今回のテーマは「夜の街の怖い話」です。
きらびやかな歓楽街・銀座ですが、そこには男女のぬるっとしたいざこざや、あの人の裏の顔、様々な光りと闇が隠れているものです。人ならざるものが身をひそめるにはちょうどいい空間なのかもしれません。
「どこそこのクラブには草履を履いた女の足だけの幽霊が出る」だとか、「ほにゃららっていうビルのエレベーターには死んだ黒服(クラブのスタッフ)が乗ってくるんだ」なんていうお話はしょっちゅう耳にします。
でも本当に怖いのは生きている人間だったり……。私が夜の街で耳にした3つの怖い話をご紹介します。
中国地方出身のママに聞いた話「音響機器の不具合かと思いきや」
中国地方出身のとあるママから聞いたお話です。
その日は閉店後に、お店のスタッフたちと次の日に控えているイベントに関する打ち合わせを行っていました。必要事項を確認し終え、「さて帰ろう」と席を立とうとしたその時です。
「もしも願いが叶うなら
吐息を 白いバラに変えて
逢えない日には 部屋じゅうに
飾りましょう 貴方を想いながら」
小林明子のデビューシングル『恋におちて -Fall in love-』をアカペラで歌う声が店内に響きました。
「ちょっと、A君。BGM切れてないよ」と、ママはスタッフに音響機器を確認させましたが、機器の電源は完全に落ちており、ランプは電源オフの状態を意味する赤色に点灯していました。
一同が困惑する中、その声は
「I’m just a woman
Fall in love」
と、曲を最後まで歌い上げ、その後は「シーン……」と店内は静まり返ってしまいました。
「なんだこれ」
「うあああ」
「キャー」
ママとスタッフは慌ててお店の外へ逃げ出したそうです。
その声は若い女の声で「少しカタコトっぽかった」とママは話していました。
小林明子の『恋におちて -Fall in love-』といえば、東京郊外の新興住宅地に暮らす男女の不倫や人間模様をセンセーショナルに描いた作品『金曜日の妻たちへIII・恋におちて』の主題歌です。
歌詞には
「土曜の夜と日曜の
貴方がいつも欲しいから」
など、不倫関係をにおわせる内容のものが含まれており、この怪談にも「なんだかドロッとした背景がありそうだ」と想像させられてしまいます。
ホステスA子から聞いた話「混線であって欲しい」
とあるクラブに勤めるA子から聞いたお話です。
出勤前や休暇中に友人と通話をしながら部屋の掃除やメイクなどを行うのが日課であったA子。ところが、ある時期から通話をする友人たちの多くに
「同棲してる?」
と、聞かれることが多くなったそうです。友人曰く、通話中のA子の声の他に、男性の笑う声や話し声が聞こえるのだとか。
当時、A子はひとり暮らしでした。ならば友人はテレビから流れる音声を聞いていたのでは? とも思いましたが、A子は「通話中にテレビをつけていたことはない」と話しています。
そんなことが続いたある日のことです。
その日は「彼氏できたでしょ?」という友人の問いかけの後に
「オレオレオレオレオレ」
と、繰り返す男性の声が彼女にも聞こえたそうです。それも、はっきりと耳元で。
しばらくその現象が続くのですが、この時期というのがA子がお客様からのストーカー行為に悩まされていた時期でもありました。
「混線であって欲しいよね」とA子は語りました。
お客様B氏から聞いた話「ふたりの愛の巣で」
お金持ち男性の中にも、お金持ち男性ならではの「怖いおもい」をしている方がいらっしゃいます。
例えば、
「酔って銀座の路上で寝ていたら外国人に連れ去られ、100万円分のカードを切らされた」
「指名嬢の友人キャバ嬢のお店でシャンパンを強要された」
「上司が口説いているキャバ嬢をそうとは知らずに口説いてしまった」
などなど。
さて、これはとある地方都市に暮らすお客様B氏から聞いたお話です。
B氏は当時、大学生のホステスさんにお熱でした。ファーストクラスでめぐる海外旅行、3つ星レストランでの食事、バーキンや貴金属などのプレゼントなどなど、それら全てを惜しげもなく与え、彼女を愛でていました。
ある日、「東京に就職が決まった」「埼玉から引っ越す予定」と話す彼女に、B氏は都内の高層マンションの1室を買い与えます。新卒の女の子のお給料では到底買えない超高級マンションの1室を、です。
ところが。
東京出張の際に、サプライズで彼女の部屋を訪れたB氏は、そこで彼女が若いイケメン男性とベッドでもつれあっているところを目にしてしまいます。
「ふたりの愛の巣でなんてことを……」とB氏はガックリと肩を落としていました。
このようなお話は実は何度か耳にしたことがありますが、そのたびに「本当に恐ろしいのは生きている人間だ」と実感させられます。
私たちって欲深いので
今回は「夜の街の怖い話」をご紹介しました。
お化けや幽霊はもちろん怖いけれど、本当に怖いのは生きている私たちの「欲の深さ」かもしれません。
光と影があるように、夜の街で繰り広げられる色恋沙汰には甘くロマンチックである一面だけでなく、憎悪や執着、はたまた相手をたぶらかしてやろうとする「人間のズルさ」なんかも隠れているものです。
騙し、騙され、フり、フラれ……今日も銀座にはドラマが尽きません。


