カシオ計算機が、G-SHOCK「MT-G」シリーズの最新モデル「MTG-B2000」を11月13日より発売する。現行モデル「MTG-B1000」が大好評のなか、それをベースとした新モデルの登場とあって、注目している人も多いのではないだろうか。
そんな期待が寄せられる「MTG-B2000」の気になる開発秘話について、カシオ計算機の開発陣を訪ね、発売より一足先に取材した。
MT-Gシリーズは、メタルと樹脂の特徴を融合させた人気モデル。そのなかで、現行モデル「MTG-B1000」は新たな耐衝撃構造「メタルコアガード構造」を採用することで、ケースのミドルサイズ化を実現。そして新モデルの「MTG-B2000」では、さらに進化させた「デュアルコアガード構造」を開発し、外観のメタルの質感をアップさせながら軽量化に成功した。加えてデザインの自由度も向上している。
今回、取材に応じてくれたのは、新モデルの企画を担当した牛山和人氏、デザインを担当した松田孝雄氏、外装設計を手掛けた中塚義樹氏の3名だ。
役割をざっくり言うと、牛山氏がコンセプトを固め、松田氏が構造などのデザインを提案、さらに中塚氏が形にしている。企画の最初から3人でチームを組み開発を進めていたそうだ。さっそくお話を聞いていこう。
MT-Gシリーズのハイグレードを目指したモデル
――まずはG-SHOCKシリーズにおける「MT-G」シリーズのサブブランドの位置付けと、そのなかでMTG-2000をどのようなイメージで開発されたのか教えて下さい。
牛山氏:MT-Gは「Metal Twisted G-SHOCK」の略で、メタルと樹脂の融合をコンセプトにしています。重厚なメタルが落ち着きを醸す上質なデザインでありながら、樹脂を採り入れることで質量を抑え、フォーマルにもカジュアルにも合わせられ、オンオフどちらにも使えるモデルです。より上質な腕時計を求めるG-SHOCKファンの方々を主なターゲットにしています。MTG-B2000は、そのなかでもより落ち着いた雰囲気をイメージし、メタルバリューを出したモデルになります。
MT-Gシリーズの特徴でもある、時計内部の機構を守るメタルコアガード構造は前作のMTG-G1000からMTG-B1000の時も進化しています。MTG-G1000では時計のベゼルと裏蓋を4本のビスで支えるパイプフレームでした。
MTG-B1000では2枚の壁で包むようなボックスフレームによって、バンドの接合部とフレームを一体化してガードする構造にしました。
新しいMTG-B2000では、本体をぐるりと囲むメタルフレームを作製し、そこに器型のカーボンモノコックケースを嵌め込むことで、メタルコアガードとカーボンコアガードを融合させたデュアル構造で時計のコアを守る「デュアルコアガード」構造としました。
――カーボンコアガードは、メタルフレームにすっぽり収まっていますね。
牛山氏:はい。メタルコアガードとカーボンコアガードを融合するために、ちょうど五徳に中華鍋を乗せたときのような安定感をイメージしています(笑)。
カーボンコアガードを採用したことで、正面だけでなく側面のボタンを守る樹脂(ウレタン)のバンパーもなくなってスッキリし、メタルバリューの向上につながっています。
デュアルコアガードでベゼルのカラバリが可能に
――確かに見比べるとスタイリッシュになりましたね。デザインにもこだわりを感じます。
松田氏:デザインは、通常と違って構造イメージのスケッチから入りました。デザインのまとめに苦労しましたが、最終的に最初に描いた構造イメージに近いものが実現できたと思っています。
MTG-B1000ではベゼルにフェンダー状のつばが付いていて、カーボン繊維強化樹脂製のケースをサンドイッチする構造です。これだとCMFバリエーションをデザインする際に、色分けが難しいので変えたいと考えていました。MTG-B2000では、コアを守るケースに相当する部分と、ベゼルに相当する部分を明確に色分けするようにしました。
最初に展開するモデルでは、ベゼルの色をボルドーレッドやブルーなどにして、ベゼルの形状が際立つラインナップ構成にしました。
――赤と青とは対極な色合いですね。なにか意図があったのでしょうか?
松田氏:この2色は過去モデルでも人気のカラーなのですが、今回はこれを、“メタルのカラー”でやりたいと考えました。特に赤はG-SHOCKユーザーから伝統的に好まれているカラーです。そのため、MT-Gシリーズに相応しい赤で、耐久性のある色、ということで設計にお願いし、実現してもらいました。
出来上がったこの赤を私たちは、ボルドーレッドと呼んでいて、とても良い色になったと満足しています。G-SHOCKのロゴもなじんで、オンでもオフでもさりげないアクセントにできるのではないかと思います。
――デザイン面でほかに工夫されたところはありますか?
松田氏:ミッドサイズというMTG-B1000のサイズ感が好評だったので、そこは継承したいと考えました。実は中身のモジュールは、MTG-B1000より少し大きくなっています。にも関わらず全体のサイズは、直径で約0.7mm程度小型化している上、メタルバンドのモデルでは重量も約26g程度、軽量化しているんです。大きさをこのサイズに収めるために、設計者と何度も調整を重ねて、デザインをまとめました。
バンドの構造を見直して軽量化、バンド交換にも対応
――モジュールが大きくなったのに全体を小型化できたのはどういう工夫があったのでしょうか?
中塚氏:フレームベゼルの肉を“極限まで削りに削った”というのは大きかったと思います。
ただ、削りすぎると落下などの衝撃に対する強度に影響します。それを解決するために、上に乗せるベゼルとメタルフレームの両方で衝撃を受けるよう形状を工夫しました。これによりメタルフレームを小型化しつつ時計内部への衝撃を軽減しています。
それと、軽くなればそれだけ落下衝撃値も減るので軽量化は強度面でのメリットにもなります。薄くしながら軽くして強度を守る。そのバランス調整は難しかったですね。
また、軽量化してしているのはメタルフレームだけではありません。今回、コンポジットバンドも大幅に軽量化を図りました。
――つまり、バンドの軽量化も強度にも大きく貢献しているわけですね。具体的には現行モデルとどのような違いがあるのでしょうか。
中塚氏:バンドの金属駒をMIM(金属粉末射出成形)技術を用いて必要最小限の肉厚でお椀形状にしました。裏面のファインレジンパーツもお椀形状になっており、それぞれを組み合わせた時に駒内部が中空になる新レイヤーコンポジット構造を開発し、採用しました。これによりMTG-B1000のコンポジットバンドに比べ約30%の軽量化をしています。
また、あまり目立ちませんが、実はバンドには軽量化以外にもかなり変更を加えました。
――と、いうと?
バンドの取付構造をまったく新しいダブルスライドレバー構造に変更したんです。これによって、MTG-B2000ではバンド交換にも対応できるようになりました。ダブルスライドレバーはバンドを取付けるピンを2mmの太軸にし耐衝撃性能も併せ持っています。
MTG-B1000ではユーザーからバンド交換の要望も多かったため、ぜひ注目してもらいたいポイントのひとつですね。
――メタルバンドをプラバンドに自分で交換できる訳ですか。シーンによって簡単に付け替えられるのはいいかもしれませんね。ほかにも読者にぜひ伝えておきたい新機能などあれば、教えてください。
牛山氏:新機能としては、このほかに「新タイムシンクモジュール」が挙げられます。これは、FROGMAN初のアナログモデルの「GWF-A1000」、OCEANUSシリーズの「OCW-P2000」と共通で、時計合わせの際の高速運針とモバイルリンクの機能が搭載されています。
高速運針には、時分針と7時位置のサブダイアルのそれぞれに3つのデュアルコイルモーターを使用して、逆転は約3倍、正転は約1.1倍運針を高速化しています。
モバイルリンク機能はスマートフォンの専用アプリ「G-SHOCK Connected」とBluetooth接続するもので、例えば海外の時刻を時計合わせする際も時計に触れることなくスマートフォン上からの操作で簡単に行えます。
――これは便利ですね!では最後に、読者の方に一言お願いします。
牛山氏:MTG-B2000ではMTGシリーズとしてより上質な製品を目指しました。上質な腕時計を好む時計好きの方々に使っていただきたいと思っています。
松田氏:そうですね。手に取ってくれた方には、自分の相棒のように使って欲しいですね。
中塚氏 内部の構造は見ただけでは分からない部分ですが、新しい技術がぎっしり盛り込まれた特別な存在なのだと伝われば嬉しいです。
――皆さん、本日はありがとうございました。
ワンランク上のメタルバリューを実現し、ビジネスシーンでもカジュアルシーンでもさりげない男の魅力を醸し出せるMTG-B2000。かつてG-SHOCKと時を過ごした読者の皆さんに、ぜひ大人のG-SHOCKを堪能してみてはいかがだろうか。
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