「メタバース」が急速に注目を集めています。ユーザーは仮想空間での交流や新たな体験を求め、企業はビジネスチャンスを探っています。

2021年12月6日、メタバースプラットフォーム「ZEPETO(ゼペット)」を運営するNAVER Zに、ソフトバンクグループなどが約210億円の出資を決めたことが明らかになりました。KDDIは2018年からバーチャルイベントプラットフォーム「cluster」に出資しており、2021年11月15日にはNTTドコモがVRイベント「バーチャルマーケット」を運営するHIKKYに65億円を出資するなど、国内の大手キャリアもこぞってメタバースに参入しています。

「ZEPETO」というアプリ名について、聞き覚えがある人もいるでしょう。ZEPETOは2018年に3Dアバターアプリとして若い女性たちを中心に人気を集め、「JC・JK流行語大賞2018」(AMF)のアプリ部門4位にランクインしていました。その後、国内では大きな盛り上がりは見られませんでしたが、中国や韓国の若い女性を中心に支持され続けています。現在は「ワールド」と呼ばれる機能でアバター同士が交流できるようになり、メタバースのプラットフォームへと進化しているのです。

  • ZEPETOで作成した画像

ZEPETOの特徴は、なんといってもアバターのかわいらしさです。自分の顔に似せたり、まったく違うキャラクターにしたり、細かく調整して作れます。さらに、髪形や服、小物なども豊富。ZEPETOにはクリエイターがアイテムを作って販売する「ZEPETO Studio」もあり、流行のアイテムからニッチなデザインまで、好みのアイテムが手に入ります。

有名ブランドとのコラボ企画も。たとえばDisneyは、「リトル・マーメイド」や「くまのプーさん」などの人気作品をテーマにしたアイテムを販売しています。NIKEはシャツやスニーカーなどのアイテム、ラルフ・ローレンは洋服のほか、ラルフローレンのショップをワールド内に設置するなど積極的に参入。ディオールはメイクアップを提供しています。

韓国では、K-POPアーティストが所属する事務所や企業がNAVER Zに投資していることもあり、K-POPとのコラボ企画も多数。K-POPアイドルのBLACKPINKやTWICEは、ZEPETOのアバターを使ったミュージックビデオを公開しています。

  • DisneyとのコラボアイテムをZEPETOに着せたところ(出展:NAVER Z)

子どもが利用するときの注意点

ZEPETOの機能は大きく2つあります。ひとつは、かわいいアバターを作ってポーズやダンスをさせ、その画像や動画を保存したり、SNSに公開したりすること。お絵描きや着せ替えの楽しさがあり、若い女性から人気を集めるのもよくわかります。

  • アバターの作成画面

もうひとつは、ワールドでのユーザーとの交流です。いろいろなワールドで遊んでいる間に知り合ったユーザーと、チャット、音声、メッセージで交流できます。自慢のアバターを見せあったり、アバターのキャラクターになりきったりして会話します。

  • ワールドに出かけたところ

どちらも楽しいこと間違いなしの機能ですが、青少年が利用する場合には注意すべきポイントでもあります。

まずはアイテム課金について。ZEPETOは無料で遊べるアプリではあるものの、アイテムを購入するには専用の通貨が必要です。魅力的なアイテムは有料のものが多く、服に合わせて靴も欲しい、帽子もかぶりたい――などと際限なく欲しくなります。

ユーザーとの交流も、悪い大人と出会う可能性があります。2021年11月には、愛知県の男性が小学1年生の女児に、ZEPETOのメッセージ機能で裸の写真を送らせた疑いで逮捕されました。ある女性ユーザーは、「ワールドで知り合った女子とつながったら、すぐにメッセージが来た。幼い女の子の独り言を音声で流している男児もいた。あまりにも無防備で心配になった」と話します。

ZEPETOは、国内では特に年齢制限なく利用できます。LINEなどで認証を行えば、仮に10歳などと年齢を偽ってもアカウントが作れて、ワールドに入ることも可能。いずれ年齢制限や機能制限が加わるかもしれませんが、注意しておきたいところです。

課金については、お子さんのスマホにフィルタリングを設定することで防げます。出会いに関しては、知らない人と交流しないことを約束し、ZEPETOの設定でメッセージを受け取れないように設定しましょう。保護者が気を付けるところとしては、「[保護者用]ZEPETOについてのお知らせ」が参考になります。

  • 知らない人からメッセージを受け取れないように設定

こうした問題は、ZEPETOに限ったことではありません。ゲーム課金やSNSでの出会いについては注意している保護者が多いと思いますが、今後はメタバースの世界にも目を配る必要があります。未来ある子どもたちが仮想世界の可能性を存分に楽しめるように、大人が適切に管理してあげましょう。