米Hewlett-Packard (以下、HP)は5月18日(現地時間)、同社会計年度で2010年第2四半期(2-4月期)決算を発表した。同四半期の売上は308億ドルで前年同期比13%アップ、純利益は22億ドルで28%の大幅アップとなった。同業他社も同様に非常に好調で、同社は特にPCやサーバ販売が好調だったことが業績を押し上げた。
だが、HPの決算に関しては業績よりも、同日に行われた決算発表会でのPalm買収に関する同社CEO Mark Hurd氏のコメントに注目が集まっている。
HPが4月末にPalm買収で合意したことは既報通りだが、Palm買収の妥当性やその理由に疑問を感じている業界関係者は多い。実際、今回の決算発表会でも、アナリストや報道関係者がこの質問をダイレクトにぶつけたようだ。
Credit SuisseのアナリストであるBill Shope氏は、「Palm買収における戦略的妥当性の説明」と「(コンシューマ企業であるPalm買収を受けて)今後の買収でエンタープライズ注力路線がきちんと維持されるのか」と、Hurd氏に確認を求めた。
Hurd氏は「いかなる企業の買収であれ、必ずエンタープライズ企業という視点にのっとって行われており、Palm買収は同社の保有する知的所有権(IP)の獲得とHP製品ラインへの拡大が狙い」と説明している。
HPにはデバイス同士が接続される独自のエコシステムが存在し、特にWebアクセス対応プリンタではOSが必要になるという。将来的にはプリンタだけでなく、より小さなデバイス製品群へwebOSを展開していくのが狙いということだ。
これで、既存のPalm Preなどのスマートフォンに加えて、改めてプリンタやタブレットへのwebOSの応用が明言されたことになる。同社はもともと「HP Slate」というタブレットのリリース計画を持っており、今年1月にラスベガスで行われたCES 2010では米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏が大々的にそのプロトタイプを公開した。同製品はApple iPadの最大の対抗製品になると見られており、OSにはフル規格のWindows 7が採用されていた。
2010年の登場が見込まれていたHP Slateは何度か製品デモがYouTubeのHP公式ページで公開されていたものの、具体的な製品リリース日程や価格などはいまだ公開されないままだった。
一方で米サンフランシスコ地元紙のThe Examinerなどが5月初旬に報じたニュースによれば、内部情報としてHP SlateをWindows搭載マシンとして出荷する計画はすでにキャンセルされており、代わりに「HP Hurricane」という開発コード名のタブレット製品がwebOSを登場して2010年第3四半期に投入されるという。
Hurd氏はこうした報道を認識したうえで、「(webOSを採用する製品の)具体例は挙げられないが、Microsoftはおそらくわれわれにとって最良のパートナーの1つであり、引き続き重要な存在」とコメントしたとして、噂に真実味を与えるものとなっている。
HPのこの決断は、「今後小型デバイスの市場が拡大してより重要になっていくこと」、「それに対してHPが自社製技術を投入して本格的に取り組んでいくという意志」の表れと考えられる。