学校教育におけるICT(情報通信技術)活用が進む日本。2019年から始まった「GIGAスクール構想」はこれを発展させた第二期に向けた動きが始まっている。
高校においてはデジタル人材育成に取り組む学校のICT環境整備を支援する高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)が行われている。今回はユニットコム(パソコン工房)がサポートを行っているDXハイスクールの採択校「学校法人 大分高等学校」(以下、大分高校)を取材してきたので紹介しよう。
「礼儀」を大切にする校風と最先端のデジタル教育
大分高校は大分県大分市にある高尾山自然公園の豊かな緑に抱かれた場所に拠点を構える。学科は「普通科」「商業科」「自動車工業科」分かれており、普通科においては難関国公立大学、有名私立大学を目指す「特進選抜」、部活と進学を両立する「特進個性」、など7コースにも細分化されている。このようにすべての学科で多彩な将来を目指すことができるのが同校の特徴だ。
「大分高校は一般的な高校と異なり、幅広い将来の選択肢に対応しやすい学科が揃った学校です。そんな環境の中、生徒たちも日々自分の夢に向かって努力しています。それに加えて、礼儀正しい人に育ってほしいという思いから、『挨拶』についてはきちんと伝えており、来客などがあるときに生徒全員が笑顔でお迎えできる校風だと思います」と語るのは理事長の小山氏だ。
同氏の話すとおり、我々が取材で訪問した際にもすれ違う生徒はみな元気に挨拶をしてくれ、こちらも思わず大きな声で返礼したくなるような実に心地よい雰囲気だった。
そんな大分高校は、今年度よりDXハイスクールに採択されたことからもわかるようにICT教育に力を入れているのも特徴だ。
「DXハイスクールの話を理事長よりいただき、ほかの先生方とも話し合いをしながら事業計画を作成することにしました。まず特進コースの拠点となる校舎に、『AI未来ナビ教室』と名付けた専用教室を設けるところからスタート。以前から、1人1台にタブレットを配布していましたが、AI未来ナビ教室ではさらに深い学びが得られるような環境を作ることが目標でした」と語るのは竹尾氏だ。
今の高校生は、生まれた時からスマートフォンなどのデジタル機器が身近にあった「デジタルネイティブ」と言われる世代であり、彼らにとってデジタルツールを使いこなすのは、ごく自然な生活の一部なのだ。一方で、教員側はそれとは異なり、デジタル技術の活用に慣れていないケースもあるため、ICTへの向き合い方には乖離があったのだという。
「まずはこのギャップを埋めるため、教員を含めた教育現場全体がデジタル技術に適応する必要があります。教育に関しても従来の画一的な教育方法だけでなく、個々の生徒のニーズに応えられるようにしたいと考えました。今回のDXハイスクールをきっかけに、デジタルの領域でも個別学習支援や多様な学習スタイルに対応できる環境を整え、生徒たちが自分のペースで効率よく学ぶことができるようになって欲しいと考えています。AI未来ナビ教室は、そのための第一歩となるべき場所です」と語るのは特進部長の小林氏だ。
大分高校が計画したAI未来ナビ教室には高性能なPCはもちろん、各界の特別講師による講義なども実施しやすい環境が求められた。
「DXハイスクールに採択されるには、それらの要件が必須です。しかし当校だけではどのようなデバイスの準備が必要で、どのような設営が好ましいのかがわかりませんでした。そこで、これまでICT関連のことで協力体制にあったユニットコム(パソコン工房)へ相談することにしたのです」と竹尾氏は語る。
ユニットコムがICT教育を加速する環境を構築
大分高校のAI未来ナビ教室は以前パソコン教室だった場所を改修することになった。
「ユニットコム(パソコン工房)さんと大分高校は長い間、機材の相談や購入などいろいろな面でお付き合いがあり、当校の実情をよく理解していただいています。今回のDXハイスクールを計画するにあたっても、高性能PCや3Dプリンター、生成AI活用のための環境づくりなど、ハード面、ソフト面の両方から相談させていただきました」と小林氏。
相談を受けたユニットコム(パソコン工房)は、大分高校の「やりたいコト」に合わせて拡張性も考慮した導入デバイスを検討。タブレットPCよりもさらに高度なデジタル活用を可能にするため、グラフィックス処理に特化したGPUを搭載した15.6インチのハイエンドノートPCを10台。
さらに授業や生徒同士のディスカッションをサポートする大型モニターやプロジェクター、オンライン授業を活発に実施できるよう、遠隔授業システムや、安定したネットワーク接続を実現する光回線の導入および高性能アクセスポイントの敷設など、あらゆる面でデジタル教育をサポートできる仕様を提案した。
「そのほかにも動画撮影用のスマートフォン、高解像度Webカメラなどはもちろん、教室改築のための工事やアクティブ・ラーニング用デスク・チェアなどもご提案に含まれていました。広がる夢と予算の戦いにはなりましたが、それらをすべてユニットコム(パソコン工房)さんにまとめていただき、理想とするAI未来ナビ教室を実現できることになりました」と語る小林氏。
その後、いよいよAI未来ナビ教室の実現へ向けて、ストーリーは動き始める。
教員をはじめ、関係者一丸となっての取り組みによって計画された大分高校のDXハイスクール事業は2024年4月16日に採択された。
「AI未来ナビ教室は2024年5月に着工に至りましたが、それまでに学校中のいろいろな先生方と議論を重ねてきました。結果として、教員間のチームワークが高まり、私たちの準備も整いました」と竹尾氏は語る。
実際の敷設、設営に関しては特に大きな問題もなく終了。2024年6月にはAI未来ナビ教室の整備が完了し、さっそく生徒たちを受け入れることになった。
生徒の視野を広げ、学びの「きっかけ」を手に入れるAI未来ナビ教室の存在
DXハイスクール事業には設備だけではなくデジタルを活用した探究的な学び、数理やAI・データサイエンスなど実践的な内容が含まれている。同校ではこれに対して独自の取組を行っている。
「今回のDXハイスクール事業を始めるにあたり、AIが今後の社会において大きな役割をもってくることを考え、生徒たちに早い時期からAIに対するマインドを持ってもらいたいという思いがあったのも理由の1つでした。そこで、せっかく作り上げた場所ですから、ここを使って特別講演を行うことにしました」と小林氏。
こうした経緯から、AIの社会実装に取り組むプロフェッショナルによる「出前授業」が同校のDXハイスクール事業の核となった。 第一回目の講師は、福岡工業大学情報工学部教授の徳安 達士氏。同氏は人工知能を用いた次世代医療の研究をしており、現代医療のDXをけん引している1人でもある。
ユニットコムがサポートする福岡工業大学の「AI医療システム開発」事例は
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「徳安先生と引き合わせてくださったのもユニットコム(パソコン工房)です。ユニットコムさんから紹介を受け、何度か当校の教員らも連れていき一緒に勉強しながら交流させていただくことができました。実際に行っていただいた講義は生徒からも大好評でした」と竹尾氏。
徳安氏による講義は「AIと医療」をテーマに、AIがいかに医療へ貢献できるのか、課題はあるのかなどを分かりやすく解説したもので質疑応答も活発に行われるなど、これから大学進学を目指す生徒たちにとってはAIとどのように接すればよいかを考える機会になったのだという。 今後も様々なプロフェッショナルによる「出前授業」が行われるとのことだ。
徳安氏の特別講義以外にも多くの取り組みが続いているが、こうした流れは大分高校全体へと波及し始めている。
「私が受け持つ自動車工業科でも、ユニットコムから講師を招き、ICTデバイス組立研修(パソコン組立研修)を開催 してもらいました。スマートフォンやタブレットには普段から接していますが、PCの中身を見るのは初めてという生徒も多く、精密機械ということで慎重に作業していましたね」と振り返るのは自動車工業科の古賀氏。
自動車産業もIoT、ICTを積極的に取り入れ、自動車整備においてもデジタル技術は切っても切れない関係にある。
「そんな時代ですから、コンピューターについてもっと知っておかなければならないと考えていました。私たちだけではたくさんのPCを用意することができないので、ユニットコムさんが企画してくれた今回の特別授業は、生徒たちにとってとても参考になったと思います」と古賀氏は笑顔で語る。
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DX人材のマインドセットを形成しより良い人財の輩出を目指す
このほか、夏季には大学のオープンキャンパスをオンラインで体験したり、 AI未来ナビ教室と別の教室をオンラインで結び、2元授業を実施するなど、ユニークな授業を展開している大分高校。
「例えば、AI未来ナビ教室と別教室に分かれて開催したオンライン授業では、配信先の生徒から質問が出てくるなど、立体的なICT活用の光景を目にすることができました。こうしたデジタル環境には興味があるらしく、生徒の中にはAI未来ナビ教室をこの課題で使わせて欲しいなどと、リクエストが出てくるようにもなりました」と竹尾氏は生徒たちの反応に目を細める。
「DXハイスクールの採択をきっかけに、社会に必要とされる人財となれるような教育改革を続けていきたいと思います。当校では私たち教師陣が安心感のある環境を提供することで、生徒は学びたい、成長したいという気持ちになるのだと思います。時代の先駆けともいうべきDXハイスクールで得られる経験を積み重ね、これからの人生を力強く生き抜いて欲しいですね」と小林氏は語る。
「大分高校にはたくさんの夢を持った生徒たちが集まっています。デジタルネイティブという言葉がありましたが、DXハイスクールに選ばれたことで、自信を持って生徒たちが新しい学びを得られるすばらしい環境も整いました。これからは、生徒たちが本気で楽しいと思えるようなデジタル教育を創り上げていかなければなりません。生徒たちが興味のある分野である生成AIも使える環境にあるわけですから、楽しみながらたくさんのことを学んで欲しいですね」と最後に小山氏は語ってくれた。
ユニットコムは今後も大分高校をサポートしていく。
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