いまの場所にたどり着くまでに、どんな選択肢があったのか――。この連載では、道を切り開き始めた次代の担い手たちに、歩んできた決断の背景と、その先に見据える未来を聞いていく。それぞれの選択がどのように現在をつくり、次の挑戦へつながっていくのかを、記録していく試みだ。

本稿で話を聞いたのは、お笑いコンビ・囲碁将棋。ともに神奈川県出身のNSC東京校9期生で、文田大介さんは1980年6月20日生まれ、根建太一さんは1981年3月23日生まれ。2004年にコンビを結成し、2025年の『THE SECOND~漫才トーナメント~』では準優勝に輝いた。よしもと幕張イオンモール劇場で話を聞いた。

「有名になりたい欲」からの消去法でお笑い芸人に

――お笑い芸人になった背景から聞かせてください。

文田大介さん(以下、敬称略):僕はもともと、なんでもいいから有名になりたいという欲があったんです。歌手でも格闘家でも良かったんですけど、「これといった特技がない自分がやれるとしたらお笑いかな」という消去法でした。

根建太一さん(以下、敬称略):大学生の時に文田に誘われたことがきっかけです。当時、就職活動をしていて、大手小売企業の面接が決まっていたくらいで、正直あまりうまくいっていなかった。そこに文田から声がかかったので、「じゃあ就活はやめようか」と。逆にやりたいことが特になかった分、助かった部分はありますね。

――ご家族の反対はありましたか。

文田:うちの実家はわりと放任で、30歳まで好きなことをやれ、というスタンスでした。30歳を過ぎても特に何か言われた記憶はないですね。

根建:うちはめちゃくちゃありましたね。

文田:僕は高校から東海大学系列の高校に入ったんですけど、根建は中学から入ったので、生粋の東海ボーイなんですけど。

根建:東海ボーイなんて言い方ないから(笑)。

文田:中学から私立に入れさせてもらっていたので、やっぱり反対はあったみたいです。

根建:そうですね。芸人になった時はもちろん、最近まで反対されているんじゃないか。20代の頃は実家に帰るたびに就職情報誌を渡されていました。40歳を過ぎたあたりから急に言われなくなりましたけどね。良くも悪くも諦められたんだと思います。「40歳を過ぎたら、もう別にどうなってもいいだろう」というくらいの感覚になったんじゃないですかね(笑)。

「劇場を沸かせたことは一度もない」

――プロになってから、最初に感じた壁はありましたか。

根建:僕はツッコミなんですが、NSCに入るまでツッコミという役割をやったことがなかったんです。入ってみたら関西出身の芸人たちのツッコミを見て、衝撃を受けました。生まれながらのツッコミというか、日常の中で自然にツッコミが飛び交う土地で育った人たちを目の当たりにして、自分のツッコミの下手さを痛感しました。

文田:正直、NSC在学中の成績はそれほど悪くなかったので、当時はあまり壁は感じなかったです。ただ、卒業後、グランジさんの単独ライブを見に行った時には衝撃を受けました。めちゃくちゃウケていたんです。単独ライブはその芸人のファンが集まるので、ウケるのはある意味当然なのですが、当時はその仕組みを知らなかったので、ただただ「こんなにウケをとれる人がいるんだ」と驚きました。

――2008年の『M-1グランプリ』で準決勝に進出して以降、準決勝・準々決勝の常連となり、早い時期から頭角を現していた印象ですが。

文田:僕らは正直、劇場を沸かせたことは一度もないんです。当時のホームだった劇場は若い女性のお客さんが中心で、僕らは女性にウケるようなネタをやっていなかった。ただ、賞レースの予選は男性のお客さんが急に増えるため、「賞レースでは勝ち上がる」という逆転現象が起きていただけだったなという......。劇場でやりたいことをやって潔くスベってる姿は芸人仲間からは好評でした(笑)。

突然の「やめる」宣言

――これまで引退を考えたことはありましたか。

根建:一度だけ、本気で「やめよう」と伝えたことがあります。2019年、ラストイヤーだった『M-1』が終わったあとの年末でした。

文田:ラジオのレギュラー番組がいくつかあったので、根建は「それが終わったらやめる」と言っていたんです。ただ、僕は別にそのレギュラーにこだわりはなかったので、「今日やめてもいいけど」と返し、そこでいろいろ話し合い、「その日のうちに解散」という空気ではなくなっていきました。

――『M-1』が終わって燃え尽きた、ということですか。

根建:そんなにかっこいい理由でもないんですけどね(笑)。ただ、何が原因だったのか、実は自分でもよくわかっていないところがあります。

文田:僕自身も、当時は本当に似たような毎日の繰り返しで、劇場が違うだけで同じようなネタをやり続けている感覚があって、正直生活に張りがなくなっていた時期でした。ちょうど2人目の子どもが生まれる時期でもあったので、僕が育休を取る形にして一年くらい休もうと、スケジュールを白紙にしたタイミングでコロナ禍になったので、活動休止の件もあまり目立つことはなかったかなと思います。

――根建さんから活動休止の話をされた時、文田さんはどう感じましたか。

文田:意外ではありました。ただ、前日に「明日、早めに来てほしい」と言われた時点で、声のトーンや雰囲気で、「もうやめるつもりなんだな」というのはすぐにわかりましたね。根建から「やめたい」と言われて以来、僕の中では「どちらかがやめようと言ったら、その日のうちに終わってしまうようなものなんだな」という感覚になり、むしろ漫才を「こうしなきゃいけない」と気負う部分がなくなりました。

――以前よりもリラックスして臨めるようになったと。

文田:そもそも、2人で考えたことをただ喋って、見ている人がそれを笑うかどうかっていう変な演芸なんですね、漫才って。「セリフを詰めて、ボケ数を増やして」みたいなことをやっている自分がちょっとアホらしくなった部分もあって、そう思えてからは「やめながらやっている」ぐらいの感じです。

賞レースにおいて「優勝より大事なもの」とは

――『THE SECOND』をキッカケに全国的な知名度を獲得しましたが、賞レースについてはどのように感じていますか。

文田:『THE SECOND』では過去4回出場して、3回チャンピオンになったコンビに負けているんですよ。なので、2回優勝しているような気持ちでいますね(笑)。また、「『M-1』の時ほどの熱量で臨んでいるわけではない」というのもあって、本当のことを言うと「今はめちゃくちゃ優勝したい」という気持ちはあまりないです。取材では「めちゃくちゃ優勝したいです!」とは言いますけど(笑)。

それよりも、やったネタがちゃんとウケてほしい。賞レースって優勝しても「なんであのネタで?」「他のコンビのほうが面白かった」と半分炎上みたいになっちゃうこともあるじゃないですか。「そうなるくらいなら、優勝しなくていいかな」と思っています。「目の前にいるお客さんがウケてくれること」「テレビで見ている人が楽しんでくれること」のほうが大事ですね。

根建:僕もその感覚は近いです。

――今後、目指していきたい活動の形を教えてください。

文田:家族や親族が自分を誰かに紹介する時に、恥ずかしくない活動内容を目指したいなと。ネタはウケるけど、ウケるからといって、変なことをしすぎない漫才師でいたいですね。

根建:僕はちょっとずつでいいので、右肩上がりでいたいです。本当にドンッと上がらなくても、ちょっとで良いので。

文田:おかげさまで現在お仕事をもらえていますが、「一度下がり始めたらもう永久に下がっていくんじゃないか」という怖さもあります。だからこそ、「やれと言われた仕事はやる」というスタンスでやっています。

根建:この仕事は、そういう怖さがずっとある仕事だと思いますね。僕もマネージャーから言われた仕事はやるようにしています。

――最後に、単独ライブに向けて、お客さんへメッセージをお願いします。

文田:会場には空席が多いように見えるかもしれないですが、それは「こちらがどれくらいお客さんが来てくれるかわからなくて、大きすぎる会場をおさえちゃった」訳ではありません。「チケットを買いたい」と思ってくれたお客さんが全員入れるように、あえて広い会場にしてもらっているんです。狭い会場で満員にすることもできると思いますが、それよりも、「来たい」と思ってくれた人には全員来てほしい。

根建:「ここの公演だけ行こう」じゃなくて全部来てください。全通でお願いします。

――お忙しいところ、ありがとうございました。

囲碁将棋全国ツアー「キレッキレ」
・高知公演
日時:2026年8月9日(日)13:00開場 13:30開演
会場:新来島高知重工ホール グリーンホール
・釧路公演
日時:2026年8月16日(日)13:30開場 14:00開演
会場:コーチャンフォー釧路文化ホール 小ホール
・沖縄公演
日時:2026年9月13日(日)13:30開場 14:00開演
会場:国立劇場おきなわ 小劇場
・秋田公演
日時:2026年9月19日(土)13:30開場 14:00開演
会場:秋田テルサ
・福島公演
日時:2026年9月26日(土)13:30開場 14:00開演
会場:とうほう・みんなの文化センター 小ホール
・京都公演
日時:2026年10月2日(金)18:30開場 19:00開演
会場:京都府立文化芸術会館
・福岡公演
日時:2026年10月10日(土)13:00開場 14:00開演
会場:J:COM北九州芸術劇場 中劇場
・軽井沢公演
日時:2026年10月17日(土)15:00開場 16:00開演
会場:軽井沢大賀ホール
・神戸公演
日時:2026年11月13日(金)18:00開場 19:00開演
会場:神戸文化ホール 中ホール
・東京公演 ※予定枚数終了
日時:2026年12月11日(金)18:00開場 19:00開演
会場:ニッショーホール