「できるだけ長く健康に生きたい」――そう考える人は多いのではないでしょうか。
近年、体内に存在する「ポリアミン」という成分が、寿命や健康寿命と関係している可能性が注目されています。実際、国内外では“ポリアミン摂取量が多い人ほど死亡リスクが低い”ことを示唆する研究も報告されています。
この記事では、『あなたの中でいつの間にか進んでいる「老い」に負けない食事術』(松藤千弥/アスコム)から抜粋して、長寿とポリアミンの関係について紹介します。
長寿とポリアミンの関係
「体の外からのポリアミンを補うことで寿命が延びる」
そんな可能性を示した研究論文が国内外で発表されています。
最初に報告したのは日本の研究グループで、早田邦康さん(元・自治医科大学)の研究チームです。
人の年齢に換算するとおよそ20歳代に相当する24週齢のマウスに、ポリアミン濃度が異なる3種類の飼料を与えて長期間飼育したところ、ポリアミン濃度の高い飼料を食べたマウスの生存率が最も高いというデータが得られました。
これは、ポリアミンが動物の寿命を延ばすことを初めて示した研究で、2009年9月に報告されています。
同じ2009年10月には、欧州の研究グループが科学誌『Nature Cell Biology』に酵母、線虫、ショウジョウバエを用いた研究を発表しました。
これらのモデル生物にポリアミンを与えたところ、いずれも寿命が延びるという結果が得られたのです。
単細胞の酵母から多細胞の動物まで共通して寿命が延びたという結果は、ポリアミンが進化的に保存された老化抑制機構に関わっていることを示唆しています。
また、この論文では、ポリアミンがオートファジーを誘導し、寿命延伸に寄与することが初めて示されました。
2011年には、理化学研究所の辨野義己さんと協同乳業の研究チームが、ビフィズス菌LKM512を与えたマウスで、寿命が延びることを発見しました。
そのメカニズムは、腸内で増えたポリアミンが大腸の慢性炎症を抑えるためだと考えられています。
この論文が米国科学誌に掲載されたときは、「ビフィズス菌で寿命が延びる」として朝日新聞や日経新聞といったメディアでも大きく報じられました。
2024年には、韓国の研究グループが、機能性食品を扱う科学誌『Journal of Functional Foods』に2007年からの8年間に蓄積されたデータを使った疫学調査を発表しました。
3万7715人を追跡調査した結果、ポリアミンの摂取量が多い人ほど総死亡率と心血管疾患による死亡率が低いことがわかりました。
すなわち、食事からのポリアミン摂取量が多いほど、死亡リスクが低いということです。
このように、ポリアミンが「長生き」に関わる可能性は、国内外の複数の研究によって裏付けられてきています。
さまざまな健康成分が巷にあふれています。
ですが、複数の研究グループによって寿命延伸効果が独立に報告されている食事由来成分は、決して多くはありません。
ポリアミンは、寿命との関連が、酵母から動物モデルを用いた基礎研究、さらには人を対象とした疫学研究に至るまで、再現性をもって示され、論文として報告されてきた、きわめて稀有な成分であるといってよいでしょう。
『あなたの中でいつの間にか進んでいる「老い」に負けない食事術』(松藤 千弥/アスコム)
私たちの体は歳を重ねると、細胞レベルで少しずつ衰えていきます。これは誰にも避けることのできない変化です。ですが、その進み方は、日々の習慣によって大きく変えることができます。そして今、その細胞の衰えに働きかける成分として注目されているのが「ポリアミン」という長生き成分です。本書では、ポリアミン研究の第一人者が40年にわたる研究からたどり着いた『細胞の衰えをゆるやかにする食事術』『無理なく続けられる、日常の食べ方の工夫』を、誰でも実践できる形で紹介します。


