短尺動画サービス「TikTok」や「YouTubeショート」が若者にヒットした理由のひとつに、若者の「タイパ(タイムパフォーマンス)主義」が挙げられます。タイパ主義とは、費やした時間に対する満足度を重視する価値観です。

  • 改めて考えると時間の使い方って難しいですよね

TikTokの場合は、ちょっとしたスキ間の時間でも十分に楽しめる短い動画が数多く共有されていることや、数秒見てつまらないと判断したらすぐ次の動画に飛ばせることが、タイパ主義の人たちにマッチしていると言えます。YouTubeショートも同様の理由で支持されていますが、特にYouTube動画のワンシーンを切り抜いて投稿する「切り抜き動画」が象徴的です。有名人の面白い動画から、注目したいポイントだけを切り抜いた動画なら、盛り上がりに欠ける部分を見る必要がなくなります。まさに「タイパが良い」状態です。

位置情報共有アプリ「Zenly」も、タイパ主義の若者に合っているサービスです。Zenlyを使えば、つながっている人が今どこにいるかがわかります。さらに、移動速度や滞在時間も表示されるため、何をしているかも推測できます。「家にいて暇だから誰かと通話したいな」と思ったら、Zenlyを開けば同じように自宅で暇そうにしている人を探せるのです。Zenlyがなければ、「いま通話していい?」とLINEを送り、返事を待ち、数時間後に「バイトだった」と返信が来るかもしれません。こうしたムダな時間を省けます。

なお、Zenlyは2022年9月1日にサービス終了を発表していますが、2022年10月16日の時点では使えています。zenly japanのTwitterアカウントは9月14日に「zenlyは、近い将来サービス提供を終了する予定です。しかしながら、現在も通常どおりご利用いただける状況で、お別れするまでまだ時間があります。具体的な日程については、必ず事前にご案内しますので、今しばらくお待ちください」とツイートしています。

話を戻して、「女子同士で旅行に行きたい」「おしゃれなレストランに行きたい」という場合も、Instagramで検索します。旅行サイトやグルメサイトで検索しても、プロのカメラマンが撮影した写真ばかりで、はたして自分がそこに出かけても同じように「映える」写真が撮れるのかわかりません。でもInstagramで探せば、Instagramに投稿するときのお手本付きでスポットを探せます。Instagramでキレイな風景や美味しそうな料理を見つけたら、次に公式サイトを検索して料金などの詳細情報をチェックすれば、とても効率的です。

テレビを見るときも、スマホを見ながらテレビ番組を視聴します。インテージ「知るギャラリー」の調査「ながら視聴の実態を読み解く」によると、テレビを見ながらTwitterでテレビ番組の公式アカウントや公式ページなどを見る人は、10代が突出して多くなっています。テレビを見ながらTwitterで情報を調べて、誰かの投稿も見て楽しむ「ながら視聴」で一挙に情報を得ているのです。

タイパ主義と効率主義は違う?

若者は何でもタイパを重視して効率的に物事を進めているかといえば、そうではありません。それは、若者がなぜタイパ主義なのかをひも解くとわかります。

SHIBUYA109エンタテイメント「SHIBUYA109 lab.」が2022年8月に発表した「Z世代の映像コンテンツの楽しみ方に関する意識調査」によると、「タイムパフォーマンスを重視する理由」の1位は、「自分が価値を感じているコトに時間を割きたいから」(49.3%)でした。「世の中のあらゆることを効率化したい」という回答(30.8%)よりも多い結果です。

2位が「自分にとって無駄な時間は省いていきたいから」(41.5%)であることからもわかるように、時間をどう使うのかを考えた結果、ムダを省いて自分の好きなことに十分な時間を費やしたいと考えているわけです。

  • 「タイムパフォーマンスを重視する理由」(出典:SHIBUYA109 lab.)

最近、若者が動画コンテンツを○倍速視聴することが話題になりました。確かに大学のオンライン講義やまとめ動画などを倍速視聴している話は聞きますが、「推し」の映画は何度も映画館に足を運んで見るなど、大切なものにはじっくりと時間をかけています。

若者はゆっくりくつろいで過ごすことを「チル」と呼び、何もしないでいることを贅沢な時間ととらえています。テレビ、SNS、メッセージ、メールなど、いろいろなツールから常に送られてくる情報をうまく整理し、好きなことに使う時間を確保しているのです。これは、普段節約して好きなものには豪華にお金を使う「メリハリ消費」に似た考え方ですね。

大人世代にも時間の使い方に頭を悩ませている人は多いと思います。まずは若者のSNS利用法を参考にしてみると、自分のタイムパフォーマンスが上がるかもしれません。