モトローラから最新の折りたたみスマートフォン「razr 40」シリーズ2機種が発表されました。上位モデルの「razr 40 Ultra」(アメリカでは「razr+」)は閉じたときも全画面表示できる大型のアウトディスプレイを搭載、下位モデルの「razr 40」(アメリカでは「razr」)は折りたたみスマートフォンとして思い切った低価格でユーザー増を狙います。

  • モトローラから縦折り式の「razr 40」シリーズが登場

2つのモデルはどちらも縦に折りたたむスタイルで「フリップフォン」という名前で呼びたくなるデザインです。上位モデルのrazr 40 Ultraに注目が集まりますが、実は下位モデルのrazr 40こそモトローラの戦略製品と感じられます。折りたたみスマートフォンは価格が高いというイメージがありますが、razr 40はもはや普通のスマートフォンを買うのと変わらない価格設定になっているからです。

  • 価格は普通のスマホと変わらないrazr 40

海外ではここ約半年の間に折りたたみスマートフォンの新製品が次々と登場しました。縦折り式のスマートフォンだけでも2022年11月にファーウェイの「Pocket S」、12月にOPPOの「Find N2 Flip」、2023年4月にvivo「X Flip」と4機種が登場しています。これら4機種すべてが販売されている中国では、どの製品も5,999元、約11万8,000円で販売されています(Pcoket Sのみ5,998元と1元安い)。ちなみに中国での「iPhone 14」の価格も5,999元です。各社がiPhone 14に合わせ横並びの価格設定を行った結果、折りたたみスマートフォンで中国国内での人気回復を狙っているサムスンも「Galaxy Z Flip4」の中国販売価格を定価7,499元(約14万7,000円)から5,899元(約11万6,000円)に値下げしたほどです。

  • サムスンは縦折りスマホGalaxy Z Flip4を中国で値下げ

このように「縦折りスマホは6,000元」という中国市場にモトローラは外画面サイズを大きくし他社より優位性がある上位モデル、razr 40 Ultraを同じ5,999元で投入。さらに下位モデルのrazr 40は3,999元(約7万9,000円)と大幅に価格を引き下げて発売します。razr 40の価格はもはや普通のスマートフォンと変わりませんから、縦折りモデルを買う消費者を一気に増やすでしょう。

  • 外画面の大きさで他社製品を圧倒するrazr 40 Ultra

razr 40、razr 40 Ultraどちらも開いたときのディスプレイサイズは6.9インチ。閉じたときはrazr 40が1.5インチ、razr 40 Ultraが3.6インチです。閉じたときに通知程度がわかればいいのであればrazr 40でも十分実用的ですし、閉じたままアプリを使ったり自撮りをするときのプレビュー表示が欲しいのならばrazr 40 Ultraを選べばよいのです。このように2つの選択しがあることもモトローラの折りたたみモデルを選ぶ理由の1つになるでしょう。

  • razr 40 Ultraなら自撮りも楽しい

実はモトローラは世界で最初に縦折りスマートフォンを発売したメーカーです。2019年11月に発売した「razr」は往年の大ヒットのフリップ式ケータイ「RAZR」の名前の再来ということもあり大きな話題になりました。SIMカードスロットを持たないeSIM専用機としてアメリカの通信キャリアのベライゾンから発売されたこのモデルは、SIMカードが使えないという、当時としては先進性が高すぎる製品で、評価は思わしくありませんでした。またディスプレイはヒンジ部分に折り目が無いものの、フリップの開閉でディスプレイが内側でスライドする機構は破損しやすいという弱点がありました。

  • 登場時は大きな話題となった初代のrazr

2020年9月には改良モデルとして「razr 5G」を発売しますが、2月にサムスンが「Galaxy Z Flip」を出した上に、5月にはファッションブランドとコラボした「Galaxy Z Flip Thom Browne Edition」も投入。razr 5G登場時にはもはや縦折りスマートフォン=サムスンという図式が出来上がっていたのです。なお日本でも2021年3月にrazr 5Gは発売されています。

  • 日本でも発売されたrazr 5G

そして2021年にはrazrシリーズの発表はスキップされた上に、2022年8月に登場した「razr 2022」は中国のみの発売に留まり、モトローラの縦折りスマートフォンの存在はすっかり忘れられた存在になってしまっていたのです。気が付けばグローバルではOPPOも縦折りスマートフォンを投入、中国国内では前述したように複数メーカーが同価格帯で戦う激戦区になっています。

  • グローバル展開されなかったrazr 2022

razr 40 / razr 40 Ultraは6月1日に発表されましたが、発表前に大きな盛り上がりが無かったのはこのようにグローバル市場での存在感が低かったからでしょう。しかし他社の折りたたみスマートフォンに性能と価格で大きなアドバンテージを持つ2モデルが登場したことで、この夏の話題をかっさらうスマートフォンになるかもしれません。サムスンも夏には新しい縦折りスマートフォンを発表する予定で、9月の新型iPhone発表を前に折りたたみスマートフォンが各国で盛り上がりそうです。