デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けてデータやクラウドを活用する動きが進んでいる。既存システムのクラウド移行も手段の1つだが、移行がうまくいかず、思わぬコスト増を招いたり、移行してもクラウドのメリットが引き出せなかったりするケースが増えている。その理由はなにか。どうすればDXに向けた道筋をつけられるのか。新サービス「Liveマイグレーション」の提供を始めた富士通クラウドテクノロジーズ株式会社の取り組みから、DXのヒントを探っていこう。

クラウドにリフト&シフトしたもののコスト増に悩むという企業が増加

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 クラウドインフラ本部ネットワークサービス部 頼 冠香氏

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 クラウドインフラ本部 頼 冠香氏

DXに向けてクラウドを活用する動きが進んでいる。だが、システム的な課題や業務的な課題により、クラウド移行が失敗するケースが増えている。たとえば、システム基盤をそのままクラウドに移行して移行・運用コストが嵩んでしまったというケースや、アプリケーションをモダナイズする際に思うように構成を変更できずにそのまま手付かずになったというケースだ。

では、クラウド移行の失敗はなぜ起こるのか。富士通クラウドテクノロジーズのクラウドインフラ本部 頼 冠香氏はこう解説する。「クラウド移行が目的化してしまうことが背景にあります。まずは、既存の業務をしっかりと把握する取り組みを行い、将来的なDXの取り組みを見据えて計画を立てることが重要です」(頼氏)

ただ、そうした業務の見直しや将来的な計画の立案には時間とコストがかかる。クラウドへの移行作業は数日でも、その準備のためには数カ月から1年くらいかかるのが一般的だ。そのため「まずはクラウドへ移行し、あとからモダナイズを考える」というリフト&シフトが推奨されることが多かった。
「リフト&シフトが悪いわけではありません。重要なのは、事前の準備や移行の手間のハードルを下げながら、いかに効率良くクラウド移行を進めるかにあります」(頼氏)

富士通クラウドテクノロジーズは2010年から国産のパブリッククラウドサービスとして「ニフクラ」を提供してきた。ニフクラではVMware vSphere®ベースのクラウド基盤を採用し、オンプレミスからクラウド環境までをシームレスにつなぐというアーキテクチャを採用している。また新たに「Liveマイグレーション」というサービスを提供し、既存の業務を見直しながら、将来的なビジョンを持って、効率よくクラウド移行を進めることを提案している。

VMware vSphereベースの環境でオンプレからコンテナまでつなぐメリット

ニフクラは、VMware vSphereベースのクラウドであるため、オンプレミスにあるVMware vSphereベースの仮想マシンを変換したり、システムやデータをコピーして移し替えたりといった手間は基本的に必要ない。ネットワーク設定もオンプレミスの環境と同じものをそのまま利用することも可能だ。このため、移行・運用コストが想定外に増える事態を防ぐことができる。
「VMware vSphereベースの基盤を用いて、クラウド環境での物理ホスティングから、プライベートリージョン、パブリックリージョン、コンテナ(CaaS)環境までを構成しています。柔軟なハイブリッドクラウドを構成することで、だれもが障壁なく、オンプレミスからコンテナ環境まで進化していくことができるのです」(頼氏)

VMware vShere環境をパブリッククラウドで構築できるサービスは、最近になって海外のメガクラウドプロバイダーも提供を始めている。ただし、それらのサービスとニフクラはそもそもコンセプトが大きく異なっているという。クラウドインフラ本部 プリンシパルエンジニア 五月女 雄一氏はこう説明する。

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 クラウドインフラ本部 五月女 雄一氏

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 クラウドインフラ本部 五月女 雄一氏

「ニフクラはもともとの環境がVMwareネイティブですから、他のクラウドプロバイダーのように、VMware vSphere環境を新たに作る必要がなく、移行後もそれぞれのネイティブ環境にシステムやデータをマイグレーションする必要がありません。オンプレミスの仮想マシン1台からの移行ができたり、オンプレミス環境からL3ではなくL2で延伸してハイブリッドクラウドを作ったりといった柔軟な構成が可能です」(五月女氏)

さらに、オンプレミスに構築されたVMware vSphere®環境で稼働する仮想マシンやデータを、ニフクラに無停止(活性)で移行できるようにした。それが、新サービス「Liveマイグレーション」だ。

新サービス「Liveマイグレーション」により業務的な課題を解消

Liveマイグレーションの最大の特長は、システム的な課題だけでなく、業務的な課題も解消したことにある。クラウド移行に時間がかかる理由は、移行のための業務調査や影響調査、移行手順の策定、転送時間の算定、トラブルのチェックといった作業が発生することにある。
「クラウド移行自体は短期であったとしても、現実的には、その前の調査作業や計画の策定作業などで非常に多くの時間と手間がかかります。また、移行の際には、システムをできるだけ止めずに、業務への影響を最小限にすることが求められます。システム規模が大きくなればなるほど、時間とコストがかかってきます。さらに、移行後にアプリケーションのモダナイゼーションを検討している場合、それをふまえた移行計画も必要になります」(五月女氏)

こうした作業にかかる時間とコストを大幅に削減し、クラウド移行をトータルで支援してくれるのがLiveマイグレーションなのだ。その特長は4つある。

1つめは、活性(無停止)での仮想マシン移行に対応したことだ。
「仮想マシンをいつどれくらい止めるかは、移行作業の大きなポイントです。Liveマイグレーションはシステムを止めることなく移行できるので、移行期間を大幅に短縮できます。必要に応じて、活性切り替えだけでなく、数分間だけ停止するという『バルク切替』も可能です」(頼氏)

仮想マシンだけでなく、活性でのデータ抽出、活性でのL2延伸にも対応しているのもポイントとなる。なお、「バルク切替」は数分間の停止があるものの、移行要件はやや緩く、データが移行前の環境にも残るため、あえてこちらを選ぶ顧客もいるという。

2つめは、インターネットを介さないデータ転送経路が利用可能なことだ。転送経路はインターネットのほか、同一構内接続(L2延伸)から選択することができる。
「パブリッククラウドへの移行にインターネットを経由すると、インターネットを利用する通常業務や、サービス提供に影響が出ます。Liveマイグレーションでは、LANと同様の環境で移行作業が実施できるので、よりスピーディーな移行が可能です」(頼氏)

クラウド移行で「No Boundary」を実現、企業のDXを支援していく

3つめは、複数仮想マシン移行の場合でも、移行時間の予測が可能なことだ。
「データ量や仮想マシンの数などによっては、移行時間の予測がつかない場面が増えてきます。これに対し、Liveマイグレーションでは、さまざまなツールを使って、移行作業にかかる時間を予測し、計画の立案と実行をサポートします」(頼氏)

4つめは、移行元の環境チェックが容易で、他サービスよりも移行要件が簡易であることだ。
「ツールを使って、ニフクラ/FJcloud-Vへの移行可否をチェックするとともに、サジェストも行います。ニフクラでは、他の移行手段として『VMインポート』や『ディスク受け取り』を提供していますが、それに比べてディスク本数やディスクサイズ、ネットワーク本数などの要件が簡易です」(頼氏)

さらに、移行検証や移行作業を、同社が紹介するマイグレーションパートナーが対応することもポイントだ。パートナーの力を借りることで、作業の大部分を占める事前準備をスムーズに実施する。社内情報システムの物理サーバー約250台を12か月で移行するようなケースでは、4カ月への短縮が見込めるという。

頼氏は、クラウド移行にニフクラとLiveマイグレーションを利用するメリットをこう説明する。
「ニフクラでは、テクノロジーで生まれる『境界(Boundary)』をなくし、テクノロジーでみんなをつなぐ『No Boundary』をビジョンに掲げています。Liveマイグレーションサービスが実現するのは、クラウド移行のNo Boundaryです。既存環境を見つめ直し、将来のDXに向けた道筋をつけることができます」(頼氏) 富士通クラウドテクノロジーズでは、企業のクラウドにまつわる課題をシステムだけでなく、業務の面からも見直することで、企業のDXを強く支援していく。

関連リンク


・富士通クラウドテクノロジーズ株式会社

・プレスリリース
「ニフクラ」および「FJcloud-V」への移行サービス「Liveマイグレーション」を提供開始
~既存のVMware vSphere®環境から無停止でサーバー移行を実現~

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