それらも検証するたびに結果が異なり、再現性も乏しい。そのため、ゲームモードについてはMicrosoftの公式見解を待つことにしたい。

「ゲームモード」に対応するタイトルでは、PCゲームが快適になるらしいが、執筆時点でのメリットは明確ではない

以上でWindows 10 バージョン1703の紹介を終えるが、全体を通して軽微な機能拡張に留めた印象を受ける。Redstone 3では、デザインの根本的な再構築を行う「Project NEON」や今回見送ったMyPeopleなど興味深い変更が加わると思われるが、Windows 10自身のサブスクリプション化などを含めて行く先は不明だ。筆者は引き続きWindows 10の動向を注視し、大きな変化時は読者諸氏にご報告する。