機械的な作業を文字通り機械に実行させ、人間は生産性の高い仕事に取り組む。それがRPA(ロボットによる業務の自動化)だ。特定の社員に偏り属人化した業務も、RPAに代行させれば、迅速かつミスなく進めることができる。

本連載では、RPAの導入・活用を行う中で留意すべきポイントや考え方について、ここまで3回にわたって紹介してきた。最終回となる今回は、これまでに扱ってきた導入~活用、コンサルティングの流れなどを、一連のストーリーとしてお届けする。

舞台となるのは「全国に小売店を持つ中堅企業の経理部門」だが、本稿でとり上げている課題や苦労に近いものは、どの企業にも存在することだろう。読後は、ぜひご自身の職場に当てはめて、RPAの効果を想像してみていただきたい。

多忙を極める月末の経理部、RPA化を検討

日本全国に店舗を持つ中堅小売企業A社。多くの企業と同様、月末・月初には会計処理の月締め作業が訪れ、経理部スタッフのほとんどが遅くまで残業するのが恒例だった。特に時間を取られるのが、各店舗に勤務している社員の交通費処理だ。数年前、経費削減のために社用車の数を減らした結果、仕入れ交渉や大口顧客への営業を行う社員の移動手段には、電車・バスなどの公共交通機関が利用されることが多くなった。その影響で運賃の取りまとめと会計システムへの入力には経理部の社員1名がかかりきりになることもしばしばだった。

この作業を任されるのは大抵、係長になったばかりのB氏だ。本来なら若手に任せてもいい作業だが、各店舗から上がってくるExcelの経費データはフォーマットがバラバラで、そこから交通費を切り出す作業を迅速に行うには、長年の業務で身についた「慣れ」が必要だった。締め切りに追われる中、若手にコツを教えながら作業するよりも、自分がやったほうが早いとB氏自身も思っており、周囲もB氏に任せるのが「当たり前」になってしまっていた。しかし係長となったいま、B氏が携わるべき決済は増え、交通費処理が他の業務を遅らせる原因となりはじめていた。昇進は嬉しかったB氏だが、月締め作業ばかりはこれまで以上に憂鬱な顔をすることが多くなった。

「RPAを入れてみては?」という提案を持ってきたのは、B氏の同期で情報システム部に籍を置くC氏だ。C氏自身もRPAに詳しいわけではなかったが、かねがね興味は持っており、導入を検討するきっかけを探していたという。両氏でいくつかのツールを比較し、最終的には「WinActor」に白羽の矢が立った。RPA導入は初めてのことなので、規模も予算もスモールスタートできる「WinActor」を選んだのだ。2人はWinActorの導入に向けて、NTTデータビジネスシステムズのRPAコンサルティングサービスを活用することにした。

コンサルタントのアドバイスを受けながらの準備

数日後、NTTデータビジネスシステムズから「コンサルタント」の肩書きを持つ人物が、ヒアリングにやってきた。RPA化したい業務内容についての説明を一通り聞き終えると、コンサルタントはB・C両氏にいくつかのアドバイスを行った。

一つ目は各店舗から上がってくる経費データのフォーマットを統一すること。経費データから交通費だけをコピーして、会計システムのフォームにペーストする「ロボット」をつくるのであれば、そのほうが圧倒的に簡単だという。フォーマットの統一はB氏も常々考えていたことだが、現場は使い慣れたものを変えることを嫌うため、これまでは言い出しにくかったのだ。しかし今回は「RPAを導入すれば経理部の処理スピードが上がる、つまり各店舗の経費データ提出の締め切りも、数日は延ばせる」というメリットと合わせて提示することで、なんとか受け入れてもらえそうだとB氏は考えた。

二つ目は、提出された交通費が正しいかどうかのチェックにもRPAを使ってみてはどうかということだった。各店舗社員が利用する交通機関・区間は、エリアごと、社員ごとに重複するものがほとんどで、B氏も頻出するものを一覧表にしてすぐにチェックできるようにはしていた。しかし新規の仕入先へ行ったり、イレギュラーなルートを使ったりした場合の運賃は、いちいち調べてみないと正しいかどうかの判断ができず、作業のネックにもなっていた。

三つ目は、自動化を円滑に行うため、情シスであるC氏の協力 ――「WinActor」でのシナリオ(操作手順をフローチャート化したもの)づくりや運用への技術協力 ―― を仰ぐことだ。コンサルタントからの説明を受ける中で、「WinActor」が予想以上に簡単に使えそうだということがわかり、「RPA化にかかりきりになる必要はなさそうだ」と判断したC氏は、協力を了承した。

その後、数回にわたってコンサルタントと細かい作業プロセスの調整を行っている間に、各店舗の協力によって、B氏の念願でもあった統一フォーマットでの経費データ収集が実現し、下準備が整った。

「WinActor」稼働で属人化や残業の問題が解決、様々な波及効果も

そこからはスピーディに業務のRPA化が進んでいった。操作方法のレクチャーを受けたB氏が、通常行っているPC操作を「WinActor」で記録して基本的なシナリオをつくり、細かい条件分岐の設定などはC氏と相談して「ロボット」を制作していった。技術的な不明点もいくつか出てきたが、問い合わせによりすぐに解決でき、日常業務と並行しながら開発開始からテストまで含めて1週間ほどで、経費データを会計システムに自動入力する仕組みが完成した。

さらに1週間で交通費のチェック作業もRPA化できた。これは「WinActor」がWebブラウザを自動操作して、会計システムに入力された区間・運賃と、運賃案内サイトで検索した結果を比較、ズレがあったものだけをリストアップするというものだ。B氏は最終結果を見て、間違いを確認、訂正するだけですむようになった。

月末・月初の機械的な作業から解放されたB氏は、係長としての本来なすべき仕事に存分に取り組めるようになった。「WinActor」導入で生まれた時間的余裕を若手の教育に充てることで、部内の様々な業務が円滑化、残業時間の削減にもつながった。

またC氏の元には、経理の成功談を聞きつけた他部門から、RPA導入の相談が寄せられるようになった。現在C氏は今回のノウハウを活かして、労務部門へ労働時間チェックの効率化を目的とした「WinActor」の導入を検討中だ。

――導入の過程や期間は、RPAを適用する業務により異なる。しかしおおよその流れや導入のメリットはご理解いただけたと思う。RPA導入を検討する際の参考にしてもらえれば幸いだ。これまで4回にわたってお届けしてきた本連載が、貴社の円滑なRPA導入および効果的な活用に役立つことを願って、本稿を締めくくりたい。

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