ファーウェイが12月23日に発表した「P50 Pocket」は縦折り式のスマートフォンです。縦折り式のスマートフォンはすでにサムスンとモトローラが出していますが、ファーウェイの参入で製品選択肢が広がってきました。P50 Pocketは開くと6.9インチの大型画面が現れ、閉じた状態ではディスプレイに隙間はなく厚さは15.2mmとなります。同じ縦折り式のサムスン「Galaxy Z Flip3 5G」は開くと6.7インチですし、閉じるとヒンジ側に隙間があり、厚さも15.9mmから17.1mm。P50 PocketはGalaxy Z Flip3 5Gよりも「広い画面と薄い本体サイズ」で登場しました。

  • ファーウェイ初の縦折り式スマホ「P50 Pocket」

P50 Pocketという製品名もオリジナリティーが感じられ好印象です。サムスンのFlipという名前に追随せず「コンパクトに畳んでポケットに入る」という製品の特徴を一言で表しています。そういえばファーウェイはサムスンが大画面スマートフォン「Galaxy Note」を出したあと、多くのメーカーが「Note」の名称を製品につけたときも、「Mate」と別の名前で勝負をかけました。

  • 「ポケット」というネーミングはわかりやすい

P50 Pocketは今年夏に発売になったカメラフォン「P50」と同じシリーズの製品という位置づけで、閉じたときに背面に配置された2つの円形の台座はP50のデザインを踏襲しています。ファーウェイはアメリカ政府の制裁により思うようにスマートフォンを出せませんが、フラッグシップモデルP50が採用したこのデザインを「アイコニック」すなわちファーウェイの新しいスマートフォンを印象付けるものにしようとしているのでしょう。

  • P50 Proの背面デザイン。P50 Pocketはこれを踏襲している

カメラは4,000万画素と1,300万画素の超広角、それらに加えて1,070万画素のスーパースペクトラムカメラを円形の台座内に搭載。カメラ性能は大いに期待できそうです。なお開いた状態ではディスプレイ上部に3,200万画素のフロントカメラが覗きますが、閉じた状態でもカメラのすぐ下にある円形のディスプレイを使ってプレビュー撮影が可能。メインカメラを使った美しい自撮りも簡単に撮影できます。

  • トリプルカメラとディスプレイを2つ並べたデザイン。自撮りもメインカメラで行える

カメラは自分の顔を写して肌状態などをAIが解析、健康状態も確認できるなどGalaxy Z Flip3 5Gにはない機能も搭載しています。ただし残念なことに販路は現時点では中国国内のみで、日本で製品を手にすることはできそうにありません。ファーウェイのスマートフォンはGoogleサービスを搭載できなくなったために、ファーウェイ独自のサービス・アプリストアに加え、独自開発したHarmonyOSを採用します。チップセットには最新のクアルコム製Snapdragon 888を搭載しますが、またこれもアメリカ政府の制裁により、通信方式は5Gには非対応で4Gまでとなります。

  • カメラを使って肌状態をチェック

とはいえP50 Pocketは中国国内でのファーウェイのスマートフォンシェア低下を防ぐために、中国市場を重視して投入したモデルと考えるのが妥当でしょう。中国ではサムスンのシェアは非常に低く、Galaxy Z Flip3 5Gは家電量販店でも目立つ場所には展示されていません。P50 Pocketがライバルとしているのはむしろ普通のスマートフォン、すなわちiPhoneであり、発表会でもiPhone 13 Pro Maxとの比較が随所で行われました。

  • P50 Pocket(左)とiPhone 13 Pro Max(右)の比較

iPhone 13 Pro Maxは6.7インチのディスプレイを搭載しますが、ノッチがあるため実際の表示エリアは若干狭めです。P50 Pocketはより大きい6.9インチディスプレイを搭載します。本体サイズもiPhone 13 Pro Maxは横幅が76.5mm、P50 Pocketは72mmです。重さも230gに対して190gと軽く、サイズの面で唯一負けるのはP50 Pocketが閉じると15.1mm厚になることでしょうが、閉じれば縦のサイズは83.7mmとコンパクトになります。

  • 閉じれば当然厚みは増すが、ほぼ正方形のコンパクトサイズになる。ケースをつけても楽しい

P50 Pocketの価格は8,988元(約16万1,300円)。これは中国のiPhone 13 Pro Maxの価格、8,999元(約16万1,500円)を強く意識したもので、それより10元(約180円)ほど安くしたのだと思われます。中国のスマートフォン出荷台数で1位の座を長年キープしていたファーウェイも、今ではvivo、OPPO、Honor、シャオミ、Appleに抜かれ6位以下という状況です。P50 Pocketは縦折り式という派手なスタイルで中国の消費者の目をファーウェイに再び向けさせようとしているのでしょう。

  • iPhoneを意識した価格。「8,888元」にしたほうがインパクトは大きかったかもしれない

中国ではOPPOが横折り式のスマートフォン「Find N」を7,699元、約13万4,000円でつい先日発売したばかりであり、話題という面ではOPPOにかなり持っていかれてしまった感があります。とはいえHonorも折り畳みスマートフォンのティザー(予告)を出すなど、折り畳みスマートフォンそのものが盛り上がれば、P50 Pocketも比較検討製品として注目を集めるでしょう。旧正月を祝う中国、今度の旧正月は2月1日です。お正月商戦でP50 Pocketがどこまで売れるか、注目したいところです。

  • Honorの折り畳みスマホのティザー。発売日やスペックはまだ不明だ