8月8日と9日の2日間、富山県の国宝、高岡山瑞龍寺にて、写真家のテラウチマサト氏による写真展「受け継がれていく高岡の心」が開催された。曹洞宗の名刹に展示されたのは、カシオ計算機のデジタルカメラ「EXILIM(エクシリム)」の最新機種「EX-100F」と「EX-FR10」で撮影された約60点の写真と映像。テラウチマサト氏による斬新な着眼点で切り取られた作品群に、多くの来場者が魅了された。本稿ではテラウチマサト氏へのインタビューを中心に、写真展の様子や、同時開催された瑞龍寺のライトアップを紹介していく。

富山県の瑞龍寺にて開催された、テラウチマサト氏による写真展「受け継がれていく高岡の心」(写真左)。瑞龍寺では夜間にライトアップイベントが行われた(写真右)

テラウチマサト氏は、富山に生まれた国際的な写真家。"隠れた本質"を捉える表現手法で、国内外から高い評価を得ている。同氏は今回、秒間60枚の「高速連写」や2種類の撮影パラメータを組み合わせる「プレミアムブラケティング」機能などを備えた「EX-100F」と、カメラ部とコントローラー部(液晶モニター分)を分離して自由なアングルから撮影できる「EX-FR10」という2モデルを使用。国宝である瑞龍寺と、高岡の伝統工芸を受け継ぐ職人たちを独特の視点で切り取っていった。

秒間60枚の「高速連写」が可能なコンパクトボディのEX-100F(写真左)と、カメラとモニターを分離して撮影できるEX-FR10(写真右)

"想像を超えた1枚"を撮るために

瑞龍寺の奥座敷で、テラウチマサト氏にカメラのこと、そして富山への想いなどを聞いた。まずは今回使用した、2つのEXILIMについて。分離合体のEX-FR10は、「見た目はオモチャっぽい。背面のモニターが小さいため、最初はしっかり写っているか心配だった。でも実際に撮ったものを印刷してみると、思ったよりよく撮れていたので安心した」(テラウチマサト氏)と語る。

写真展の様子。国宝・瑞龍寺の大茶堂に、EX-100FとEX-FR10で撮影した作品のパネルが展示された

EX-100Fについては「プレミアムブラケティングが魅力」と評価。プレミアムブラケティングとは、フォーカスと絞り、ホワイトバランスと明るさなど、2種類の撮影パラメータを3段階に変化させて、計9枚を連写できる機能だ。同氏は「ハイアマチュアはもちろん、プロカメラマンも満足できる機能ではないか。いろいろと面白い使い方ができるはず」と太鼓判を押した。

写真展のテーマは「受け継がれていく高岡の心」。瑞龍寺と、瑞龍寺にまつわる職人たちの生き生きとした姿が独自の視点で表現されている

テラウチマサト氏は、カメラを構える際、「自分の頭の中にあるイメージが絶対」だとは思っていないという。「写真って、自分の想像の範囲内だけで完結させるものではないんです。想像を超えたところに、どうやって持っていくか。カメラって、そういうメディアだと思っている。例えば絵画だと、頭に思い描いたものしか描けない。でもカメラなら、自分の想像を超えた1枚が撮れることがある。どれだけ想像を超えた"奇跡的な1枚"に持っていけるか、それがカメラの面白さ。だから、イメージ通りに撮れたという人には"やっとスタート地点に立てたね"と言っている。イメージ通りに撮れるようになって初めて、自分のイメージを越える写真が撮れるようになるからです」と。

カメラの特長と、写真家の感性が影響し合った作品群

今回の企画では前述の、EX-100Fに搭載されているプレミアムブラケティングが想像を超えた1枚を撮る手助けになったという。

「プロのカメラマンなら、例えばホワイトバランスと彩度を変えて"この色に持っていこう"と狙うことはできる。でもそれは、裏を返せばイメージ通りにしかならないということ。しかしEX-100Fのプレミアムブラケティングなら、思いもよらなかった色を発見することがある。9パターンの中から良いものを選べる、そんな面白さをカメラから与えてもらえる」(テラウチマサト氏)。

銅板屋根の表現にもこだわった。EX-100Fのプレミアムブラケティングからヒントを得ることもあったという

轆轤(ろくろ)の上、釜の底で

想像を超えた1枚を撮るための心得を聞いてみた。

テラウチマサト氏は「状況によって違う」としつつ、その一例として意外な視点から撮影することが有効だと話した。「例えば、今回はEX-FR10を轆轤(ろくろ)の上に置いて、金工職人の青木有理子さんが粘土を彫る様子を撮影した。同じように釜の底にEX-FR10を置いて、釜師の畠春斎さんが作業する様子も撮った。通常のカメラでは撮れないような角度から撮影することで、いずれも面白い作品に仕上がった」と解説してくれた。

なおEX-100Fでも、180度まで開くチルト液晶を駆使することで画角を工夫できるとのこと。同氏は「例えばこうやって近藤さんとお話しながら、お顔を撮ることもできるんです」と話すと、顔をこちらに向けたまま、机上のEX-100Fのシャッターを押して笑顔を見せた。

EX-FR10を、ろくろの上、釜の底などに置いてインターバル撮影した映像作品。職人が作業する音、話し声などが数秒ごとに録音されており、聴覚的にも面白い作品となっている

もっとコンデジを!

また、カメラ機材を変えることの大切さも次のように説く。

「特定メーカーのカメラしか使わない人を見ると、"素晴らしいな"と思う反面、同時に"もったいないな"とも思う。もともと、カメラはTPOに応じて変えるべきというのがボクの持論。単刀直入に言うと、プロもハイアマチュアも、もっとコンデジとうまく付き合ったら良い。

コンデジって、プロからしたらオモチャのように見える。でも実際には質の高い、そして思いもよらなかった良い写真が撮れることがある。よく写真雑誌を読んでいると、マンネリ化した写真しか撮れなくなった、と悩んでいる人がいる。そんなときこそ、大胆にカメラ機材を変えるべき。その昔、被写体によってフィルムを使い分けていたように、今はTPOに応じてカメラ機材を使い分ける時代だと思う」(テラウチマサト氏)。

テラウチマサト氏は、TPOに応じてカメラ機材を変えることが大切と