パソコンの速度に不調を感じた際に、上級者から「メモリを増設するとパソコンの動作速度が早くなる」というアドバイスを受けたり、「購入時にはメモリは増設しておけ」ということを聞いたことはないだろうか。これらは一体どういう意味なのか。ノートPCを快適に使用するための改善策となるのだろうか?

◆メモリを増設したら早くなるって本当?

パソコンの中で、さまざまな命令を実際に処理するのは「CPU」であり、
そのCPUがデータを処理するスペースが「メモリ」だ。

▼メモリはしばしば「机」に例えられる
メモリ4GBのパソコンに、学習机サイズの作業スペースがあるとしよう。そこでひとつの作業を行うことは可能だが、追加の資料を開いたり、グラフ用紙にグラフを描こうと思ったら、一度していた作業をやめ、横に置いておくなどして空きスペースを作る必要がある。

  • 机が狭い場合、一度に1つの作業書類しか広げられない

パソコンの動作でいうと、これは「仮想メモリ」という。
メモリの内容をストレージに書き出して空きスペースを作ることに相当する。

仮想メモリの読み書きには時間がかかるので、メモリが少ないパソコンの動作が遅くなるというのは、たいていこの仮想メモリの読み書きに起因するものだ。

  • 仮想メモリでは、作業中のアプリが使っているメモリをストレージに書き出し(圧縮することもある)、空いたメモリに次のアプリを読み込むということを行う。メモリと比べてストレージははるかに遅いので体感できるレベルで引っかかりなどが感じられてしまう

そこで、メモリを増設すれば、単純に机のサイズが広くなったことになる。最初に作業していたものを開いたまま、追加の資料やグラフ用紙を開いたり、空きスペースに応じて別の作業を始められる。仮想メモリの読み書きがなくなり、全体の処理時間も大幅に軽減されるというわけだ。

ただし、CPUの処理速度が変わるわけではないので、あくまで「不要な処理が少なくなる」というのが正確。それでも、買ったままの状態でパソコンを使ってきた人にとっては、自分のパソコンの「本当の性能」がわかるいい機会になるだろう。

  • 作業スペースが広がれば、スペースが許す限り、書類をたたむことなく、ほかの資料を開くことができる。作業の切り替えに伴う処理が行われないので、非常に快適だ

一般に、パソコンのメモリは「とりあえず起動して、システム標準のアプリや付属アプリが動く程度」しか搭載されていない。そこで冒頭に示したように、本来の性能を引き出すためにも「メモリを増設しておけ」というアドバイスにつながるわけだ。

◆どんなメモリを使えばいい?

メモリが重要なことはわかったが、実際にどんなメモリを増設すればいいのだろうか。

まずメモリには形がいくつかあり、主にデスクトップPC用で大型の「DIMM」と、ノートPC用で小型の「SO-DIMM」がある。

▼続いて、メモリには速度などに規格がある
ここ数年のパソコンであれば「DDR4」、その前は「DDR3」というメモリが使われている。さらに「DDR3-1066」「DDR4-2133」または「PC3-8500」「PC4-17000」のような表記がある。


これは「DDR4-xxxx」のほうがメモリチップの規格で、「PC4-xxxxx」のほうがメモリモジュールの規格を表す表記となる。
重要なことは、パソコンのスペック表を見て、「メモリ」の欄にある表記を確認し、そこに載っているのと同じ規格・同じ形状のメモリを購入する、ということだ。


使っているパソコンのスペック表で「メモリ」欄を見てみよう。

  • この場合「DDR4チップ搭載で、PC4-19200規格のSO-DIMMモジュールが2枚使える」ということがわかる

メモリモジュールはパソコン専門店や家電量販店のパソコンコーナーで販売され、値段もピンからキリまでだ。あまりに安価すぎるものは保証がなかったり、エラーが発生することもある。メモリのエラーは原因が特定しにくいトラブルの原因となるので、できるだけ、きちんと保証のあるメーカーのモジュールを選ぼう。

またモジュールは同じ規格であっても、複数のメーカーが混在していると、相性の問題が出ることがあるため、同じモジュールが2枚セットになっているものを購入し、2枚単位で増設するといいだろう。

今回はシリコンパワーが販売する「DDR4 260-PIN SO-DIMM_Dual Channel Kit」を使用して増設と検証を行った。同社のモジュールは全数が工場で動作チェックを受けており、永久保証付きなので安心して使用できる。今回は2枚組のセットを使用しているので、モジュールの相性もバッチリだ。

  • 今回使用したのはDDR4-2133メモリの8GBの2枚組キット(SP016GBSFU213B22)
    実売価格で1万4000円前後だ