「おじさん構文」という言葉を聞いたことはありますか?

「ともチャン、ラーメン好きカナ!? おいしいお店、知ってるよ。今度、一緒に、行こうネ(^-)-☆。ナンチャッテ!!(^^;) 」といった文章に赤いビックリマークや汗をかいている顔文字など、絵文字がふんだんに散りばめられている文章を「おじさん構文」と呼びます。おじさんがLINEなどでよく送ってくる文体として知られています。

おじさん構文は、(1)絵文字や顔文字が多い、(2)語尾にカタカナを使う、(3)句読点が多い、(4)LINEでも文章が長め、(5)下心を感じさせる――といった特徴があります。

  • 「おじさん構文」の例(筆者作成)

この「おじさん構文」という言葉は、おじさんらしい文体を揶揄するものとして2016年ごろから流行り始めました。おじさんから独特の文体が送られてくる――と、若い女性たちがネットで語りだしたことで知られていったのです。

2019年ごろになると、おじさん構文を作って遊ぶ「おじさんLINEごっこ」が女子高生に流行。誰が一番おじさんらしく書けるのかを競い合いました。

おじさんLINEごっこは文体だけでなく、誘いを断ると急に高圧的になってお説教モードに入り、「ともチャンはまだわかってないから、おじさんが教えてあげる!」と、さらに会うことを要求するといった、おじさんならではの交流も再現します。

若者が使わない文体と、下心や上から目線に対する不快感の両面から、「あるある」「キモイよね」と楽しんでいたようです。おじさん構文はその後もネットで定期的に話題となるため、いまだ健在なのだなぁと感じます。

若者のLINEは「打ち言葉」

一方、若者はどんな文章でLINEを使っているかというと、とても短い文でやり取りしています。

「ちょっといい?」「なに?」「明日」「ごはんどする?」「あっちで」「おけ」など、実際に会話するようにポンポンと送り合います。句読点はほぼ使いません。特に、文末の句点「。」はほとんど入力せずに送信します。

大人世代は手紙やメールの文化で過ごしてきているため、相手に文章を送るときは長い文章でていねいにつづることが大切だと考えています。LINEでも同様で、1つのメッセージに用件をまとめます。「話し言葉」ではなく、「書き言葉」で作文するのです。

一方の若者は、話し言葉に近い「打ち言葉」を使っています。打ち言葉とは、PCやスマホを使って交流するときに使われる言語を指します。文化庁は2018年3月に「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」によって、打ち言葉を「話し言葉の要素を多く含む新しい書き言葉」であると定義しました。

そして打ち言葉での交流が盛んになった結果、かつて流行ったネット用語が形を変えて復活し、若者が使うようになっています。

LINEリサーチが2022年4月に発表した調査「高校生が2022年に流行りそうだと思う流行語は?」では、1位が「草」でした。草は「www」という、笑っていることを表す言葉が「草生える」などと変貌し、「草」という1つの単語に省略された言葉です。そもそも、「w」が「(笑)」の先頭文字の省略でしたよね。スマホではローマ字よりも日本語のほうが打ちやすいこともあるのでしょう。

上のランキングには、「ぴえん」や「アセアセ」も入っています。絵文字や顔文字を入力するのは手間ですが、日本語の文字なら簡単に感情を表せます。

若者は打ち言葉を音声の会話でも使います。リアルとネットの境目がない若者ならではなのかもしれません。野球実況の掲示板が発祥とされる「なんJ語」のひとつで語尾に「ンゴ」を付ける言葉は、「JC・JK流行語大賞2017」のコトバ部門で5位に入っているのですが、最近では若い女性が「ンゴ」を付けて会話しています。筆者(おばさん)はびっくりしてしまいました。

言葉は時代とともに変わっていきます。インターネットが登場し、紙以外で文章をやり取りするようになり、おじさん構文が生まれる一方で、かつてのネット用語を音声の会話で使う若者も登場するなんて、とても興味深い現象ですね。