日産自動車とジョルジェット・ジウジアーロの関係は、意外に深い。ブランドを代表するコンパクトカー「マーチ」の誕生に、ジウジアーロが関係していたのだ。最近では「GT-R」のイタルデザインバージョンが登場して注目を集めたこともあった。
マーチとジウジアーロのつながり
日産自動車を代表するコンパクトハッチバック「マーチ」(海外モデル名はマイクラ)の初代モデルの基本デザインを担当したのはジョルジェット・ジウジアーロだ。ウェッジが効いた2ボックススタイルは、ルーフドリップを内蔵したドアや四角いヘッドライトを備えたスラントノーズなどによってフラッシュサーフェス化されている。
日産はジウジアーロの基本デザインをもとに社内で生産に向けた調整を行い、1981年の「東京モーターショー」にコンセプトカー「NX-018」として参考出品した。
そこからすぐに商品化するのかと思いきや、長いプレキャンペーン期間を設定して車名を一般公募し、「マーチ」(K10型)の名前で発売したのが1982年10月だった。特別賞として30台もの新車プレゼントを打ち出し、海外旅行など豪華賞品を用意した日産の車名公募キャンペーンは、多くの人が応募して話題となった。
実は筆者は、これと異なる形で新車のマーチを1台ゲットしている。結婚式場を探していた際に応募した新築ホテルの1等商品がマーチだったというわけで、もちろんこれに乗って新婚旅行に出発したのは良い思い出だ。
ボディサイズは全長3,645mm、全幅1,560mm、全高1,395mm、ホイールベース2,300mmとコンパクト。パワートレインは1.0L直列4気筒の「MA10S」型で、42kW(57PS)/78Nmを発生し、600kgちょっとの軽量ボディと回転半径4.4mによって、俊敏なハンドリングと低燃費(10モードで21km/L)を両立していた。
展示車はマイナーチェンジ後の1985年式マーチ「コレット」グレード。行動的な女性ドライバーに向けたクルマで、チェック柄のシートやフロント両席バニティミラーなど、おしゃれなテイストをプラスしたモデルだった。
GT-Rのイタルデザイン版は99万ユーロ
日産とジウジアーロと言えば、忘れてはいけないのが「GT-R50 byイタルデザイン」だ。2018年にイタルデザインが、2019年にはGT-Rが50周年を迎えることを記念してプロトタイプを制作し、50台の限定車として発売に至った。
開発、設計、製造を行ったのはイタルデザイン、内外装のデザインは日産デザインヨーロッパと日産デザインアメリカ、パワートレインは日産テクニカルセンター(NTC)とNISMOの共同開発だった。
GT-R NISMO GT3のVR38DETTエンジン(600PS)をベースにターボチャージャー、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、触媒などを新開発して組み込むことで、結果的に最高出力529kW(720PS)、最大トルク780Nmまでスープアップ。0-100km/h加速は3秒を切る。初披露は2018年の英国「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」だった。
限定車は日本で生産したGT-Rをイタリアのイタルデザインに送り、分解したのちに職人が製作した各パーツを手作業で組み上げるという方法で作ったという。購入者のオーダーによってカラー、カーボンパック、果ては可変ウイングなどオプションが多数用意され、完成車はそれぞれに細かな違いがあった。
基本価格は99万ユーロ(当時の日本円で約1億4千万円)と非常に高価だったが、ハイパーカーを多数所有する世界のスーパーリッチの目には、意外にリーズナブルな価格に思えたかもしれない。