一眼レフに匹敵するAF性能は達成できたのか

――デュアルピクセルCMOS AFの進化について、AFシステムの開発を担当した川西さんにお聞きします。今回の「デュアルピクセルCMOS AF」はどのようなコンセプトで開発されたのですか?

川西氏:「一眼レフカメラのエントリーモデルであるEOS Kissシリーズを今回初めてミラーレスカメラとして展開するにあたって、AFシステムに関しては特に『使いやすさ』を重視して設計しました。従来の一眼レフEOSのユーザーが使っても、あるいはまったくの初心者が使っても、快適な動作を損なうことなく安心して使いこなせる、そんなAFを目指しました」

  • デュアルピクセルCMOS AFは、全画素がAFと撮像の両方を兼ねるセンサーによって実現されたキヤノン独自のAF技術

――従来のデュアルピクセルCMOS AFと比べて進化した点はどこですか?

川西氏:「『瞳AF』などカメラ初級者の方にも訴求しやすい機能を盛り込んだこともポイントですが、基本性能の向上という点では、エンジンの進化にともなってAF測距点が画面の広範囲に広がったことと、低輝度でもピントが合いやすくなったことの2点が大きいといえます。薄暗い場所であっても、安定して精度よくAFできるようになっています」

――動体に対するAFの追尾性能も進化していますか?

川西氏:「はい。エンジンの進化にともなって、画面全体の奥行き情報が得られるようになり、その情報をプラスすることでこれまで苦手だったシーン、例えば動体への追尾や背景と同系色の被写体への合焦といった点の改善を図っています。

ミラーレスカメラでありながらEOS Kissというブランドを背負うことになるので、そこに期待されるAF性能にどうやってこたえるかが、開発当初のハードルでした。従来の一眼レフEOSでは、位相差AFを使った『サーボAF』の追従能力に高い評価を得ていましたので、それに遜色のないAF性能を目指しました。その結果、お客様の期待に十分こたえられる性能に仕上がったと自負しています」

――開発における一番のこだわりは?

川西氏:「今回の製品に限りませんが、AFの精度とAFの速度はトレードオフの関係にあり、ともすればどちらかを犠牲にせざるを得ないような状況になりがちです。しかし、EOS Kissのブランドに恥じないよう、たとえ初心者の方がオートで使っても、快適に撮影を楽しんでいただけるように、いかにそれらのバランスをとるかという点には常に心がけながら設計を進めました」

――デュアルピクセルCMOS AFの進化によって、AFエリアが拡大し、追尾性能も向上しました。どんなシーンで、その進化を実感できますか?

川西氏:「測距エリアが広がったことで、構図やアングルを問わず、より自由に撮影できるようになったと思います。また連写速度も向上しているので、動いている被写体に対してもこれまで以上に快適にピントを合わせることができます」