最近のカメラ市場で大きな話題と人気を集めている製品といえば、キヤノンのEOS Kiss Mです。ファミリーカメラの定番として絶大な人気を誇る「EOS Kiss」シリーズで初となるミラーレスカメラで、小型軽量ボディと高性能を両立し、今年3月の発売以来、幅広い層から支持を得ています。
そんな人気のカメラEOS Kiss Mが登場した裏側にはどんな経緯があったのか……。今回は、キヤノンの開発や商品企画の担当者に話を聞いてみました!
登場いただくのは、商品企画を担当した吉澤直久氏と、エンジンシステム開発を担当した三本杉英昭氏、AFシステム開発を担当した川西敦也氏の3名です。
――「EOS Kiss」シリーズといえば、フィルムの一眼レフ時代から続く、ファミリー向けカメラの代名詞的な存在です。ブランドに込めた思いなど、EOS Kissシリーズのこれまでについて、まずお聞かせください。
吉澤氏:「EOS Kissの初代モデルは1993年に発売したフィルムの一眼レフカメラです。以来、ファミリー向け一眼レフの日本国内向けのブランドとしてシリーズ化し、数多くの製品を発売。今年で発売から25年を迎えます。
それだけの長い間、常に家族のそばに寄り添って、お客様のお子さんの成長記録や貴重な思い出の数々を残してきました。『Kiss』というネーミングは『Keep It Smart and Silent(賢く、静かに)』の略。つまり、正確なオート性能や高速なレスポンスといった機能を伝えつつ、お子さんの頬にキスをするようにパパやママに使っていただきたいという願いを込めています。そのコンセプトを変えずに続けることで、ブランドとして価値を築いてきました」
――確かにカメラのブランドとして、ここまで息の長い製品は希少ですね。今回誕生から25年というタイミングで、一眼レフではなくミラーレスの「EOS Kiss M」を発売した狙いを教えてください。
吉澤氏:「国内市場ではミラーレスカメラの構成比が上がってきており、昨年で約40%、今年は半数くらいに達する見込みです。ミラーレスカメラの拡大は、お客様のカメラの使い方や周辺環境の変化を反映したものです。そうした時代の流れやお客様のニーズに合わせて、EOS Kissブランドにも一眼レフカメラだけでなくミラーレスカメラが加わったというわけです」
――従来の一眼レフのEOS Kissシリーズとのすみ分けはどのようにお考えでしょうか。
吉澤氏:「一眼レフカメラは光学ファインダーを、ミラーレスカメラは電子ビューファインダーを採用していることなど、両者の間には装備や機能にさまざまな違いがあります。また、携帯性の面にも差があります。そうした違いをお客様にできるだけ丁寧に説明させていただき、そのうえで用途や好みに応じて、最適なものを選んでいただけるよう、EOS全体のラインアップを充実させています。
例えば、携帯性を重視してミラーレスカメラを選ぶ人は多くいますが、その一方で、よりカメラらしいスタイルの商品が欲しいという気持ちで一眼レフカメラを選ぶ人も少なくありません。どちらかが優れている劣っている、という問題ではありません」
――「EOS M」シリーズなど既存のミラーレスカメラとのすみ分けはいかがでしょうか。
吉澤氏:「同じミラーレスカメラである『EOS M5』や『EOS M6』との違いに関しては、操作性の面でのすみ分けを考えています。EOS M5やEOS M6は、ダイヤルやボタンがより多く、ハイアマチュアのお客様でもストレスなく使えるようにしています。一方でEOS Kiss Mは、より初心者の方に使いやすいような操作系を採用しています。例えば、お子さんを連れて出歩いているお母さんが片手でもサッと撮れるように、ボタンレイアウトなどにも配慮しています」
――EOS Kiss Mはどのようなユーザーがどのように使用するシーンを想定していますか。
吉澤氏:「いちばん使っていただきたいのは、やはりお母さんがお子さんを撮る用途です。運動会や入学式といったイベントはもちろんですが、それだけでなく、日常生活のなかでお子さんの姿を素早く撮れることや、ふだんから気軽に持ち運べることも大切です。そんなカメラでありたいと願っています」