2022年11月、ビジュアルコミュニケーションアプリ「Snapchat(スナップチャット)」は、国内で初めてのプレスイベントを開催しました。Snapchatを運営するSnapは、3月に日本支社をオープンし、日本でのマーケット拡大を目指しています。

  • 「Snapchat in Japan 2022 ~ソーシャルメディアの処方箋~」に登壇するSnap Japan 代表 長谷川倫也氏

Snapchat、どんなアプリ?

Snapchatがサービスを開始したのは2011年のこと。送り先の相手が写真や動画を開封すると自動的に削除される機能が若者に注目され、人気アプリへと成長しました。現在は世界の月間アクティブユーザー数が6億人(出典:Snap)を超える人気となっています。特にZ世代からの支持が高く、世界におけるZ世代の月間アクティブユーザー数ランキングで5位に入っています(出典:data ai)。

おもな機能は、「マップ」「チャット」「カメラ(AR)」「ストーリー(ソーシャル)」「スポットライト」の5つです。「マップ」は友人と位置情報を共有できる機能、チャットは友人とテキストや写真などを送り合う機能、カメラは独自のARカメラエフェクトを使って撮影できる機能、ストーリーは24時間で消える投稿機能、そしてスポットライトはショート動画を閲覧できる機能です。

  • Snapchatのおもな機能(出典:Snap Japan)

Snapchatでは、アプリのカメラで撮影した写真や動画を送り合うことを「Snap」と呼びます。Snapを送るには、「ARレンズ」でエフェクトをかけるなどして撮影し、個人やグループといった送信相手を選んで送ります。このSnapを個人宛てに3日連続以上、24時間以内に送り合うと、相手とのチャットルームに炎のマークが表示されるようになります。これは「ストリーク」と呼ばれ、送り合っている日数も表示されます。

今回発表となったプロモーション動画では、ストリークが100になったら告白すると決めた男女のお話などが公開されています。回数が増えるにつれ、お互いに止めづらくなるプレッシャーもありそうですが、このゲーム性によってコミュニケーションの量が増えそうです。

日本ではどう使われてる?

今回のイベントでSnap Japan代表 長谷川倫也氏は、「Snapchatは面白いエフェクトが豊富なフィルターアプリではなく、日常を気軽にシェアできるメディア」と語りました。なぜ否定から入ったかといえば、国内ではカメラアプリとして利用する人が多いからなのです。

自撮りに動物のエフェクトを施すことが大流行した2017年ごろには、海外セレブがSnapchatの自撮りを公開していたこともあり、女子高生たちによく使われていました。マーケティング会社のAMFが2019年7月に発表した「JC・JK流行語大賞2019年上半期」では、3位に「Snapchat(赤ちゃんフィルター)」が入っています。赤ちゃんフィルターは、自分の顔を赤ちゃんのように若返らせるエフェクト。現在はほかのアプリにもこうしたエフェクトがあるため、皆さんも見かけたことがあるのではないでしょうか。

カメラ機能は注目されるものの、メッセージを送り合うような機能は別のメジャーアプリの牙城を崩せていません。Snapchatのカメラで撮影し、ほかのサービスに投稿する使い方が多い状況です。

総務省が令和3年8月に公表した「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の「主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率」を見ると、10代・20代ともに利用率が50%を超えるのは、YouTube、LINE、Twitter、Instagramです。Snapchatは5%前後の利用率となっています。

つまり、SnapchatのARレンズが楽しくて魅力的でも、送る相手がSnapchatにいないか、交流するサービスがSnapchat以外なのです。そこでSnapchatは、投稿が消えるので気軽に送り合えることや、親しい友人とだけつながれる点などを強調しつつ、コミュニケーション機能の魅力を日本市場にアピールしています。

ARレンズでのビジネス活用

Snapchatのカメラエフェクトは、ビジネスの拡大にも貢献します。今回のイベントでは、ARレンズを使って口紅やファンデーション、ファッションを疑似体験できるブースも用意されていました。

  • エスティ ローダーのARレンズでファンデーション体験

米Snapが2022年2月に開催したバーチャルイベント「Go Global with Snapchat」では、広告主向けにARによる試着事例やオンラインショッピングへの導線につなげる事例を紹介しています。

  • AR試着事例:PRADAのバックの試着、Diorのスニーカーの試着、Gucciのスニーカーの試着など(出典:Snap)

ARのカメラエフェクトといえば、Instagramを思い浮かべる人もいるでしょう。Facebook Japanが2022年9月に開催した広告主・企業向けの年次イベント「House of Instagram Japan 2022」では、InstagramはARを活用することでメタバースを実現すると説明していました。インカメラとアウトカメラを使って、ARでシミュレーションを行うビジネス事例も発表しています。現在、さまざまな企業がARの本格活用に乗り出しています。

このように、日本でSnapchatを利用するユーザーは今のところ少ないとはいえ、ARレンズの魅力によってコンシューマー、ビジネスともに発展していく未来も見えます。また、Snapは買収した位置情報共有アプリ「Zenly」のサービス終了を発表しており、今後Snapchatの位置情報共有機能「マップ」へ移行するユーザーがいるのかも気になるポイントです。日本でSnapchatが大きく成長していくのか、今後も注目していきたいと思います。