▼USBの発祥

USBはもともと、周辺機器の接続を1つの統一したコネクターで接続できるように策定されたインターフェース規格だ。

やがて音楽プレーヤーが普及しだしたころから、ポータブル機器の充電にも使われるようになり、扇風機やライトなど、USBを電源供給にのみ利用する機器も登場してきた。
そして、こうした機器が増えるにつれ、USB規格で規定されている給電では足りなくなるケースも見られるようになる。特にノートPCなどでは、大きな電力を供給することを想定しておらず、ポータブル光学ドライブなどを動かせない機器も出ていたのだ。

そこでディスプレイやノートPCなど消費電力の高い機器を動かすために、ケーブル1本で最大100Wもの給電が可能な規格として策定されたのが「USB PD」(Power Delivery)だ。

▼ USB PDの登場

USB PDではmicroB(Type-A・Type-B)コネクタを使用する場合は最大60W、USB Type-Cコネクタを使う場合は最大100Wの給電に対応している。

USB PDでは、対応機器はスマートフォンなど消費電力が小さいものから、ハイエンドノートPCのような電力消費の大きいものまである。最新のUSB PD 3.0では機器ごとの消費電力に5段階のランクを決める「パワールール」を制定している。

▶「ロールスワップ」

1つのポートが供給できるのは最大100Wまでだが、USB PDではデイジーチェーン(数珠つなぎ)で、複数の機器にも電力を供給できる。

たとえば45WのUSB PD対応電源が30Wを消費するノートPCに電力を供給した場合、ノートPCに繋いでいる機器には、45−30=15Wまでの電力を供給できるのだ。つまり、機器によって電源を供給される側と、供給する側の両方の役割(ロール)を切り替え(スワップ)られる、「ロールスワップ」という機能も搭載しており、柔軟な運用が可能になっている。

------------------- ※ 注意 ※ -------------------
デイジーチェーン(数珠つなぎ)なので、USBポートは最低2ポート必要。
従来のUSBのようなハブを使った接続とは異なる点に注意。
ロールスワップについては1ポートでも供給側に回ることは可能だ。
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USB PDとUSB Type-Cの登場により、USB Type-Cケーブルでつないでおけば、データも電力も供給できるようになり、コンセントに複数の電源アダプターが刺さっていたものが、シンプルにまとめられるようになった。さらに大きな電力を扱えることで、充電などにかかる時間も短くできる。ユーザーにとっては充電時間の短縮と荷物の縮小に貢献する、大変便利な規格なのだ。

モバイルバッテリーもUSB PD時代に突入

すっかり前置きが長くなったが、USB PD対応機器の普及に合わせて、モバイルバッテリーにもUSB PD対応モデルが登場しつつある。

モバイルバッテリーがUSB PDに対応することのメリットとしては、第一に充電時間の短縮が挙げられる。従来のUSB給電と比べて電力が大きいため、同じ容量を充電するのであれば、より短時間で済む。

バッテリー自体を充電する時間も短縮できるというわけだ。モバイルバッテリーは大容量化が進んでいるが、10000mAhを超えるような製品では、大容量の代わりに満充電にするには一晩以上かかる製品もある。USB PD対応の充電器とバッテリーの組み合わせでは、こうした大容量バッテリーも素早く充電できるので、旅行の際などに助かるだろう。

さらにノートPCやタブレット、スマートフォンなどを1つのバッテリーで全てカバーできるようになり、荷物を減らすこともできる。今後はUSB PDに対応した機器がどんどん増えていくと考えられるので、これから将来を見据えて選ぶなら、USB PD対応バッテリーがおすすめだ。