2013年10月30日、台湾の国家通信伝播委員会は4G通信サービスの事業者免許のオークション入札結果を発表。9月3日から行われた同オークションには既存の通信事業者と異業種からの参入希望企業合計7社が入札。このうち6社が免許を獲得した。

早ければ2014年にもFDD-LTEサービスが開始

4G免許を取得した6社の内訳は、既存の通信事業者が中華電信、遠伝電信、台湾大哥大、亜太電信の4社。また新規参入を行うのはiPhoneなどの製造も手がけるEMS大手の鴻海集団傘下の国碁電子、そして流通大手の頂新集団傘下、台湾之星の2社。各社は120日以内に落札代金の支払を行うと共に、事業計画書の提出が義務付けられている。

今回提供された4G周波数はFDD方式のLTEに対応する。周波数は700MHz(Band 28)900MHz(Band B8)、1800MHz(Band 3)の3つの帯域となる。落札されたのは合計135MHz幅。なかでも台湾で最大の通信事業者、中華電信は3ブロック合計35MHz幅を390.75台湾ドルと最も高値で落札している。固定電話・固定ブロードバンドを台湾全土に張り巡らせている同社は4G免許の取得は必須であり、固定とモバイルを融合させた高速インフラを台湾全土に広げる考えである。同社は免許交付直後からさっそくTVでCMを流すなど、台湾でのLTEサービス一番のりを目指している。サービスの開始は2014年中の予定。

最大の周波数帯域を落札した中華電信

さっそく4GのTV広告を展開

一方新規参入組みで注目されるのが鴻海傘下の国碁電子だ。世界中の大手メーカーからPCやスマホの製造引き受けで成長を続けてきた鴻海は、将来の事業の柱としてクラウドやビッグデータ、そしてモバイルなどネットワーク関連事業を強化しようとしている。今回の通信事業への参入は自社で開発した端末やサービスのテストベッドとしても利用できる、将来を見越した上での投資なのである。なお鴻海の董事長、郭台銘氏は4G免許取得を受けさっそく「音声とSMSは定額で提供する」とLTEサービス開始の意気込みを台湾メディアに話しており、老舗3事業者が大きなシェアを握る台湾の通信業界に横穴を空ける存在にもなりそうだ。

これに対し既存の通信事業者で唯一4G免許オークンに参加しなかった威宝電信については、他社からの買収や業務提携の動きが活発化するだろう。特に今回新規参入する国碁電子と台湾之星はLTEサービスのカバレッジの穴を埋めるためにも3Gネットワークが必要だ。しかもVoice on LTEサービスを提供するまでは音声通話は3G回線を使う必要がある。威宝電信を巡る動きはこれから目が離せないものになりそうだ。

WiMAX各社は思惑が分かれる

一方台湾ではWiMAXサービスが提供されており、現在は4社が営業を行っている。各社は今後TD-LTEへの転換を目指しているが、台湾政府としてはまずはFDD-LTEを先に開始させ、それからTD-LTEのサービスインを図ると見られている。台湾のWiMAX事業者は6社でスタートしたもののすでに3社が合併するなど業績は思わしくなく、既存の大手事業者などがLTEサービスを開始するとさらに劣勢へと追い込まれるのは避けられない見通しだ。

回の4G免許オークションに入札して落選した台湾之星移動電信は親会社がWiMAX事業者の大衆電信に出資している。大衆電信はPHSからWiMAX、そしてTD-LTEへの転換を目指しており、台湾之星移動電信のFDD-LTEと共同でデュアルモードサービスも視野に入れていると考えられていた。だがFDD-LTEの免許取得に失敗した上に台湾北部のみという事業規模の狭さから、今後も事業の継続は厳しいものになりそうである。

これに対し威邁思電信と大同電信を買収した威達雲端電信はTD-LTEで攻勢をかける予定だ。同社は台北、台中、高雄という3大都市を含む、台湾全エリアでWiMAXサービスを提供している。来年のインフラ投資ではカバレッジの拡大だけではなくTD-LTEへのアップグレードを見越した投資を行う予定だ。TD-LTEの免許取得後は台湾で唯一、全土にTD-LTE網を網羅する事業者として生き残りを図っていく。

WiMAX事業者の動きも活発化する

HTCなど台湾メーカーにもLTE開始はメリットがある

また既存の大手通信事業者であり今回FDD-LTE免許を落札した遠伝電信もWiMAX事業を展開している。同社は台湾内で中国大陸の中国移動とTD-LTEのフィールドテストも行っている最中だ。遠伝電信は今後WiMAXをTD-LTEにアップグレードした上で、TDとFDDのデュアルモードサービスを提供しつつ、中国大陸との連携を深める戦略をとっていくだろう。

このように今回の台湾の4G免許の交付は、既存の2G/3G事業者、WiMAX事業者を含めた業界の再編や提携を一気に加速させることになりそうだ。またHTCやAsus、Acerなど台湾メーカーにとってもLTEネットワークの自国での開始は、新機種開発時の大きな支援にもなるだろう。2014年は台湾の通信業界の動きから目が離せない1年となるだろう。