X(旧Twitter)を眺めていると、バズっているポスト(投稿)に対して、外国語や短い文章のリプライが大量に付いている様子を見かけるようになりました。同じ文言を何度も貼り付けたり、元ポストと関係がない画像をリプライしたりしていますが、ほぼ共通しているのはどのアカウントにも青いバッジが付いていることです。

こうしたアカウントは「インプレゾンビ」と呼ばれます。「インプレッション」(表示)数を稼ぐことを目的として、バズった投稿に現れます。botのように人間性が感じられず、次から次へと増殖する様子が「ゾンビ」に似ているため、「インプレゾンビ」と呼ばれているのです。

  • SNSに現れる「インプレゾンビ」、偽情報を拡散していることが多いので注意してください

インプレゾンビは、「トレンド」に上がっているキーワードを含めたポストも行います。トレンドのキーワードをタップすると、キーワードと無関係の画像や動画を含めた投稿が出てきますね。

以前のTwitterでは見られなかったインプレゾンビは、なぜ大量発生しているのでしょうか。インプレッションを稼ぐ目的は何でしょうか。

広告収益分配プログラムが生み出したインプレゾンビ

インプレゾンビは、バズったポストやトレンドのキーワード入りのポストに出没します。それは、インプレッション数を増やすことで収益を得ようとしているからです。

インプレゾンビのアカウントには青いバッジが付いていると言いましたが、これは有料のサブスクリプション契約を結んでいるアカウントに付与される印です。以前は、青いバッジは認証を受けたアカウントに付与されていましたが、今は意味が変わり、サブスクリプションに登録している印となりました。

サブスクリプション「Xプレミアム」は、現在「ベーシック」「プレミアム」「プレミアムプラス」の3つのプランが用意されており、ポストの編集や長文ポストの投稿などの特典を受けられます。

クリエイター広告収益分配プログラムに参加するには、「プレミアム」、または「プレミアムプラス」に加入します。条件を満たしていれば、Xから広告収益の一部を分配してもらえるようになります。

  • サブスクリプションに加入すると収益の一部が受け取れます(出典:X)

分配金の額はポストのインプレッション数などを元に計算と言われていますが、詳細な計算方法は明らかにされていません。50ドルを超えるとXから自動的に振り込まれます。最近は、収益プログラムを始めたころよりも金額が下がっているとの声もあります。

インプレゾンビの偽情報に気を付けて

Xのクリエイター広告収益分配プログラムは、ユーザーにとって有益なポストをするアカウント(クリエイター)に対して広告収益を分配するという仕組み。推測ですが、判断基準がインプレッションのみという点に問題があります。インプレッションを稼ぐだけなら、元々バズっているポストやキーワードに乗っかるほうが手っ取り早くインプレッションを稼げるからです。

これに対し、Xは特に対策を講じている様子はありません。そもそもこうしたアカウントはサブスクリプション契約しているため、お金を支払ってくれる人たちを切る必要はないからでしょう。

しかし、インプレゾンビは大きな迷惑を及ぼしています。それは偽情報をまき散らすこと。

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、インプレゾンビによる偽情報が多く出回りました。住所を記載した救助要請をコピペした情報が多数投稿され、救護隊が確認に時間を要する事態となりました。また、今回の災害と無関係な災害の画像をポストするアカウントも出現。人工地震だというデマも飛び交いました。1月4日には岸田文雄首相が「公共機関の情報を確認するなど、虚偽情報に惑わされないように」と呼びかけることにもなりました。

こうした偽情報は災害時に飛び交いやすいため、すべてが収益狙いというわけではありません。しかし、日本語がわからない外国人がインプレッションを稼げるキーワードと判断して、災害関連の投稿をしていたと思われます。

NHKの取材によると、インプレッション稼ぎの手法は南アジアや中東地域を中心に広がっているということです。日本はグローバルで見てもXの利用者が多いため、日本語のポストを狙っているのでしょう。

日本は地震や台風など災害が多く、Xは災害時の連絡ツールとしても利用されます。政府はSNS上で偽情報が広がったことを受けて、 有識者チームを設置して今後の対策を検討することになったそうです。

今や、生成AIでフェイク画像を作ることも簡単です。人々の関心や注目を引くことで経済活動をする「アテンションエコノミー」によって、これからも偽情報がネットに蔓延していくのかもしれません。

私たちにできることは、安易に情報を拡散しないことに尽きます。大きな災害や事件などで人々の心が揺れ動いているときは、小さな情報でもすぐ誰かに伝えたくなります。しかし、その情報は本当に真実なのか――。数日待てば判明することがほとんどです。少し時間をおいて、落ち着いて、真偽を確かめてから共有するように心がけましょう。

それにしても、Xの状況は日々荒れてきています。本当はイーロン・マスク氏やXにインプレゾンビへの対策をしてほしいところですが、その日までは自衛しながら使っていくしかなさそうです。