ゲーミングノートPCはセットアップも簡単で場所をとらないというメリットがある。一方で、ゲーム中に負荷がかかると本体が熱々になる、あるいはファンノイズが大きくなるといったデメリットが顕在化しやすい。冷却や静音性についてはデスクトップPCのほうが有利だが、ノートPCでゲームがしたい、という人は熱や騒音を我慢するしかない。
そんなノートPCの熱・騒音問題に対し、“ノートPCを水冷化する”という超変化球で解決を図ったのがマウスコンピューターの「G-Tune H5-LC」だ。ノートPCの水冷化といえば、2015~16年ごろ、他社メーカーが水冷ユニットを合体させる巨大ノートPCを既に発売している。だがこの製品は高価(発表当時で54万円超)であるだけでなく、本体サイズがあまりにも大きく、合体させたときの姿は据え置き一体型PCというべきものだった。
だが「G-Tune H5-LC」は15.6型液晶を搭載した普通サイズの本体に、セパレート式の水冷ボックスを外付けすることで、機動性と省スペース性を確保しつつ、冷却力や静音性も高めることに成功したゲーマー垂涎のゲーミングノートだ。CPUにIntel Core i9-12900H、GPUにモバイル向けGeForce RTX 3070 Tiというパワフルなスペックが、水冷でどう使い勝手が変化するのか、前編では本体と水冷ボックスの外観部分の解説、後編ではさまざまなベンチマークなどを通じて検証したので、全2回に分けて紹介していきたい。
G-Tune H5-LCの主なスペック
ディスプレイ | 15.6型WQHD(ノングレア、Dolby Vision対応、2,560×1,440ドット) |
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CPU | Intel Core i9-12900H プロセッサー |
メモリ | 32GB DDR5-4800 SO-DIMM |
M.2 SSD | 1TB(NVMe Gen4) |
光学ドライブ | - |
グラフィックス | GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU |
空冷運用時はスリムでパワフルなゲーミングノート
まずは「G-Tune H5-LC」の本体からチェックしよう。15.6型、WQHD@240Hz液晶を搭載した、やや薄型のゲーミングノートといったいでたちだ。CPUに14コア(Pコア6基+Eコア8基)仕様のCore i9-12900Hを、GPUにAmpere世代のモバイル向けGeForce RTX 3070 Tiを採用。メモリは標準で32GB(DDR5-4800)、ストレージはM.2 NVMeで1TB、さらにWi-Fi 6や2.5Gbの有線LAN搭載など、今時のゲーミングノートにふさわしいスペックを備えている。
本製品の要といえる水冷ボックスについては後述するが、本体側の水冷対応は、通常の空冷用ヒートパイプとは別に冷却水用の水路を設け、水冷ボックスとワンタッチで着脱できるクイックリリースカップリング(の受け)を備えることで対応している。普段は水冷で使っていても、ちょっと外出先に持っていきたいときは、空冷仕様でも運用できるわけだ。ただ本体側の水路に漏出防止弁はない。
本製品を持ち運ぶ際は本体背面を下にして本体ごと振り、冷却水を抜いておくことを忘れずにしておいた方がいい(一応ゴムのカバーはあるが、絶対の信頼をおけるものではない)。同様に1カ月以上水冷ボックスを使わないときも、冷却水の劣化の関係上、本体と水冷ボックスの水抜きが推奨されている。
キーボードはJIS配列、テンキー付きだが、これには2020年に発売された「G-Tune H5」と同様にクリッキータイプのメカニカルスイッチ(いわゆる“青軸”)を採用している。ただカチカチというよりはサクサクというフィーリングが強いので、タイピング音はあまり気にならない。さらに個人的にはJIS配列の割に妙な合体キーがない点と、Fキーの列まで同じ大きさである点を高く評価したい。特に後者はゲームでFキーを多用する人には非常にうれしいはずだ。