ガスから取り出した水素を使って「発電」し、その排熱で「給湯」する家庭用のシステムが「エネファーム」である。業界最大手であるパナソニックのエネファームは、ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2016で「最優秀レジリエンス賞」を受賞するなど、災害に強い家づくりの面からも注目を浴びている。この先進的なシステムはいかにして生まれたのか、パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池商品企画部 部長 加藤玄道氏と、日本のものづくりの開発支援を進めるプロトラブズ合同会社 社長 トーマス・パン氏による対談を前後編でお届けする。

パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池商品企画部 部長 加藤玄道氏(左)、プロトラブズ合同会社 社長 トーマス・パン氏(右)

家庭エネルギーの見える化

トーマス・パン氏(以下、パン氏):実は最近、私も自宅にエネファームを導入しました。環境に優しいですし、エネルギーの節約にもなると考えたからです。設置後は節約意識が非常に高まります。発電量や消費量をパネル表示で時々チェックするのですが、家のどの照明や家電がどれぐらい電気を消費しているかがわかるのと同時に、お湯が発電の副産物としてできるのはうれしいですね。

加藤玄道氏(加藤氏):家庭訪問をさせていただくこともあるのですが、電気の状況が見えるということが大きなモチベーションになっていると感じます。また、冬場になってくると「お湯」の価値が高まってきますね。お湯はどんどんできますので、無料でお風呂に入れるようになります。発電の副産物としてお湯ができますので、1時間シャワーを浴びる娘さんがいる、なんてご家庭は光熱費がすごく浮くでしょう。

パン氏:お客様の利用の仕方によって、お得感が変わるということですね。いままでは、どのように商品を訴求してきたのですか。

加藤氏:2009年に一般販売を始めた当時は「環境先進性」で訴求できたのですが、今のお話のように、今後は「商品を購入することで生活がどう変わるのか」「光熱費がどれくらい削減できるのか」「利便性はどうか」といった点にフォーカスする商品進化をしなければならないと考えています。

設置にもこだわった設計

パン氏:御社のエネファームは何種類もあるのですか?

加藤氏:バックアップボイラーが一体型のものと、別置型のものがあります。東京を中心に展開していますので、狭小地にどうやって設置するかの違いになります。一体型のほうが総合的にはコンパクトなのですが、給湯器が既に取り付けられているご家庭などは、暖房やお風呂の配管が場所を取っているので、施工が難しい場合もあります。そんなときは別置型を提案しています。

パン氏:施工を考慮したんですね。設備の高さは人の背丈ぐらいですが、これにもなにか理由があるのでしょうか?

加藤氏:当初は188センチでしたが、現行モデルは175センチです。というのも、このサイズにすれば、軽トラックに梱包した状態で載せることができます。輸送コストもお客様負担ですので、サイズ設計にもとことんこだわりました。

パン氏:確かに、都内では普通のトラックでは入れない場所もかなりありますよね。それでも少し大きいと感じてしまうのですが、この高さはなぜ必要なのでしょうか?

加藤氏:この大きさは、ご家庭の電力消費にもとづいています。一日の消費量には波があり、朝と夕方は激しく、昼は少ないのですが、それを踏まえると発電量を700Wにするのがベストだったんです。エネファームはこの発電時の熱を回収してお湯にしているのですが、膨大なシミュレーションを試した結果、お湯を貯めるタンクの容量は140リットルが適正だと判断しました。

パン氏:さまざまな条件のせめぎ合いと、バランスの取り方は、まさにプロダクトマネジメントと技術側との微調整の世界ですね。

加藤氏:おっしゃるとおり、燃焼・触媒・化学・電気と、ありとあらゆる分野の調整が必要でした。

日本環境に貢献するために

パン氏:エネファームの販売が始まった当初は、かなり高額の補助金助成がありましたが、これは政府の意向だったのでしょうか? それともパナソニックさんとして何か動かれたのでしょうか?

加藤氏:当時の経済産業省燃料電池推進室の方々が、補助金制度の設立に奔走された結果です。「日本のCO2排出量を削減し、エネルギー消費量を減らすために必要な事業だ」という強い信念を持っていただいて、非常にありがたかったですね。うまくいかなかったらどうしよう、とプレッシャーはありましたが、おかげさまで業界全体の累計販売台数が20万台をもうすぐ超えそうです。

パン氏:都市ガスを燃料にしていると、最終的には二酸化炭素が排出されていると思うのですが、どのような仕組みで排出量が削減されているのでしょうか?

加藤氏:日本の発電所のほとんどは海の近くにあるのですが、これは、発電した排熱を海に捨てるためで、発電所の近くには熱帯魚が泳いでいるという話もあるくらいです。家庭に届く電気は投入したエネルギーの4割しかありません。それに対してエネファームは、本来捨てている「熱」をタンクに貯めてシャワーやお風呂に使うことができます。そのエネルギー効率は95%にもなります。倍以上効率が高いので、生活に必要なCO2が半分以下になるというわけです。

水素社会の到来でさらなる進化へ

パン氏:将来はFCV(燃料電池自動車)が普及する水素社会になるとも言われていますが、エネファームの次なる進化はどうなっていくのでしょうか?

加藤氏:なんと言っても、日本は資源が無い国です。太陽光は不安定なエネルギーですので、蓄電池でデマンドを安定化させる必要があります。しかし、蓄電池は「高い」「大きい」という課題がありました。その点、水素ならばエネルギー密度を高く貯めることができます。水素を供給するステーションがインフラになれば、都市ガスを水素に改質する機構が不要になりますので、エネファームも飛躍的に進歩するでしょう。

パン氏:お話を聞かせていただきましたが、17年前の要素技術だけがあるところから、現在の商品展開まではものすごく長い道のりだったと思います。悩みながらもずっと前進し続けることで、他の業界や政府を巻き込み、新たなことがひらけてくる。エネファームはそんな商品の象徴のように思います。これが普及すれば、二酸化炭素の削減ができ、家庭にエネルギーが安定供給でき、コスト削減にもなるという日本全体がWin-Winの関係になりますよね。パナソニックさんが総力を結集して作られた商品として、感動を覚えました。ありがとうございます。

(マイナビニュース広告企画:提供 プロトラブズ)