アメリカのトランプ大統領がいうように、日本ではアメ車があまり売れていない。だからといって、アメ車に魅力がないわけではないのは、シボレー「コルベット」の写真をご覧いただければ納得してもらえるはずだ。ただ、この手のクルマって、乗り心地や使い勝手はどうなのだろう? 乗ってみた。
71年も続くロングセラー
シボレーのスポーツカー「コルベット」の歴史は非常に長く、1954年に同社初の2シータースポーツカーとして華々しく登場した。初代モデル「C1」は、今となってみれば古き良きアメリカを象徴するかのようなスタイリングだ。1963年にはロケットを連想させるような近未来的なデザインの2代目(C2)がデビューし、人気を博した。
その後はモデルチェンジを繰り返し、2020年に登場したのが現行型=8代目(C8)のコルベット。これまでとは違い、欧州のスポーツカーのようなデザインとなった。「コルベットらしくない」という声が挙がったのも記憶に新しい。筆者のまわりでも同様の意見が聞かれた。
ただ、1代限りで販売終了となるモデルも珍しくない自動車業界で、71年も歴史が続くコルベットは稀有な存在だ。
C8は2025年のマイナーチェンジで内外装をアップデート。ブランド初となる右ハンドルモデルを日本市場に導入するなど、販売も強化してきた。グレードは装備や快適性の違いで「2LT」「3LT」「コンバーチブル」の3つに分かれる。ミッドシップレイアウトのエンジンはV型8気筒の6.2Lで、8速デュアルクラッチトランスミッションとの組み合わせ。最高出力502PS、最大トルク637Nm、最高速度312km/hの性能を誇る。
この高出力エンジンを冷却するため、フロントには大型エアインレットを設置。サイドには立体的な造形が印象的なエアインテークを備え、空力性能にも配慮している。エンジンをミッドレイアウトにしたことで、ドライビングポジションは7代目コルベット(C7)よりも40cm前方に移動。広い視界が確保できたという。右ハンドル仕様車ではアクセルやブレーキのペダルレイアウトを最適化し、運転のしやすさを向上させているそうだ。
見た目に反して(?)乗りやすい!
実際に運転してみると、思っていた以上に視界がよく、乗りやすかった。見た目はガチガチのスポーツカーだが、シートはそれほど硬くないし、ハンドリングもスムーズ。100km程度の中距離走行なら、連続して運転しても腰や背中が痛くなる心配は少ないはずだ。メーカーは「『デイリーユース』の車ではないにも関わらず、毎日走らせたくなる車」とアピールしているが、乗ってみて納得できた。
コルベットは「ツアー」「ウェザー」「スポーツ」「トラック」の4つのドライブモードを搭載している。スポーツモードにすればメーターパネルは赤に色が変わり、エンジンが唸りを上げる。アクセルを踏み込めば、けたたましいサウンドが後方から覆いかぶさってくるかのよう。だが、決してうるさいと感じることはなく、あっさりとした乾きのあるエンジンサウンドで、それがまた心地よかった。
コルベットらしさといえば、個人的にはC4やC5、C6のようにフロントが長いスタイリングに、リアのブレーキランプが丸型のモデルが思い浮かぶ。それでいうとC7は、コルベットらしさを残しつつ、最新モデルらしくモダンにフルモデルチェンジしたクルマだった。
それがC8になって、まるで違う車種かと思ってしまうくらいに大きく変わった。ただ、その変化を嘆く必要はない。より乗りやすく、扱いやすいモデルへと進化した結果だ。そう思えば、これまでのコルベットファンにも受け入れられるのではないか。
筆者も「C8はコルベットらしくない!」と思っていた口なのだが、試乗して実車をよく眺めてみると、「エアアウトレット(空気の排出口)、ツインエキゾーストパイプには歴代コルベットの伝統が息づいている」というメーカーの意見にも納得できるようになってきた。
C8は思っていた以上に扱いやすく、実用的だし、快適で楽しめるスポーツカーだった。価格は1,695万円と安くはない買い物になるが、実用性もあり、刺激的な走りも堪能できるスポーツカーと考えれば、検討する価値は十分にある。
現時点において、日本で新車で買えるシボレーの新車がコルベットしかないのは残念だ。かつてはマッスルカー「カマロ」や12代(90年)の歴史があるフルサイズSUV「サバーバン」など、魅力的なモデルが日本に導入されていた時期があった。それらを日本で、再び新車で買えるようになれば、選択肢も広がり、アメ車の人気も盛り返すかもしれない。




















